(4)最終話
「では、私の芋をあげますよ」
「それは?」
「はい、私は家庭菜園という名のもとに野菜の研究をしていました。そこで育った野菜は健康です。種芋も『じゃがいも、さつまいも、タロイモ、里芋、山芋』があります。それに各種野菜の種も積んでいます。聞く範囲ではその病気は連作によるものと思います」
「我国は一種類しか植えていませんからそうかもしれません」
「連作は土改良をしたらいいですよ。草木灰を使ったりします。それにさつま芋は連作障害を起こらないといわれてますし、ツルでいくらでも増えますよ」
「あなたは我国の救いの神だ。ありがたい。それにあなたはあの人によく似ている」
「誰ですか?」
「まあ、昔のことですが、私が地方に旅行に行ったときにソトラシド辺境伯の子と恋に落ちました。私はそのまま親の命令でオッカネ王国に留学しましたが、その子は私を追いかけてきました。
帰国予定だったのですが、その子は私の子を受胎していました。そのとき妊娠3箇月でした。彼女はオッカネ王国で待っているから迎えに来てくれと言ってたのですが、その当時国内が騒乱していたので結局私が迎えに行ったのは5年後でした。しかしもう彼女はこの世の人ではなかった」
「ではアダン様は?」
「妻のアデーレと息子のアダンは前王夫人とその子です。私と前王は血縁ではありませんが、前王の遺言によりアダンが成人するまで宰相をしていた私が一時的に国王となりました」
「父上、私が成人しても国王にはなりません。国民は父上を望んでいます。私は父上が逝去されてからでいい。母もそれを望んでいます」
「そうですわ。国民はそれを望んでいます。それに私はあなたと一緒になれてとても幸せです。前王には悪いですが、前王は宝石はくれましたが愛はくれませんでした。私は愛が欲しかった。あなたには愛をいただいた。だからあなたがそのまま国王でいてください」
「おーー!アデーレ!!」
私の前でいつのまにか親子劇場が開催された。家来を見てみると
また始まった。とばかりに少し呆れているようだ。
国王と王妃はいつも家来の前で同じようなことをやっているのだろう。
「おほん!失礼しました」
「では、私はこれから荷車の芋類を下ろしに行きます。誰か農業に詳しい人を同伴させていただけますか?」
「わかりました。では農業大臣に案内させましょう」
「ありがとうございます。それではいったん失礼します」
堅苦しい挨拶が終わったので後方で待っているヨハンの方を振り向いた、そのとき
「ミリア殿!!その髪飾りはどうなさったのですか!?」
国王が慌てた口調で尋ねてきた。
「これは母の唯一の形見です」
「えーーーーー!!!!」
「そんなに驚かなくても安物ですよ。これは母の恋人がまだ学生だったので安物らしいのですよ。妊娠していた母が髪がうるさいので切ると言ったら、恋人は『切らないでくれ!』と言って、夜店で買ったものに自分で彫った熊を付けたらしいのですが、どう見ても豚ですよね。母はいつも笑って話してくれました」
あれ?国王が黙ってしまった。王族に失礼な話をしてしまったかしら。
え、え、えーーーー。国王が玉座から立ち上がり近づいてきた。
どうしょう。ヨハンに目で助けを求めたが……。
ヨハンは……なぜ?……泣いている。
ヨハンどうしたの!?
とうとう国王が私の前に来た。
「どうしました?」
だって国王も泣いているんだもの。それにアデーレ夫人も泣いている。
みんなどうしたの?
いきなり国王が抱きついた。
えーーー。アデーレ夫人がいるのにいいの?
国王の肩が震えている。
「あれ!!私どうしたの?涙が頬を伝わった」
「ミリアよく生きていたね」
「?」
にこにこしていたアデンまで泣いている。
「私が国に帰る前に男の子が生まれたら“ダン”、女の子だったら“ミリア”と名付けるとサーラと約束していた」
「?……」
「ミリア!!!お前は私の子だーーーーー!!!!!」
「ああ、わかった。さっきから出る涙はこれだったんだ」
「お父さん!!!」
「苦労掛けた。すまない」
「いいえ。会えて良かった。お母さんが会わせてくれたのね」
「お前はあの頃のサーラそっくりだ。金色の髪に何処までも澄んだブルーの瞳」
家臣たちも一緒に泣いている。
あのメイドさんたちも大声で泣いている。
執事のセドリックが私の側に来てそっとハンカチを渡してくれた。
「ミリア様よかったですね。タラソ様これまでの苦労が報われましたね」
冷静なセドリックが大粒の涙を流していた。
その日王城は奇跡の出会いに皆心を満たした。
翌日から私は早速種芋の植え付けと土地改良にとりかかった。種芋が元気であったことと土地改良が進んだことと二期作を行ったことでギザジュウ国の食糧事情は大幅に改善した。
ヨハンはアダンの剣術指南役をしている。ヨハンはソトラシド辺境伯の指南役だったらしく母さんの家出にソトラシド辺境伯から頼まれて供をしていたらしい。
私はそれから1年後アダンと結婚した。
アダンの友人は、『ぼんくらのお前がなんであんな綺麗な奥さんをもらえるんだ』とアダンをボコボコにしていたらしい。
オッカネ王国は浪費がたたって破綻し、クーデターが起こり国王一族は斬首された。
ドバン伯爵はギザジュウ国王暗殺未遂と詐欺によりシロイナ王国の国王が自ら処刑し、ドバン家は断絶、シロイナ国王の子をギザジュウ国に人質に出すことで事の沈静を図った。
ギザジュウ国の国力はシロイナ王国の十数倍あるから当然の成り行きだった。
それからソトラシド辺境伯がやってきた。白髪が多いがまだ現役だ。私の顔を見るなり『サーラ!!』と叫ぶと抱きついてきた。
お母さんの匂いはしない。加齢臭だ。臭い。
でも優しそうだからいいか。
ヨハンも喜んでいる。
私は今日も品種改良のために家庭菜園をしている。焦げ茶の日焼け止めは私のシンボルだ。
アデーレが孫を抱いていちごを求めに菜園にやってきた。
男どもは置いて女三人で茶会をする。
「これ、私が新種の紫芋で作ったスイートポテトです」
「まあ、あなたはお菓子の研究にも余念が無いわね」
「ママ、わたちも欲しい」
「そうね。一緒に食べましょう」
「Fin」
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