31 返事
ある日、シリルから時間を取って欲しいと言われた。
その時が来てしまったと、シャルロットは緊張して自室で待っていた。
「姉上。」
シリルが姿勢を正した。
「貴女の側にいて、ずっと守りたい。僕と結婚してください。」
もう一度正式に結婚を申し込んでくれた。
厄介な自分を妻に望んでくれたことがうれしかった。
それでも
「シリル、気持ちはとても嬉しい。本当にあなたには何度も助けてもらって、感謝しようがない位あなたの事大切に思っている。でも・・・」
「・・・でも?」
「ごめんなさい。私はあなたの事を家族として大好きなの・・・ごめんなさい。」
「・・・そう。うん、そんな気がしてたんだ・・・けど、僕の気持ちを伝えることが出来てよかった。もし・・・もし、また色々辛いことがあったらこれまで通り僕に頼って欲しい。僕は姉上を助けたい気持ちはこの先ずっと変わらない。」
「ありがとう。ごめんね、自分勝手でごめんね。」
申し訳なさで涙ぐむシャルロットを見て、謝るのは自分の方だとひどく胸が痛む。
シリルが落ち込んでジェラルドに報告したとき、ジェラルドは苦虫をかみつぶしたような顔をして頷いた。
シャルロットの気持ちが伴っているものならシリルとシャルロットの縁談は言うことがないものだった。シリルがしでかしたことの責任を取ることになり、シャルロットの身も彼唯一のものとなり心身ともに傷つけずに済む。そしてシリルの婚約者という立場がシャルロットの身を守る一助になってくれればいいと色々なことを勘案すると、最良だと思っていた。
しかし、シャルロットはそれを望まなかった。
「そうか、お前も辛いだろうが・・・」
「僕は・・・自業自得です。変わらず、姉上をお助けしたいと思います。それに・・・姉上が誰とも結婚しないならここで一緒に暮らせるし、気が変わるかもしれないし。」
潔くあきらめたかと思ったが、なかなかの執着ぶりにジェラルドはため息をついた。




