42 エピローグ
エリックは国王夫妻にだけはシャルロットの能力を打ち明けていた。
そうでもなければ、悪いうわさが飛び交う、社交界に出ない令嬢との婚姻が許されるはずもなかった。エリックの命のみならず、これまでもずっと王族の命を陰から見守り救ってくれていたことやルコンド領の事もすべて話した。
シャルロットには申し訳なかったが、王家にとっても得難い価値のある令嬢だと知らしめることが肝要だった。
エリックの思惑通り、稀有な力を持つシャルロットとの婚姻は認められ、社交なしで離宮に引きこもることも了承を得た。
臣籍降下に関してもシャルロットの能力とこれからも政務に携わり、裏からでも支えることが出来るとの説得で許しを得たのだ。
「あとは陛下と兄上で対処していただこう。それよりも・・・」
エリックが思った通りだった。婚姻を急いで正解だった。
シャルロットと結ばれた者が彼女の苦しみを拭ってやれるのではないか。そう思っていたエリックは、婚約期間にシャルロットが予知した時に自分が苦しみをとれないことを危惧していた。
その後、エリックと結ばれ苦痛をとることが出来たとしたら・・・その因果関係にシャルロットが気が付いてしまったら義弟とのことを疑うかもしれない。
そんな疑念を抱かさないために、周囲の反対や苦言をねじ伏せ、婚約期間を無くし、すぐに婚姻という荒業をやってのけた。両陛下の後押しがあったも大きかった。
シャルロットの婚姻で一番の気がかりが解決したことでエリックは、やっと本当に安心してシャルロットを幸せにできると思った。
シャルロットは自分を救う力を持つエリックのおかげで以前よりも表に出られるようになった。
二人はどこに行くのも一緒で、その仲睦まじい様子は皆のあこがれにもなり、ひそかにおしどり夫婦として噂されていた。
エリックを支え、政務を間近で見聞きするようになると、エリックとともにシャルロットは進んで騎士や兵士たちにあうようにした。命を懸けてこの国や民を守るために任務に励む彼らに自分が出来る事、自分にしかできない事をしたかった。
もっとも痛みは感じなくても恐ろしい記憶は心に負担をかける。しかしそれをエリックが溺愛と激しい愛情表現で癒してくれる。常に妻の腰を抱き寄せるエリックの溺愛ぶりは評判になった。
そして上意下達で時々奇妙な指示が出るようになった。中には理解できないような指示もあったが、それ以降任務中の死亡事故、事件はほとんどなくなった。
シャルロットが皆の前に姿を現してからだと気が付いた騎士や兵士の間で、シャルロットは守護女神と目されるようになり、彼女が刺繍したハンカチはお守りとして重宝されることになったという。
エリック、シャルロットの支えでヘンリーの治世は外交、国政ともに優れた結果を残すことになった。
名君ヘンリー王の名とともに、それを支えたエリック、シャルロットの名はその功績とともに比翼連理として未来にわたり語り継がれることになる。
終
捨てきれなかったもう一つの結末!
拙著を最後までお読みいただきありがとうございました。
前作の結末とどちらが良かったでしょうか(*´▽`*)




