第4話
改めて6つに分断、輪切りになった猪たちを<鑑定>してみる。
『ビッグ・ボア』ランクD 状態:死
と出ていた。
「魔物のランクと状態もわかるのか・・・。便利だな、鑑定」
さらに頭の中に浮かんだ鑑定データにはその下に「詳細」というボタンのようなものが浮かんで見えた。
凍夜はその「詳細」をイメージで押してみる。
【ビッグ・ボア】
大陸全土に生息する通常の猪種よりも大きな個体。
ランクは高くないが、突進力は侮れない。
肉は固めだが食用可。
「なるほど、詳しい説明もでるのだな」
凍夜は感心した。これで倒した魔物の情報が得られるようになるので、今後魔獣狩りで魔物の素材を売ることになっても情報が分かれば便利だろう。
「それにしても・・・、なんとかこの魔物を持っていけないものか」
今の凍夜には何かを入れて運ぶバックもトランクもない。
身に着けているものは神話級の装備だが、着の身着のままと言えばその通りの状態であった。
その時、ふいに凍夜の頭の中にスキルが浮かび上がる
「スキル・・・『空間収納』?」
輪切りになったビッグ・ボアの死体に手をかざす。
「収納!」
シュイン。
「消えたよ・・・」
輪切りの死体が血の後だけを残して消えてしまった。
早速頭の中で『空間収納』スキルの解説を確認する。
エクストラスキル『空間収納』
・異空間に物を収納できるスキル。出し入れは自由。
・ただし生きている生命体は収納不可。
・魔力により、収納できる量が変化する。
・魔力により、収納中の物質に流れる時間が変化する
「なるほど・・・きっと魔力が高ければ多くの物質を収納できたり、収納したものの劣化を防げたりするわけか・・・ん?」
凍夜は説明書きの下に注釈を見つけた。
※ただし、このスキルは『創造神の加護』の効果により、実質は『無限収納』へと進化済。魔力を一切使わず無限にどれだけの大きさの物も収納できる。また異空間は時間停止の影響下にあるため、収納中の物質は一切劣化せず、その状態を保つ。
「Oh・・・」
凍夜は創造神様のパワーに思わず驚いてしまった。
「時間停止で劣化しないのはありがたいが・・・。無限収納・・・なんだかバレると厄介なことになりそうだな」
だが、幸いにも鑑定されてもスキル表示は『空間収納』である。
大した量はしまえないと説明すればいいと凍夜は考えていた。
「それにしても・・・輪切りで収納した猪たち、血抜きとか解体とかどうしたものか・・・」
再び凍夜は足を止め考えに耽る。
きっと牙とか冒険者ギルドで討伐証明とやらがいるだろうし、肉にしても少しでもおいしく食べるなら血抜き作業とかは必須だろう。
「収納中の素材を自動で解体してくれるとありがたいが・・・さすがにそんなラノベや漫画のような便利なスキルは・・・」
ピコンッ!
頭の中にメッセージが流れたような気がした。
【スキル『空間収納』のオプション能力として『自動解体モード』を追加しますか? Y/N】
「Oh・・・」
もう何度目かのOhだろうか。凍夜はまだまだ能力の理解は進んでいないのだなと改めて知ることになった。
それはそれとして、面倒な解体をスキルが肩代わりしてくれるというのならこんな便利なことはない。
凍夜は頭の中で『Y』をぽちっと押した。
【スキル『空間収納』に『自動解体モード』が追加されました】
「よしっ! 早速自動解体だ!」
凍夜は頭の中でスキルを発動させた。
【獲物の状態が一定の損壊値を上回っているため、自動解体できませんでした】
「Oh・・・」
なるほど、スキル『自動解体』できれいにバラしてもらうためには、損壊値とやらをある一定以上にしておかなければならない、と凍夜は理解した。
つまり現状の6分割に輪切りされてしまった猪は自力で解体するかこのまま誰かに引き渡すかの二択となった。
ちなみに凍夜は自分の手で輪切りの猪を何とかしようとする気持ちはとうに捨てていた。
「まあいい、とにかく山の頂上から見えた村に急ぐとするか。村の人なら猪の輪切りを喜んで引き取ってくれるかもしれんしな」
なにせ現在の凍夜は天下無欠の無一文である。
たとえ村に行っても食堂で飯も注文できず、宿に泊まることもできないのだ。
「そうすると、猪の輪切りだけでは心もとないか・・・?」
早く村に到着しようと走り出した凍夜だったが、猪以外にも物々交換ができるような獲物があればさらに狩っておいた方がいいと考えを改める。
「よし、手ごろな魔物がいないかあたりを探しながら行くか」
凍夜は木々を飛ぶように移動する高速移動を辞め、森の中を探索しながら麓の村を目指す事にして歩き出した。