表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
227/234

第208話 流転と漲転

 明るさ(あふ)れる魔女っ娘に()()したファウナ。自由に任せ、己が力を大いに奮う(ふるう)

 立て続けに蜘蛛の糸(フィディラガノ)使いジレリノと、自由過ぎる機械生命体チェーン・マニシングへ無茶振り。


 ジレリノが投じた蜘蛛の糸(フィディラガノ)拘束(こうそく)された偽りの姉(ゼファンナ)。続け様に白狼とペガサスの異種間(キメラ)まみれたチェーンが荷電粒子(かでんりゅうし)()()流す情け無用。


 然し黒い女神の代行者、ゼファンナ・ガン・イルッゾが新呪文(アルゲヒル)にて森の女神勢を再び押し返す。


 蒼服ファウナ・デル・フォレスタの森の爆炎(ラデスタ・フィアンマ)(いぶ)られ、見た目は酷く痛々しい。

 黒いスーツはおろか、下着さえ炎の餌食(えじき)と化し穢れ(けがれ)知らぬ肢体(したい)世界(SNS)晒す(さらす)。されど軽い火傷程度で済んでる奇跡。


 世界(SNS)はイタリアの南に浮かぶ()()()()一喜一憂(いっきいちゆう)。身勝手ばかりを口ずさむ(殴り書き)


Black (黒い)Goddess(女神) will() destroy(世界) the world(を滅ぼす)


Everything(どうせ何もかも) has disappear(消え) anyway(失せた)


Destroy me(滅ぼしてくれ), that (それ)is() salvation(救済)


Black(黒い) one(方が) wins(勝つわ)


That (あの)black(黒くて) chick(若い女) who is the most (最ッ高に)erotic(やらしいぜ)!』


 連合国軍に散々打ちのめされても世界のいい加減さに陰り(かげり)は見えない。所詮(しょせん)携帯端末で()()だけの過激なショータイム。今夜の寝床すらどうでも良い(やから)


 やんややんやな対岸の火事(戦争)自暴自棄(じぼうじき)の群れ。ええじゃないかと踊り狂う阿呆共(あほうども)

 明日を捨てた連中は、やたら()を推したがる。漆黒(しっこく)の女神様が全てを無に帰す地獄を欲する。


 正義の味方が大逆転する幼稚(ようち)奇跡(最終話)なぞ()たくない。常に非情こそ現実(リアル)


 戦場下の黒服ゼファンナと蒼服ファウナ。ふざけた呟き(つぶやき)に耳も目も向ける気一切無い。


 二人の思惑(おもわく)──。


 ──良い加減〆刻(しめどき)


 何度も()べるが元々台本(シナリオ)ありきの争いなのだ。


 蒼服ファウナは、大切な味方がこれ以上傷つく様を見たくない。

 黒服ゼファンナの方は、引き際を如何にすべきか思考巡らす。


 世界(SNS)に歓喜と絶望、何れも与える気など粉微塵(こなみじん)も在り得ない。終幕の伝承(でんしょう)書き記した後、私達の見知らぬ所で永久(とこしえ)()()()()()


 ──流石に魔力(マナ)が尽きるわ……。


 蒼服ファウナ、偽りの姉から注がれた魔力(マナ)。やはりEmpty(ガス欠)灯る(ともる)のは此方が先らしい。


 ジレリノとチェーンに笑顔で頼ってるのが何よりの証拠。自由は大層楽しいなれど、余裕秘めた笑いではなかった。


「──ロッソ」

「やらせませんッ!」


 紅の爆炎(ロッソ・フィアンマ)を決めようとした黒服ゼファンナと交錯(こうさく)するラディアンヌ。己の傷口より滴る血飛沫(ちしぶき)目潰し(めつぶし)と飛び膝蹴りの突貫(とっかん)狙う。


「見え()いてんのよッ!」


 黒服、紙一重で避けたつもりが(ほお)掠り(かすり)切られ唖然(あぜん)


 ラディアンヌ、己が信じる女神様の底尽き(そこづき)を気配で悟る(さとる)。金色の閃光(エンツォ)決めた黒服に届かぬ事など百も承知。だが魔法を好きにやらせはしない。


 読みが鋭い女武術家だけでなく、他の連中も蒼服のファウナの終わりを肌で感じる。


 自分の機体を(なます)に斬られ、脱出したディーネ。同乗者のフィルニアも共に離脱(りだつ)。なれど()()で折れるほど御人好しではいられない。


 自爆スイッチ起動、水の精霊と風の精霊総動員させ、(かたき)へ飛ばす無情なる(さま)


 ズッガーンッ!!


