魔術師マーリンの独白①
私の名前はアンブローズ・マーリン。
母はアルダンという名だ。生まれも育ちも高貴な方、教会の方々が偶に母のことを「王女様」と呼んでいたので、私が元いた国の……ウェールズ南西部の小国ダヴェドの王女だったのだろう。しかし、悪魔、それも淫魔が母のことを気に入り、私を孕んだことでこの国の王と王妃以外の城の住人に疎まれ、私を産む前にこの教会に行くよう、王に指示されたと神父に聞いた。
私を産んだ直後に、この教会で洗礼を受けたことが項を成したのか、私は悪魔の心を持つことはないと言われていた。しかし、容姿は顔も見たことがない父に似たのだろう。母は美しい金髪に深緑の瞳を持っている。母の両親、私にとっては祖父母に当たる方々だが、遠目に見た程度で私のような、黒い髪に悪魔のような魅惑的な血のように赤い瞳を持ってはいなかった。
この容姿のせいで周りから「悪魔の子」なんて言われてしまうことがあるが、母を筆頭に教会の方々が私を慈しみ愛してくれていたので、外道の、それこそ父と同じような存在にならなくて済んだ。私の出自と容姿に少し危機感を感じた母と教会の方々は、私を男として育てた。自室と母の部屋以外は全て男装するよう、それがお前を守れるようにと言われた。
そして数年後、母はまた孕んだ。今度は王が宛がった人物との子であった。生まれた妹はガニエダという。母に似て大変可愛らしく、将来は母のように美しくなると誰もが想像した。もちろん私も。妹は幼い頃から私のことを「お兄様、お兄様」と付いてきてくれた。それが可愛く、嬉しいと感じている私は、妹を甘やかしていた。その光景を母や教会の方々が微笑ましそうに眺めているのをぼんやりとだが覚えている。
それは私の幸せで暖かな記憶だ。
アンブローズ・マーリン
黒髪赤目の女性。アーサー王登場時は魔術で男の姿で登場人する予定。ネガティブ思考だが、女性好きなレズビアン。男も好きだが少しトラウマがあるため。