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《パラレルワールド》死を見る令嬢は義弟に困惑しています  作者: れもんぴーる


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29 シリルの告白

 エリックからお茶会に誘われているシャルロットの事がシリルは心配でたまらなかった。初めこそ、一緒に招かれてエスコートしたが、次からは人払いをするからシャルロットの付き添いはいらないと通達された。

「・・・姉上は、殿下の事・・・好きなんですか?」

「・・・尊敬しているわ。殿下がいればこの国は大丈夫だと思う。」

「もし姉上にこんな力がなかったら・・・殿下に嫁ぎたかったですか?」

 シャルロットが望んだとしても乙女ではない彼女が王家に嫁ぐことはできない。そうしたのは自分だ。シリルは独占欲からくる嫉妬と、罪悪感でいっぱいだった。


「・・・それはないわ。だって、私には無理だもの。優秀な殿下の横に立つ資格なんてないわ。そもそも結婚など考えたこともないの。」

 悲しそうにいうシャルロットにシリルは胸が痛んだ。

 シャルロットがエリックに、臣下として以上の気持ちを抱いていることをシリルは気が付いてしまった。

「・・・でもいつかは誰かと結婚するでしょう?」

「結婚はするつもりはないわ。お父様はずっとここにいていいと言ってくださってるけどそうはいかないし。貴方が結婚する前にはここを出るつもりだから心配しないで。」

「そんな心配いりません。姉上はずっとここで暮らせばいい!」

「こんな人嫌いで怪しい姉がいたら奥さまがかわいそうだわ。私は大丈夫よ、先の事は色々考えているから。」

「色々って・・・何を考えているんですか?」

「ニコラ様にも相談して、ルコント領で一人暮らしできるようにね。住む家と人に合わずに済むように刺繡や代筆の仕事を世話してもらうつもりなの。」

「どうしてそんな大事な事を勝手に決めるのですか!」

「まだ思いついただけなの。ちょっとお話しただけよ」

「決まってしまってからでは遅いじゃないですか。姉上は・・・僕がそばにいなくても大丈夫なんですか?」

「シリルのおかげで私は生きる希望が持てた。でも、私の為にシリルが制約されることがあってはならないわ。私はあなたがくれた希望があるから、一人で生きていける気がするの。あなたのおかげなのよ。」

「じゃあ、その希望を現実の物にするためにずっと一緒に暮らしましょう。」

「気持ちは嬉しいけど、私のためにあなたが面倒を引き受ける必要ないのよ。私は大丈夫だから。」

「僕しか姉上を助けられないと知って嬉しかった。面倒だなんて思いもしません。」

「ありがとう、でもあなたの幸せも大切にしてほしいわ。」

「姉上といるのが僕の幸せです。」

「フフフ、まるでプロポーズみたいなことを言ってくれるのね。そういうのは大切なご令嬢に言ってあげなくちゃ。」

「だから・・・姉上に言いました。」

「え?」

 顔を赤くして視線を少し逸らすシリルを見て、シャルロットも動揺した。


「・・・ずっと好きだったのです。愚か者の僕ですけど・・・僕の事考えてもらえませんか?」

 エリックに特別な思いを抱き始めただろうシャルロットを悩ませることになるかもしれない。それでもシャルロットがエリックと結ばれることはない。それならば・・・自分が誠心誠意尽くしてシャルロットの気持ちを振り向かせることが出来たのなら、彼女を幸せにすることが出来るのではないだろうか。それが自分にできる贖罪だ。いや、償いなどではない、願いだった。


 シャルロットはそんな告白を受けてから、どうも必要以上に意識をしてしまう。気が付けばあの日、シリルに言われたことを頭の中で反芻している自分がいる。思い出しては顔が赤くなり、ドキドキしてしまう。

 苦しみから救ってくれるシリルが伴侶になると言ってくれる。こんな心強く嬉しいことはない・・・しかし、それはただ自分が楽になるため相手を利用してすることになるのではないか。

そして、シリルもシャルロットの苦しみを知り、哀れに思い、それを助ける事ができるのが自分だけだと知り、同情と正義感から側にいてくれようとしているのではないか。それが愛情と勘違いをしているかもしれない。

 それでも、シリルが側にいてくれる安心感、シャルロットは本当に救われた。永遠にも思われた苦しみと恐怖から救ってくれたシリルは大切な存在で、好意を持っているのは確かだが、シリルと同じ感情かというと分からなくなる。


 そしてシリルの事を考えていると、そのシリルの面影を押しのけるようにエリックとのお茶会の光景が浮かんでくる。エリックに手を取られその甲に唇を寄せられた夢のような出来事。

 それが思い浮かんだ瞬間の胸の中に湧き上がる羞恥と歓喜、そしてその直後に訪れる落胆。不思議な力を持ち、まともに社交が出来ない自分にはエリックと歩んでいく未来はない。


 シリルからの告白と、胸の中のエリックへの思い。シャルロットはどうしていいかわからなかった。


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