「グッ!?」


 苦悶(くもん)の表情で吹き飛ぶ黒服。


 否、最早衣服の黒が失われつつあるゼファンナ・ガン・イルッゾ。髪は金色、目の色は地中海思わせる蒼。加えてシチリアのビーチ育む(はぐくむ)白い肌。砂漠化の如き拡がり()せる。


 黒い女神の代行者として失格の烙印(らくいん)押されかねないあられもない姿。然し今は姿形を気に()んでる場合ではない。


 他の森の女神勢も傷の具合を気にせず、偽りの姉へ一斉に襲い掛かるのだ。攻撃が届く希望はハナから捨ててる面構え。


 もう二度とゼファンナに希望の光(魔法の機会)を決して与えぬ。さすれば私達(僕達)のファウナが必ず決めてくれる。


 追い詰められた()()のゼファンナ。古代ローマ人を彷彿(ほうふつ)させるトゥニカ(チェニック)をビリビリ破った布切れが載っているだけなメロスを思わせる。


 見た目こそ風通し良いが、いよいよ()()()顔などしていられない。()()()()()()()、死刑台に笑顔で登り詰めるべく。


「──『漲転(ゼルディビラ)』!!」


 広げた両掌を天高く突き出す偽りのゼファンナ。得体の知れぬ液体が彼女を中心に間欠泉(かんけつせん)の如く一挙に噴き出し、森の女神勢を混濁(こんだく)の渦に巻き込む異変。


 ──漲転(ゼルディビラ)!?


 己が耳を疑う蒼服のファウナ。事象反転の術式流転(アルディビラ)に響きこそ似ているが、妖しい液体を周囲にぶち撒けてる以外実の処、味方は一切被害を受けてる様子がない。


 蒼服に取って何より驚きなのはこの呪文(スペル)。魔導書に書き記されていない事だ。何て事ない仕掛け。流転(アルディビラ)記載の裏に(あぶ)り出しで記した森の女神の遊び心。


「……」


 偽りのゼファンナ、自身もびしょ濡れになりながら何処かすっきりした様子。

 流転(アルディビラ)でこれまで反転させた様々な事象。実は行使(こうし)する度、術者の心の内側へ脈々(みゃくみゃく)蓄積(ちくせき)され続けていた。


 漲転(ゼルディビラ)酸い(すい)も甘いもヘドロの如く術者の心に沈殿(ちんでん)したモノを吐き出すだけの術式。

 見てくれだけは異様で巻き込んだ者共を、三途(さんず)の川に流す脅威(きょうい)をもたらす。早い話、壮大(そうだい)なストレス発散。


 流れ込んだ映像だけを鵜吞み(うのみ)にして、想像力を一切投げ捨てた世界(SNS)の住人達は、さぞや生き地獄を見た気分に違いない。


 ▷▷──もう良いわ()()()()()()()()


 風の精霊術、言の葉で心の声を真実の姉に届けた()()()()()()()()()()()()()


 (すこ)やかなる妹の声に姉、覚悟の頷き(うなずき)


 これは事前に渡した台本(シナリオ)通り。然し天然過ぎる妹、自分がどういう手順で消されるのか。全く以って知らない姉任せ(丸投げ)なのだ。


 ブォンッ!


「──魔法陣ッ!?」


 ファウナに(ふん)するゼファンナを中心に瓦礫(がれき)の下から途轍(とても)もない(きら)めきと共に出現した超巨大なる魔法陣。


 恐らく失われたフォルテザの街をぐるりと取り囲む程の大きさ(スケール)


「こ、これは一体!?」


「フフッ……元々は太陽神に成ったマーダ(ディスラド)を稼働出来ないMeteonella(メテオネラ)の代わりにすべく私が丹精(たんせい)込めて描き上げたものなのよ」


 これぞ連合国軍所属のゼファンナ・ルゼ・フォレスタが仕掛けた太陽神退治用の壮大な(わな)


 真実のファウナ驚愕(きょうがく)。続いて大層出来る姉上に称賛(しょうさん)の微笑み浮かべる。

 仮に妹が不出来であったとしても姉の準備は女性の旅行バッグが如く用意周到(しゅうとう)だったと思い知る。


「さあ覚悟なさいゼファンナ・ガン・イルッゾ! ──『森の束縛(フォレアビッツ)』!」


「──ッ!?」


 此処でよもやよもやの森の束縛(フォレアビッツ)。術者の精神力が相手を上回なければ発現(はつげん)しても真っ先に千切られる拘束(こうそく)のツタ。


 巨大過ぎる魔法陣の端から現れ太過ぎるツタが次々伸び、真実のファウナを雁字搦め(がんじがらめ)に縛り上げる。天高く昇る(はりつけ)台が完遂(かんすい)


 如何に敵が強大であろうとも、この巨大な魔法陣が収集する森の精霊達が術者の精神力を大いに底上げする仕組みなのだ。


 裸同然のファウナ、最期の審判受けるキリストが如き様子。

 心中だけ聖母マリアの様な総てを赦す微笑み浮かべる。


 されどこれから磔刑に(しょ)されるのは、闇色の体現者。レヴァーラ・ガン・イルッゾとその血筋を継いだゼファンナなのだ。絶望の(ふち)であっても悪役(ヒール)に徹底しないと意味を(いっ)する。


「グッ!? こ、こんなふざけた物でぇぇッ!!」


 偽りのゼファンナ、如何(どう)にかツタを引き千切ろうと大いに藻掻き(もがき)苦しむ様を演ずる。恥らいの乙女として大層恥ずべき死刑台なのが唯一の辛み(つらみ)


 然し世界(SNS)瞬く(またたく)間に騒然(そうぜん)へ転ずる。


 偽りの森の女神が仕掛けた恐怖の様に()を失う。あられもない偽りの姉の姿に()()見出す不届きな輩は完全に(つい)えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