機体解説その③『EL・Galesta "Type Lydina Model"』
エル・ガレスタという名称は元々、連合軍第一特殊空挺部隊が最初に実戦配備したEL97式の愛称であるのは周知の事実。
レヴァーラ・ガン・イルッゾの相棒でエンジニア出身のリディーナが、ア・ラバ商会への技術支援を仰ぎ、改修という生易しさでは済まされない魔改造を施したのがEL・Galesta "Type Lydina Model"だ。
──Type Lydina Modelの共通点──
1.戦闘服を搭乗服とし意識操作を可能。
最大の特徴は人工知性体金属を埋め込んだ戦闘服を媒介として、搭乗者の意識や特殊能力すら具現化するこれまで類を見ない特殊な機械と化した点であろう。
ファウナ・デル・フォレスタが蜘蛛の糸を使い、Meteonellaと直接接続した事が切欠である。
然しながらリディーナ博士は、方法論として採用したに過ぎない。
レヴァーラ配下のヴァロウズ達の特殊能力。
これを機械で表現出来れば、ゼファンナ・ルゼ・フォレスタ率いる魔導士による底上げを意識したEL97式改より強力な機体が用意出来る。
加えて特殊能力者ではないとされるアル・ガ・デラロサなども手動操作でなく、意識下操作を加える事で、運動性能の向上を図った。
なおアル・ガ・デラロサ専用機とマリアンダ・デラロサ専用機のみ、従来のレバーとフットペダルによる通常機構を残してある。
他の機体群は軽量化と利便性を図るべくこれらを排除した。存在しても無駄なものは極力外す。リディーナの徹底ぶりが窺える。
2.運動エネルギー回生システムの流用
EL97式は内燃機関などのエンジン類を全て排除し、バッテリー駆動のみとしている。その為、バッテリー重量増を如何に減らすか。これが最大の課題点。
機体装甲の方を軽量化し駆動時間を増やすか、或いは太陽光発電システムなどによる別の電力供給で補うか。
何れにせよ付け焼刃な感が如何にも否めない。これをリディーナは良しとせず、全く別の技術転用で最適解へと導いた。
それが嘗てレーシングカーのパワー供給システムであった運動エネルギー回生システム(Kinetic Energy-Recovery System・略称:KERS)の原理だ。
KERSはブレーキ時に発生する摩擦熱エネルギーを回収し、駆動輪回転のアシストに転用。内燃機関に追加することで最大出力向上を目的としていた21世紀前半の技術である。
これをリディーナはEL97式の駆動系約8割に軽量&小型化したものを採用。腕を回す、走る、ホバリング移動などこれらの運動時に発生する熱エネルギーを回生することに成功。
これで従来よりバッテリー減に関わらず、稼働時間を飛躍的に向上させた。
これらの改修の域を超えた魔改造により最早、別機体と言っても過言でない性能向上へと導いた。
Type Lydina Modelの中でも型式をEL98式か、或いはEL・GalestaMarkⅡに変更してもおかしくない機体について独自解説を続ける。
──フィルニア・ウィニゲスタ専用機──
大気を自由に操るフィルニア・ウィニゲスタを搭乗者と見越し開発したモデル。搭乗者の普段着を反映した赤ベースで胸元の辺りなどを白にした機体色。
この機体最大の特徴──EL97式バッテリーに於いて大きな割合を占める両肩をジェットエンジンのフィンを内包することで完全排除している。
フィルニアが嵐を巻き起こし、このフィンを強制回転させることで主に両手足の力を、著しく向上出来る。
特にジャンプ力は凄まじい。飛行に匹敵する程、高く舞い上がることが可能だ。然もジャンプ時に発生した風力も当然ながらエネルギー回生可能。
次に紹介するディーネ専用機同様、最大稼働時間だけならLydina Modelの中でもトップクラスなのは明白である。
──ディーネ専用機──
