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45歳、静かな観察者は商店街を救う――地域再生コンサルタント拓実の逆転劇  作者: 乾為天女


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第26話_咲の数字マジック

 「……これは、ちょっと“おかしい”ですね」

  商店街再生事業の収支報告書を広げた咲は、眼鏡の奥で静かに目を細めた。書類の一部に、彼女の“冷たい視線”が突き刺さる。

  夜の会議室にいたのは、咲、拓実、えま、薫、そして市役所の経理担当者。誰もが微妙に顔色を変え始めていた。

  「この“祭り準備費”という科目、支出日が“準備開始前”になってます。さらに、単価と数量の整合性が取れません。ここ、見てください」

  咲は蛍光ペンで四角く囲んだ欄を示した。

  「備品購入費が、契約業者の相場より二割高い。“バルーンアート一式・二十万円”? しかも納品書はFAXのコピーで印影がにじんでる」

  えまが顔をこわばらせた。

  「その業者……市長の親戚筋だったはず。去年も同じような――」

  「やるなら、きちんとやってください」

  咲の口調は冷静だったが、空気は一気に凍りついた。

  「拓実さん、このままじゃ、“予算偽装”と見なされかねません。せっかくのプロジェクトが台無しになります」

  拓実は深く息を吐いた。

  「咲、この件、俺に任せてくれ」

  「ですが、法的には――」

  「わかってる。だからこそ、“数字での正義”と“現場の知恵”の両方を使うんだ」

  数日後、拓実は市長室にて、咲がまとめた『収支是正案』を手に説明を始めた。

  「このままでは、市民の信頼を損なうだけです。だから提案します――業者選定の透明化、市民公開監査、そして“再発防止誓約書”の提出を」

  市長は渋い顔をしたが、横で資料を手にする咲の鋭い視線に、一瞬たじろいだ。

  「……君たちの言い分は、正しい。正しいが、事を荒立てると、議会が騒ぐ」

  「騒ぎますかね? “公金の不適正使用”よりも、“それを是正した市長”の方が、票を集めると私は思います」

  咲のひと言に、えまが小さく噴き出した。

  「さすが、数字の魔法使い……」

  「いえ、“冷たい目”で見てるだけです。甘い数字には、虫が湧く」

  後日、商店街の掲示板にひっそりと新しい文言が加えられた。

  【財務報告の公開化:皆様の信頼に応えます】

  咲はそれを見つめながら、心の中でつぶやいた。

  (私は正義感のためにやってるんじゃない。ただ、いい加減な数字が嫌いなだけだ)

  その晩、彼女の事務所では、愛猫の“シマ”が書類の上で丸くなっていた。モフモフの癒しと冷徹な目――咲は今日も、数字という魔法を使い続けていた。

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