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第98話 武士に二言なしッ!

 対エルドラ・フィス・スケイル決戦兵器『Meteonella(メテオネラ)』の初戦から一夜が明けた。


 戦いが終わっても昂ぶる気持ち(アドレナリンで)で、とてもはしゃいだファウナ・デル・フォレスタで在ったが明け方近く、ようやく疲労が躰に危険を出した(ピークに達した)様だ。

 今はレヴァーラの寝所(ベッド)にて安らかな寝息を立てている。共に隣で眠っているレヴァーラも緩んだ顔だ。元鞘(もとさや)にどうにか戻れて落着きを取り戻した。


 未だ完徹(かんてつ)してるのはNo0のリディーナだ。顔を洗う余裕もなく、避難警戒解除の通達にMeteonella(メテオネラ)のチェック。仕事する(たび)業務が積み重なる。出来過ぎる者の宿命と言わざるを得ない。


 衛星カメラの中継を遮断(しゃだん)した故、昨夜の情報が外に漏れた可能性は限りなくゼロに近しい。けれどもこの慌ただしい動きに何かが起きた事を察知されたに決まっている。軍は元よりNo1(エルドラ)にも。


 中間職(リディーナ)の悩みの種が尽きるのは未だ訪れそうにない。しかしイレギュラーなディスラドの介入(かいにゅう)により、自分達に取って頼みの綱というべきMeteonella(メテオネラ)の貴重なデータ(サンプル)が取れたのは不幸中の幸いである。


「──処で此奴(黒豹)が如何に凄いかは理解した。だがどうしてこれが対エルドラ決戦兵器なのかまるで判らん」


 オルティスタとラディアンヌ──。結局寝つけず完徹している。長女が汗だけ流した余りに無造作さな(無警戒過ぎる)姿で第2格納庫へ戻りながら言う。水も(したた)適当(ノーブラ)な女。


「ン~っ、確かにそうなんですよね。触れる処か居所すら判らない相手をこの()()がどうやって()()()()のやら……」


 そんな女を捨ててる痛々しい姉を何とも思わないラディアンヌ。もう日常過ぎる光景なのだ。


「──な、何だァ此奴はっ!?」


 騒がしい奴(アル・ガ・デラロサ)が来た。そう思うだけでまるで動揺(どうよう)しない半裸同然のオルティスタ。『男は随分御無沙汰(ごぶさた)』と(おど)けるのなら嘘でもそれらしき反応をすべきだ。


 デラロサの驚きは二重で在る。そもそもこの格納庫の存在を知らなかった。そしてあからさまに人智を超えた存在を見せ付けられたという2点。

 前者はリディーナが自分の趣味を誰にも見せたくなかっただけだ。作りかけの上、完成するか危うい(自信ない)スクラッチモデル。そんな中途を(のぞ)かれるのは、()る意味裸を見られるよりも羞恥(しゅうち)だ。


「此奴が例の肝煎り(最終兵器)らしいぞデラロサ」


 本当に物怖(ものお)じ一つしないオルティスタである。自ら呼んだデラロサの視線を釘付けにする。


「そうか──()()は実に()()()()。何ともけしからん」


「──っ」


 デラロサも良い加減少しは()()()()()()を示すべき。揺れ動く大層大きなもの(二房)から全く目を離さずシレッとしている。


 この目に余る両者のやり取り──。


 ラディアンヌが片手で両目を押さえ(こうべ)()れつつ首を振った。もう互いに此処まで堂々過ぎると、デラロサの『エロい』は黒光りする黒猫ちゃんを指す冗談(Joke)にすら思いたくなる。


「──で、此奴一体()()()()()()


 これはさも当然なるデラロサの質問なのだ。それなのにラディアンヌが頭の悪い解釈(思春期男子の悪ノリ)を続けてしまう自分に勝手な恥じらいを感じ赤くなった。


「レヴァーラ()とファウナの愛の巣(専用機)だ。2人だけが()()()()。お前には恐らく動かす処か、()()()事すら適わんだろうな」


 オルティスタがレヴァーラ()(おど)けて見せる。次いでにデラロサを軽く(あお)った。


「だろうなぁ……。此奴にはそんな()()()()()


