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9・人質ごと撃ち抜いた

 宿場町の様子から察するに、魔物の襲撃というのは考え辛い。あまりにも街並みがそのまますぎて、とても襲撃の痕とは思えない。


 これが野盗であれば、無くはない。


 もちろん、野盗といっても様々で、魔物と変わらないような、とにかく荒らしまわる連中もいるのは確かだ。

 だが、人攫いを生業にするような賊であれば、その限りではない。高値の奴隷を確保するにはあまり乱暴な事は出来ないので、当然やり方が違う。


 金品目当てであれば、手当たり次第に破壊して回る事も厭わず、とにかく金品さえ奪えれば人や家屋がどうなろうと知った事では無いという荒っぽいやり方になる。


 人を襲撃して食い散らかすことが目当ての魔物であれば、より一層顕著だ。


 対して人攫いが目的である場合、目的は健康で動ける人間が目当てなので、とにかく争わずに拘束できる方法を選ぶ。


 当然、それは話し合いなんかではない。標的を見定めて、「価値の低い商品」を餌にして抵抗を諦めさせたりするあくどいやり方になる場合が多い。が、それでも他の野盗連中に比べればスマートで、人以外の被害は最小限に留まる場合が多い。まさしく、目の前にある宿場町のように。


「コイツは手慣れた奴隷狩りの手口だな」


 ヒャッハー冒険者が冷静な分析をしている。見た目はヒャッハーさんだが、ちゃんと中身は冒険者であるらしい。もちろん、魔物狩りを見ると、腕も確かだ。


 そして、彼らはお構いなしにズカズカと宿場へと歩みを進めていく。


 しばらくすると、何事も無かったかのように門番らしき人物が町の入り口に立っているではないか。


 が、僕らが騙されるはずもない。


 普通の門番がこんなにも場数を踏んだ荒くれ者な立ち姿であるはずがなく、自分の街へと旅人を迎えるというのに、相手への敵意と警戒心を極限まで張りつめている訳がない。


 もちろん、一見してそれを悟らせないように演技はしているのだが、どうにも隠せてはいない。


 先頭を行くヒャッハー集団は気付かないふりをして門番へと近付き、そして素早く拘束した。


「テメェが門番なわけねぇよなぁ?静かにしろ」


 いや、言った時には既に気絶させた後やん。かなり手慣れた手つきで仕事をしている。まるで同業者の様じゃないか、こいつら。いや、外見は凶悪なヒャッハーにしか見えないが。


 門番は声ひとつあげられずに縛られて転がされてしまった。


 その後を、僕たちに守られた隊商が門の前で停止している。


 ヒャッハー集団の合図で僕たちも門を抜け、街へと入ると、異常なほど静かな宿場が広がっている。


 といっても、ここはメインの宿場ではなく、荷物が多く歩みが遅い隊商や徒歩での行商をターゲットにしているので、宿の数は少なく規模も小さい。


 とはいえ、それでももうちょっと活気があるのが普通である。


 そんな町の中を進んでいると、一軒の宿屋から人が出て来た。


「おや、これは『鬼の牙』の皆さん」


 どうやら、ヒャッハー集団を知っているらしい。


「おう、この間な世話になったな。で、お前は何で無事なんだ?」


 ハナから演技をする気すらないヒャッハーさんがド直球でそう問いかけると、その人物も顔色一つ変えずにシラを切る。


「何の事でしょう?魔物に襲われた訳でも無し、ピンピンしてますが?」


 などと言っている。


「まあ、そうらしいな。相当規模のデカイ組織の一員な訳だ。いつからもぐりこんでやがった?」


 と、もはや会話にすらなっていない。


「デカイ組織?私は流れの料理人ですから、ここにはひと月ほど前に」


 と、なぜかゲロっているその人物。


 とはいえ、相手も相当な自信があるらしい。こうして情報を渡しながらも、気配を消して集まる連通が多数。50人は居るかな?


「そいつはスゲェ腕だな、ひと月で街を網羅して奴隷狩りに着手かよ。手際が良すぎねぇか?」


 隠すことなくそう問いかけるヒャッハーさん。


 その問いに対しても、平然と笑顔の相手。


 そして、粗方配置を終えたんだろう。頃合いを見計らうように、ニコニコ顔でサラッと一言。


「南方じゃ多少名が知れてるかも知れないが、俺たち相手にどうにかなると思ってもらっては困るんですよねぇ」


 やれやれとでも良いそうな仕草でそう言った。


「クソッ、バカにしやがって!」


 沸点の低いヒャッハーさんたちが武器を手に取る。


「うちは戦闘奴隷も扱ってるので、貴方方も高値で売れますよ」


 などと、余裕な表情で煽ると、斬りかかった「鬼の牙」の剣士をひらりと避けた。


 なるほど、コイツら大戦戦功者の一団が中核らしい。


 たまにいるんだ。こうやって戦功報奨をあっという間に食いつぶして、平時の冒険者稼業じゃ我慢ならなくて落ちていく奴らってのが。


「仕方ないな。ちょっと数が多いから、君たちはちゃんと荷馬車と商人を守っててね?」


 目の前の状況を唖然と見ているもうひとグループの護衛パーティに微笑んで、僕は身体強化して賊共へと突っ込んでいった。


 最初の三人は気付く間もなくスパイクを刺されて倒れ伏し、こちらに気付いた四人目は、対応の間を与えずに銃床で叩き伏せた。


 あまりに綺麗な配置なのでドミノ倒しよろしくそのまま次々と突き、殴打し、蹴り倒していく。


 チラッと見れば、「鬼の牙」もそれなりにはやれている様で、先ほどの避けられた後は何とか襲って来た十人ほどと戦っている。


 さすがにすべての賊が大戦戦功者であった訳ではなく、隊商に忍び寄ろうと完全に気配を消していた手練れから倒していったため、荷馬車を守る冒険者たちも何とか防戦できている。


「何だテメェ!」


 などと、僕の動きに追随しようとして来たのが居たけれど、追えたのは眼だけだったらしい。体の動きが付いてきていない。そのまま顔面を銃床で殴打して倒れたところを喉を踏み抜きざまに、さらにもう1人へと突きを繰り出す。


「クソ!妖精かよ!!」


 誰かがそう叫んだ。


 そして、最初に出て来た男が素早く建物から人を引き摺りだしてきた。


「おい、妖精!!こいつがどうなってもいいのか?」


 そんな事を言う男に視線を送るが、僕は止まることなく次々と賊を倒していく。


「マジでぶっ殺すぞ!」


 などと喚いている。


 ちょうど、二つの冒険者パーティが戦う賊以外の大半を倒したところで、僕は一度止まった。


 そして素早く弾を込め、人質ごとその男を撃ち抜いた。

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