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黄色の幸せ

掲載日:2021/10/31

 青い空を見上げると、それは白くてまぶしくて、私は目をそらした。

 焼けるまぶたの裏側で、だけど私は薄目をけて、それを求める。

 灰色の電柱が並んでいる。

 歩道の上に。

 車道の上に。

 電柱と電柱のあいだには、黒いケーブルが渡されている。

 何本も。

 何本も。

 遠くまで。

 私は歩道に立っていて、警備の人も、近くに立っている。

 身に着けられた黄色い反射材に、私の視線が吸い寄せられる。

 黄色い、幸せのしるしへと。

 その向こうに、目をやれば。

 白くて大きな高所作業車、天高く伸ばされた白い腕、そのてのひら、仕事をする人たち。


 いつもは、いつもなら、こんなに見上げて、こんなにまじまじと、電気工事の人たちを、いいや、電話工事だろうか、ケーブルテレビだろうか、銅線だろうか、光ファイバーだろうか、見詰めたりなんか。


 一人は太ってぽっちゃりで、一人は痩せてひょろ長で、二人ともヘルメットをかぶっている。

 楽しそうに作業しているけれど、私には楽しくない未来が見えた。


 突き上げるような揺れが、突然、私たちを襲った。

 私は、立ったままバランスを取ろうとして、だけどもちろん失敗して、薄汚れたアスファルトの上にへたり込む。

 揺れは続いた。

 高所作業車の白い腕が、まるで本当の腕のように、大きく、とても大きく、ぶんぶんと、振られて。

 作業員の二人は、その手の先に、必死にしがみ付いていたけれど、とうとう、太っちょの方が、野球の白いボールのように、ぶん、と、青い空に、投げ出されて。


 くるくると、回って。


 白くて大きな卵になって。


 その殻が、割れて。


 中から飛び出て、現れたのは、黄色いひよこ。

 大きなひよこ。

 幸せの子供。


 飛べない翼で羽ばたけば、大気が揺れて、の葉が舞う。

 見上げる私の、目の前で。


 飛んで。

 ねえ、飛んで。

 飛べよ、ひよこ。

 飛べよ。


 飛べ!


 だけどひよこは飛べずに落ちて、地面に落ちて、大きな黄身と、白身になって。


 アスファルトの上に、広がる。


 大きな、大きな、目玉焼き。


 黄色い瞳。


 私を見詰める。

 幸せの瞳。

 見上げる私。

 青い空を、遮って、見詰め合う、幸せを。言葉にして。声を。


 私の、声を。


 こんにちは、ひよこ。

 こんにちは。


 こんにちは、私。

 こんにちは。


 こんにちは。


 こんにちは!

いつも思っていることが半分くらい、残り半分は口から出任せの作り話です。


面白かったという方はお星様を、面白くなかったという方は感想でご指摘頂けますと、作者が助かります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのかと思いきや、中々大変な状況ですね。ひよこ……もとい高所作業車に乗っていた男性、無事だといいなと思いました。
[良い点] 読んでいてハラハラしました(ToT) 確かに高所作業車が腕伸ばしてるところにアレが来たら……ぶんぶんなりそうに想像しちゃいますよね。 そこからの展開が可愛かったり、グロいかと思ったらや…
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