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第201話 Eccentric・Radienne PARTⅡ

 レグラズ・アルブレンとアル・ガ・デラロサ大尉。奇跡の連携により殺戮(きせき)の女神カーリーへ対する会心の一撃が遂に為された。


 右目と(あご)を失い、それでもなお進撃を止めない狂戦士(バーサーカー)カーリー。大出血をボタボタ地面に()らしながら歩む様は、殺しだけを求める女神に相応(ふさわ)しい。


 この女神を止める(すべ)は果たして実在するのか?

 鍵を握るのは、一見機械仕掛けな白狼と、それに跨り(またがり)愛馬の如く操り、未だ電力有り余る黄緑色のEL-Galesta(エル・ガレスタ)とその操縦者(パイロット)


 ヴァロウズNo6、様々な機械生命体に化ける能力を持つチェーン・マニシング──。


 彼女は巨大な白狼の母に育てられた異例の経歴を持つ。

 群れに(くっ)せず己の力のみを頼りにチェーンや他の子供達を育てた強き母。


 故にチェーン・マニシングも白い孤狼(ころう)をこよなく愛し、誰にも頼らず自由を貫く(つらぬく)

 だからこそレヴァーラ・ガン・イルッゾが提案してきた怪し過ぎる地獄の実験を敢えて受け、己の正義(自由)尊ぶ(たっとぶ)能力を手に入れる原動力へ転じた。


 一方、チェーンの背に乗るラディアンヌ・マゼダリッサとその機体(EL-Galesta)──。


 彼女は全くの真逆。自由を捨て、己が(つか)えるべき主人に命さえ惜しまず差し出す強き女性(人間)

 両親のみならず、家系からそれだけを教育された尖り(とがり)過ぎた存在。

 己の(からだ)を綿毛の如く軽し、愛する主人(ファウナ)同調(シンクロ)したり、果ては肌細胞から直接酸素を取り込む異常体質が体現(たいげん)している。


 寧ろ(むしろ)『君は今から自由だ』などと言われようものなら、何を(かて)に明日を生きれば良いのか判らぬ人種だ。


 然し対照的な両者だからこそ判り合える。

 決して揺るがぬ強き思い込みに縋る(すがる)意味では限りなく同調(心重ね)出来得る二人なのだ。


 ──何という不覚でしょう。私は常にファウナ様の御身(おんみ)を守り抜く存在。


 エルドラ操る星の屑による恐怖の植え付け。これに屈して堕ちかけたラディアンヌ。真逆な自由人(チェーン)に教えられた最も尊ぶべき正義(存在)


「処であの化物(殺戮の女神)を倒すアテが貴女には在るのでしょうか?」


 ラディアンヌ、これは少々意地悪い質問。()()のチェーンだから見た目には何も変化しないものの、当人的には大層困惑(こんわく)顔だ。


「何ィ? それを考えるのは僕じゃない。だからお前を乗せて賭けて(駆けて)いるんだ」


 チェーンの返答を聴いたラディアンヌが微笑む。『お前に総て賭けてる』つい今しがたまで重苦しい身勝手な言葉に思えた。今は自由(チェーン)の御陰で勇気溢れ(あふれ)出る想いに駆られる。


 他人から無条件に信用され認められる。承認欲求が満たされる喜び。


「ふふっ……。了解致しました。チェーン()、私を乗せたままアレを駆け登ること出来ますか?」


 チェーンの背に乗り、軽々しく会話してるが実の処、カーリーのウルミや直刀に寄る打ち下ろしをチェーンの脚力と背中のブースターで避け続けてるから此処だけ平穏(へいおん)無事でいられる。


 ラディアンヌ機が指差した先、ビル山が(くず)れた跡地。ほんの僅か(わずか)であるが丘を成している。


 ラディアンヌは、丘を駆け上がりEL-Galesta(エル・ガレスタ)の二倍は(ゆう)にあるカーリーの上半身へ飛び着く無茶を示唆(しさ)してるのだ。


「馬鹿にすんなよ、お安い御用だッ!」


 早速牽制(けんせい)のミサイル射撃を撃ちまくるチェーン。然も駆ける行動を一切止めぬ無双ぶりを披露(ひろう)する。

 機械生命体へ自由に化ける能力は兎も角(ともかく)、ミサイルなどの銃撃の()も彼女の能力なのだろうか?


 ラディアンヌ、ふとそんな思いに駆られるが、今はどうでも良い些細(ささい)と切り捨てる。加えて「フフッ……」とまたも微笑み浮かべずにいられない。


 チェーンが牽制射撃したミサイル群。


 何とも()()軌道(きどう)を描いた。カーリーの足先から肩先辺り迄、綺麗に登り詰め、(あと)を残す。痕と言っても恐らくカーリーに取って掠り傷(かすりきず)にもならない()


『ラディアンヌ、目印は僕が残した。そこを駆け上がれ』


 チェーン無言のメッセージをラディアンヌは気付き、何と楽しく器用な事をやってのけるものだと感じ肩を揺すり(わら)った。


「やらせへんでぇッ! ──『憤怒の焔(ベルッゾ・アグニ)』!」


 此処で褐色の母(パルメラ)からの介入(魔導)魔力(マナ)が残り(わず)かな危うさを感じてるにも(かか)わらず詠唱(えいしょう)要らずの本気を見せる。


 ズガガーンッ!!


