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45歳、静かな観察者は商店街を救う――地域再生コンサルタント拓実の逆転劇  作者: 乾為天女


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第19話_前夜の盆踊り

 夜の帳が下りる頃、祭り会場となる中央公園は仄かな提灯の灯りに包まれていた。ステージ脇では、音響テストが終わり、イマニの運んだ機材が重厚な低音を鳴らす。仮設の櫓を囲むように並べられた屋台は、どれも個性豊かで、明日の開幕を待ちわびるように静かに佇んでいた。

  拓実は櫓の下で、小さな提案ボードを見上げながら独り言のように呟いた。

  「天気予報は……いまだ五分五分、か」

  えまが帳面を持ったまま近づいてきた。

  「台風の進路がまだ読めません。最新の気象データだと、明朝四時が判断のタイムリミットです」

  「朝四時か。誰が起きてるかな」

  「全員起こしますよ、無理にでも」

  えまの凛とした声に、拓実が笑う。歳は違えど、彼女の責任感は拓実のそれと重なるものがあった。

  「……でも、これはギャンブルじゃない。命を預かってるんだ。無理はしない。明け方まで、風と相談だな」

  そのとき、海翔が盆踊りの練習場から飛び込んできた。

  「おーい、踊ってくださいよ、拓実さん! 一曲だけでも!」

  「いや、俺は見る役だ」

  「それはナシっす。この踊りの輪には、年功序列はないんですから!」

  そう言って手を引っ張る海翔に、咲が苦笑交じりに呟く。

  「これもSNS映えを狙った演出……じゃなくて?」

  「まさか! 俺が映えるだけっすよ」

  賑やかな声に引かれて、次第に人が集まり始める。櫓の上にはヘイデンが登って和太鼓を叩き始め、イマニがその真下でリズムに合わせてステップを踏む。遼平は最初こそ端で見ていたが、薫に無言で手を引かれ、輪の中へ。

  「こういうときは、考えるより先に動くのよ」そう呟いた薫の笑顔が、照明の合間に浮かび上がる。

  拓実は少しだけ躊躇ったが、ふと目が合ったえまが、そっと背中を押した。

  「踊るおっさんって、絵になりますよ」

  「やれやれ、職務命令か?」

  「はい」

  照れくさそうに櫓の周囲を歩き出した拓実は、不器用に足を踏み出す。だがその動きが輪に馴染み、やがて笑いが生まれ、拍手が響いた。

  その夜、台風はまだ遠く、星も出ていた。

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