表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45歳、静かな観察者は商店街を救う――地域再生コンサルタント拓実の逆転劇  作者: 乾為天女


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/40

第20話_嵐のち、歓声

 午前四時。風の音で目を覚ました拓実は、寝床代わりの仮設本部テントから外へ出た。空は灰色。雲の流れは早く、頬に触れる風が冷たい。

  「……判断のときか」

  すでに会場には、えま、薫、咲、遼平、海翔、ヘイデン、イマニ、皆が集まっていた。重苦しい沈黙を破ったのは、咲の静かな声だった。

  「気象庁のデータでは、台風は北東に逸れてる。風速も最大12メートル、ぎりぎり開催圏内」

  「ただし、撤収の準備は同時進行でやるべきです」と、えまが続ける。

  拓実は深く息を吐き、皆の顔を順に見渡した。

  「リスクはゼロじゃない。それでも……今日という日を待ってた市民がいる。来るかどうかは彼らが決める。でも、俺たちは……“迎える準備”をしよう」

  その言葉に、一瞬の間を置いて頷きが連なる。誰も反対はしなかった。

  午前十時。祭りの幕が、静かに上がった。

  天候は曇り空。しかし予報よりはるかに穏やかで、午前中からぽつぽつと人が集まり始める。イマニは子どもたちの手を引き、綿菓子の列を整える。海翔はキッチンカーの音楽を軽快に変え、ヘイデンは太鼓のリズムで人の流れを導くように演奏を始めた。

  「どうなってんの、これ……」咲が計上表を見て目を丸くする。「午前だけで黒字域に……?」

  「なにせ“腹が減る”という本能には、景気も台風も関係ないさ」と、遼平がどこか誇らしげに言った。

  午後になると空は次第に明るくなり、やがて陽も差し始める。拓実は裏方として全体の流れを見守りながら、目立つことは避けていた。

  「なぜですか?」えまが尋ねた。「今日の主役は、あなたですよ」

  「いや……主役は、ここに来てる皆だ。俺は、観察して、信じて、背中を押しただけ」

  えまは笑って首を振った。「それができる人は、案外少ないです」

  夕刻。盆踊りが再び始まり、櫓の上に今度は若者たちが立つ。地元高校生の演舞が喝采を浴び、子どもたちの声が会場に響く。老若男女の輪が広がる中、拓実は一歩、静かに後ろへ下がった。

  「世代が交わる場が、生まれたな……」

  その背中に、ヘイデンがそっと言った。

  「Mr. Takumi, あなたが蒔いた種は、ちゃんと芽を出してますよ」

  夜。灯がともり、笑顔と笑い声に包まれる中、祭りは成功裏に幕を下ろした。

  そして拓実は、新たな戦いへと歩を進める――第3章「外資という影」へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