水使いディーネに合わせて水色を機体色としているモデル。この機体、そもそもバッテリー駆動でなく、水力に頼ることで稼働時間及び攻撃能力。この何れも両立させた傑作機である。
背中にまるでダイビングに使用する酸素ボンベの様なものを2つも背負っている。実際の中身は1/4程、ただの水分が入っている。残りは空気、空気にも水蒸気が在る。
このボンベには水の噴出口が存在する。ディーネがこれらを意識すればタンク内の水圧が一気に上昇。噴出口から水を噴射し、フィルニア機と同クラスのジャンプが可能。
しかもこの水圧、水圧発電も同時に行っている。タンク内の水蒸気を搭乗者が操れる限り、無類の稼働時間を得られる。
攻撃側の話に移ろう。この機体には他のEL97式が標準装備している超電磁銃と造りの似通った水圧銃を装備。
これが背中のタンクに繋がっており、本家の超電磁銃最大出力には及ばないものの、電力に頼らない連続射撃が可能なのだ。
──アル・ガ・デラロサ隊長機──
デラロサ隊長の髪色に合わせ銀色を主体とした隊長専用機。正にこの機体こそ『EL・Galesta MarkⅡ』と呼称すべき、別の機体と言える。
背中から膝辺りまで伸びているスカート状の部品。さらに機体上部にも、頭部を後ろからガードする様な先の尖った部分が存在する。
背後からの攻撃を極力防ぎ、隊長機として生き残ることを主目的としているのか? そうではない。
この機体の大変地味だが他に類を見ない特徴的な膝関節。これはデラロサの元愛機ED01-R、通称『グレイアード』の前後に曲がる膝の流用。
人型兵器が避けて通れぬオートバランス機構。これをOSでなく、機械制御で実現すべくED01-Rで採用したものだ。
通常のEL97式はホバリングで浮くことにより、オートバランスを或る意味諦めている。然しこの機体はホバリングだけに頼らず、自立歩行を捨ててない為、乱戦に強い。
その上、この膝関節を採用してるが故、MarkⅡを語れるのだ。
膝が逆に曲がる+背中のガード。これらを駆使し、滑走路不要の飛行形態に変形。その場からの離陸を可能とした。
Legモードで機体上部を前へ寝かせ、頭部を半分程、機体内部に収納した後、頭部後ろのガードが飛行形態の機首代わりになる。
さらに膝まで伸びたスカート状が真ん中から割れ、主翼形状を成す。なお両腕はただ固定するのみ。
この状態からFlyモード形態へ移行すれば、逆に曲がっていた膝から先が折り畳まれ、簡易的ながら飛行形態にシフト出来る。
此処でリディーナが手抜きをしたのが飛行動力。彼女の師というべきサイガン・ロットレンと取り巻きの科学者達が残した反重力装置を大量に積載。
離陸時こそEL97式のホバリングを使用するが、浮き続けるという意味合いでこれを使う。空中移動時にもホバリング機構を採用。
空を飛ぶ人型兵器──正に人の夢と叡智の結晶であるかにみえる。但し前述したフィルニア機&ディーネ機に比べ、遥かに燃費が悪いのにお気づきだろうか。
リディーナが流用したエネルギー回生システム。これが必須なのがEL・Galesta MarkⅡ。
異能者でない隊長が、ゼファンナ隊の魔導に対抗し得るべく生み出した苦肉の傑作機なのだ。
なお初出撃の折、稼働実験中だったということも重なりゼロ武装で出撃したこのMarkⅡ。格好良く飛行形態による特攻で敵機を撃破した次第だが、実は他に打つ手がなかった。
浮島決戦後、リディーナに依頼して火薬で撃ち出す頭部30㎜バルカンを追加装備。
超電磁砲は勿論、少し出力を下げた超電磁銃でさえ、大量の電力を消費する。大飯喰らいのデラロサ機に取って本音の処、これは死活問題。
故に火薬で撃ち出す頭部バルカンを攻撃手段として採用。デラロサ隊長がトドメの一撃を他の機体に任せてたのは、ただの格好付けでないのを補足しておこう。
 