 腕を組みつつ本当に匂いを()ぐ仕草を見せるデラロサである。


 ──もぅ止めなさい自分(ラディ)。これが全部隠語(いんご)に聴こえるとか良い加減、()()どうかしてる(壊れてる)わ。


 完徹だから夜の気分を未だ引き()っている。そう身勝手に思い込もうと決めたラディアンヌである。


「──何馬鹿言ってんのよアンタ達」


 Meteonella(メテオネラ)の簡単なチェックを終えたリディーナが余計な割り込みで茶々(粗茶)を入れる。


「え……」

「あ、当たり前の会話をしているつもりだが……」

「……」


 意味の判らぬ拾い方をされ戸惑(とまど)うオルティスタとデラロサ。ラディアンヌがいよいよ()を両手で隠した。


「ハァ……こんな物を持ち出されたら、いよいよ俺()の出番無くなるかもな」


 オルティスタが本音(弱気)と共に溜息を吐く。


「俺()とは何だぁ! 生身で戦うお前と一括(ひとくく)りにすんじゃねぇ! 俺とマリーには人型兵器(ビクロス)が在る!」


 この発言に盾突(たてつ)くデラロサ。半裸のオルティスタへ拳を突き出し突っかかって往く。その気がないにせよこれは余りに近過ぎる距離。


「悪いがあの玩具とは次元が違う動きをしていた。この()()()も言ってたぞ。──ってお前等、二人してあの騒動(そうどう)で良く()()()()ものだ」


 ──お、お願いだから話に巻き込まないでくださいよぉぉ。大体『二人して寝られた』とかそんな煽り止めて(脳内自動再生するから)下さいぃ(哀しいですよぉ)


「オルティスタさん、それは気が早過ぎてよ。貴女達が居なくちゃ一体誰が()()()()を守るって言うのよ。ねぇ……将棋好きなデラロサ様」


 2人まとめて(なだ)めるリディーナなのだが、もう何聴いても隠語として(アレな感じに)直訳(自動変換)される女武術家にまで気が回らない。


「そいつは結構な話だ。しかしだなリディーナ()()。良い加減、俺とマリーをただの()じゃなく飛車角(ひしゃかく)に成る機会(チャンス)を与えて欲しいもんだぜ」


 親指を立て自分を指しつつ踏ん反り(ふんぞり)返るアル・ガ・デラロサ。彼は『(アル)とマリー』と確かに言った。


 空挺(くうてい)部隊上がりの凡人(ぼんじん)共が中核(飛車角)に成る為には当然、第1格納庫で寝ている2機をどうにかしろと訴えている。しかもこの場に居ない嫁を勝手に巻き込んでいる。


 いつもの茶目っ気な顔で真っ直ぐリディーナ博士の目を刺す。この男、冗談も本気も大抵こんな体だから、ただのCrazy(キチガイ)なのか実は正気なInsane(死ぬ気)なのか判別しづらい時が在る。


「アル・ガ・デラロサ? それ意味承知の上(奈落覚悟の趣旨)で、この私を(あお)ってると理解して良いのかしら?」


 うって変わってギロリッと銀色の短髪を(にら)むリディーナ博士。早い話が『俺達の軍試作機(グレイアード)正式採用機(エル・ガレスタ)にもあの()()()()()()と近しい改造(チューン)をしろ』彼はそう要求(発注)している。


「本当に良いの? 貴方達の玩具がまともにいう事効かなくなっても私責任取れなくてよ?」


武士(もののふ)に二言なしッ!」


 無駄だと知りつつ最終確認(ファイナルアンサー)を投げ込むリディーナ。彼女に取っても興味深い提案には違いないのだ。武士処か日本人ですらないデラロサが気合いだけの日本語で間髪(かんぱつ)入れず応答した(応ッ!と答えた)

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