 憤怒の焔(ベルッゾ・アグニ)──。

 ファウナの爆炎呪文である紅の爆炎(ロッソ・フィアンマ)と二度に渡り相殺(そうさい)された爆炎術式。


 瓦礫(がれき)の山と化したフォルテザの街だった場所を容赦なく吹き飛ばす。遂に相殺(邪魔)しない(立てのない)凄まじき威力が白日(はくじつ)の下に(さら)された。


 パルメラはこの術式で誰かを討とうと思い立った訳ではない。


 敵の白い奴(チェーン)が丘を駆け上がり、ジオ(カーリー)へ悪さを企む(たくらむ)間合いが見えた。この超強力爆炎術をジオ(カーリー)の足元に炸裂(さくれつ)させる事。


 これでカーリーが宙へ舞う原動力に成り得る。寄って白い奴の目論見(もくろみ)は達成出来ないと踏んだ。急拵え(きゅうごしらえ)な浮遊術。


 結果──これは不発に終わる。


 白い奴の脚力と背に跨る(またがる)黄緑色の敵の力を過小評価していた。カーリーを見事空へ打ち上げた迄は良かった。


 されど白い奴迄、爆風を背に受け更なる飛躍(ひやく)の手助けをする何ともパルメラらしからぬ失態。やはりカーリーの召喚に全精力を注ぎ込み過ぎたやも知れぬ。


 白狼(チェーン)が爆風を逆手に取り大飛翔(ジャンプ)

 その背中を蹴りロケットの如く二段構えのジャンプをラディアンヌ機が悠々(ゆうゆう)果たす。加えて白狼(チェーン)が付けた痕跡(こんせき)を蹴り駆けながら、遂にカーリーのさらなる上へ飛翔を決める。


 然し跳んだは良いがラディアンヌ機。どうした事かカーリーへ背を向けている。


 向かい合って真っ直ぐ一挙(いっきょ)に駆け登ったのだ。何故最後の一蹴り、身体の向きを変えたのであろう。これがもし誤り(ミス)ならラディアンヌもどうかしてると言わざるを得ない。


「──あ、彼奴め(ラディめ)。随分(たの)しんでやがんじゃねぇか」


 地上から戦況を見つめる姉貴分、オルティスタの笑み。


『俺の妹分がやけに張り切ってやがる』


 何しろ長い付き合い、聞くまでもない。手に取る様にラディの気分が伝わり、自分まで心の躍動(やくどう)を感じた。


 最後の飛翔(ジャンプ)、ラディアンヌ機が背を見せた動き。狙い()まして態々(わざわざ)見せ付けた。途方もない攻撃への序章。


 EL-Galesta(エル・ガレスタ) Lydina(リディーナ) Custom(カスタム)の中でも、ラディアンヌ機の躍動ぶりは群を抜いている。


 全身の姿勢制御用スラスターを正規パイロット顔負けで操り、何と頭部を下、脚部を上へ向ける()()()()なる動き。


 さらに右脚を繰り出し、逆さの姿勢でカーリーの左上に生えた腕の(ひじ)部分。此処へ蹴りを落す。


 頭より足が上の位置に来る蹴り──オーバーヘッドキックを大胆(だいたん)不敵(ふてき)にや()()()()()のだ。


 ボキッ! ブチィッ!


 ──ぐっ!? ぐわぁぁぁッ!!


 カーリーの肘が()()()()に曲がる。ラディアンヌ機の脚部がそのままカーリーの肘下を、空いた左脚で絡め取り引き千切る情け容赦知らずな在り得ない結果を生む。


 遂に4本腕の内、1本が完膚(かんぷ)なきまで奪われたカーリー。

 仮に痛み(ダメージ)を数値へ変換する(すべ)が有るなら、恐らくレグラズ&デラロサコンビの攻撃が上の数値を弾き出す。


 然しながら攻撃の主体というべき腕を持って往かれた衝撃が(すさ)まじきもの(なり)


 そして未だラディアンヌ機、脅威(きょうい)攻撃(ターン)がなおも続く。

 オーバーヘッドキックが終わった後、即ちカーリーに対し正位置(真正面)へ戻った処で、まさかの掌底(しょうてい)打ちを鳩尾(みぞおち)へぶち込む大盤(おおばん)振る舞い(ぶるまい)


 生身同士なら(うなず)けるラディアンヌの掌底打ち。殴る拳を傷つける危険性が下がるやり方。

 けれども今は機体の手で殴っているのだ。何が狙いか観る者にはまるで理解不能。


 ビリィッ! ビリビリビリィッ!!


 ──ぎゃあぁぁッ!!

「な、なんやこれぇッ!!」


 ラディアンヌ機、フォルテザ市街地が健在だった頃、吸い取った電気を機体の(てのひら)から敵へ流す電気ショック的な一撃。


 殺戮の女神な()()()といえ、中に潜むジオとパルメラは生身の人間。これは痛烈過ぎる一打。


『デラロサ隊、この中でお前(ラディ)が一番強いからだ』


 チェーン・マニシングの目に狂いなし。余りにも強過ぎるラディアンヌ・マゼダリッサの本気。神すら引き合いに出したパルメラ母子へ同情の気分さえ浮かぶ周囲。


 このまま(God)殺し(Slayer)を彼女1人で達成しかねない勢いがある。カーリー戦、終結を迎えるのか!?

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