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【マッチ売りの少女】永劫の炎より生まれ出る不死鳥の息吹

「マッチはいりませんか。マッチを買って下さい」


 ある冬の夜のことです。一人の少女が、大通りでマッチを売っていました。


「マッチはいりませんか。マッチを買って下さい……」


 けれど、足を止めてくれる人は誰もいません。その内に少女は、寒さと疲れでうずくまってしまいました。


「このままじゃ凍えてしまうわ……」


 耐えられなくなった少女は、売り物のマッチを一本擦りました。


 すると、大好きだったおばあさんの幻が現われます。


「おばあさん……」


 去年病気で死んでしまったおばあさんを思い出し、少女は涙ぐみます。すると、おばあさんが言いました。


「泣くでない、我がすえよ……」

「でも、誰もマッチを買ってくれないの」


 マッチが売れなければ、今年の冬を越せないかもしれません。暗い顔になっている孫を見て、おばあさんは「仕方がない」と重々しく頷きました。


「そなたにある秘密を教えよう。実は、それはただのマッチではない」


「……え?」


「その名も、『永劫の炎より生まれ出る不死鳥の息吹』。さぁ、皆に教えてやるがよい。今こそ、真名を解放する時だ……」


「分かったわ」


 少女は大好きなおばあさんの話を信じることにしました。


「『永劫の炎より生まれ出る不死鳥の息吹』はいりませんか。『永劫の炎より生まれ出る不死鳥の息吹』を買ってください」


 するとどうでしょう。先ほどまで無視を決め込んでいた人々が、皆こっちを見ているではありませんか。


「『永劫の炎より生まれ出る不死鳥の息吹』だと?」


「何だ、それは?」


「再生を司る不死の鳥が今際の際に残した、尽きざる輪廻エターナル・フェニックスだ。こうしてワシが冥府より交信できているのも、ひとえにそのお陰よ」


 おばあさんが説明してくれます。


 町の人々は興味津々といった顔になりました。


「何を言っているのかさっぱりだが、中々すごいシロモノらしいな」

「ちょっと欲しくなってきたぞ」

「お嬢ちゃん、一箱ちょうだいな」


 私も俺も、と声が上がり、マッチは飛ぶように売れていきます。


 次の日からも少女は『永劫の炎より生まれ出る不死鳥の息吹』を売り続け、それはまたしても驚異的な売り上げを叩き出しました。


 とうとう在庫のマッチを売り切ってしまった少女は、おばあさんのアドバイスによってマッチ工場――もとい、『永劫の炎より生まれ出る不死鳥の息吹』工場を創設します。


 その事業は大当たりしました。こうして国一番の大金持ちになった少女は、すっかり現世に居着いてしまったおばあさんと末永く裕福な暮らしを送ったそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは買います! 自分用と知り合い用に合わせて五個買います(笑)! >「何を言っているのかさっぱりだが、中々すごいシロモノらしいな」 この台詞大好きです! 余裕のある大人! 私もこうあ…
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