【白雪姫】「鏡よ、鏡。世界で一番中二病なのは誰?」
「鏡よ、鏡。世界で一番中二病なのは誰?」
「それは白雪姫です」
「何ですって!?」
鏡の答えに、王妃は眉を吊り上げました。
「義理の娘の白雪姫の方が、このわたくしよりも中二病? そんなことあり得ませんわ!」
聞き間違えかと思い、王妃はもう一度尋ねます。
「鏡よ、鏡。世界で一番中二病なのは誰?」
「それは白雪姫です」
「何てことなの!」
もう一度同じ答えが返ってきて、王妃は愕然となりました。
「世界で一番中二病なのは、このわたくしですわ!」
王妃はそう叫びながら、部屋から出て行きました。庭で地面に魔法陣を描いて遊んでいる白雪姫に詰め寄ります。
「白雪姫、わたくしと勝負なさい! どちらが真の中二病なのか、分からせて差し上げますわ!」
「あら? お義母様ごときが、このアタシに勝てるとでも?」
白雪姫は不敵に言ってのけます。二人が大声で言い合っているのを聞きつけて、周囲に人が集まってきました。
「先手必勝! 食らいなさい! 必殺、ウサギさんアタック!」
王妃は両の手のひらを頭の上に当て、パタパタと動かしてみせます。それは、彼女のとっておきの技でした。
しかし、白雪姫は義母を鼻で笑います。
「次はアタシの番ね」
白雪姫は片手で顔を覆いながら、前屈みになりました。
「我は凍れる神の産み落とした白の忌み子。眠れよ、命! 禁断の果実!」
「ぐふぅっ!?」
格の違いをまざまざと見せつけられ、王妃は膝をつきました。
「な、なんて中二病なの……! 鏡の言っていたことは本当だったのですか……!」
王妃はわなわなと震えます。辺りにいた人たちが白雪姫に賞賛の言葉を浴びせました。
「実に素晴らしい中二病だ!」
「これで我が国も安泰ですな」
その内に、白雪姫の父親である国王までやって来ます。
「さすがは我が娘だ! これほどの中二病患者は、どこを探しても滅多に見つかるまい。それに比べてお前ときたら……」
国王はまだ地面にうずくまっている王妃を、呆れた目で見ました。
「まともに必殺技も打てん奴など、王家の面汚しだ! 城から出て行け!」
哀れな王妃はつまみ出されてしまいました。
けれど、彼女は諦めません。追放先の森の中の一軒家で、虎視眈々と汚名返上のために動きます。
「鏡! 新しい必殺技を考えましたわ! 『リスさんトルネード』って言いますのよ! どうかしら?」
城から持ち込んだ鏡に王妃は質問します。それに対し、鏡は「そうですねぇ……」と困った声を出しました。
「リスはやめておきましょうよ。ドラゴンとか、せめてワシとか……」
「えー! 可愛くないですわ!」
「必殺技に可愛さは求められてないんですよ。妥協してください、私の闇の同胞」
「闇の……同胞……? なんだか心躍るフレーズですわ! あなた、中々才能がありますのね!」
鏡と必殺技を考案し続けた王妃は白雪姫に対し、リベンジマッチを決行。激戦の末に相討ちとなったその戦いは、王国史に残る出来事となったそうです。