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第2話


「まあまあ、ミーナは昔からこんな感じだから。それより、貴方のことを説明しておくわね」


「ああ、お願いする」


「貴方がこれから異世界転移するのは、私たちの統べる世界『フェイルセリア』よ」


「フェイルセリア・・・」


「そう、そこは魔法が発達した世界。残念だけど、貴方が生きていた地球よりも文化レベルはずっと低いの。争いも多く、法も秩序もまだまだ安定できていないわ。それに凶暴な魔獣という生き物もいるわ」


「そんな恐ろしい世界へ俺は送り込まれてしまうのか?」


「でも、いいところもたくさんあるわ。きっと貴方も気に入ると思うわ」


笑顔を向けてくる愛と美の女神アフロディア。


「よう、異世界転移の準備は進んでるか?」


「おう、戦神(せんじん)の。お主も来たのか」


「そりゃ、あの人間神エヒトヒューマのクソ野郎が亜人亜人ってバカにしていたミーナの嬢ちゃんがついに獣人の女神に昇格したんだぜ? ちょいと力を貸してやろうとか思うじゃねーの」


「ホッホ。戦神(せんじん)の、お主もか」


「なんだ、じさまもかよ」


「ホレ、ワシはすでに強靭な肉体と、強力な鍛冶スキル、酒と鍛冶の加護も与えておるぞ?」


「相変わらず仕事がはえーな」


「あらあら、楽しそうね?」


イカツイ槍を持つ鍛え上げられた戦士のような男の次に、ローブに身を包み宝石のついた杖を持った美女がやって来る。


「おう、魔法神(まほうしん)の。お主も来たか」


「エヒトヒューマの誘いがうるさくって・・・。何がボクと一緒に最強の魔力を持つ人間を作ろうよ・・・よ。まるで異世界転生や転移する人間たちをおもちゃのように扱ってるのよ、あの男。本当に気持ち悪い!」


(なんだか人間の神エヒトヒューマって・・・めっちゃ嫌われ者だなぁ)


一応人間の凍夜は何となく切なくなった。


「そうねぇ、せっかくのミーナの使徒なんだし・・・。私は最強の魔法力と各属性の親和スキルをあげるわ。どこぞの勇者みたいに最初から俺TUEEEEみたいじゃないけど、ちゃんと鍛えれば全属性が使えて魔力も膨大に高まるわ。ちゃんと鍛えればだけどね」


ドゴン!と持ったゴツい槍で床をついた戦神が声を上げる。


「ならば俺はお前に戦闘スキルをやろう。こちらも全属性に適性を持たせてやる。鍛えればどれだけでも強くなるぞ」


(・・・すごい槍だな・・・戦神の槍(グングニル)・・・か)


せっかくの説明も、威圧感のある槍に見とれて半分以上凍夜の耳に入っていなかった。


「私からは貴方に『運』をあげるわ」


「愛と美の女神なのに?」


運、という言葉に凍夜は首を傾げ、愛と美の女神アフロディアを見つめる。


「ふふっ・・・どうせ貴方は強制的な効力を持つ魅了(チャーム)の魔法や魅力(カリスマ)なんてスキル、欲しくないでしょ?」


「確かに、そうだな」


そのような能力をもらったからと相手の気持ちを魔法やスキルで操ってハーレムだヤリ放題だとバカをやれるほど凍夜の頭は悪くはなく、また倫理観もそこまで薄くはなかった。


「獣人の女神ミーニャからは最強の能力を与えるにゃ!」


「最強の能力?」


「そう、交尾術にゃ!」


「・・・・・・」


その場の全員の時が止まった。


「獣人は強いオスの種をもらいたいと本能で感じるにゃ! その時に交尾術で獣人の女の子をメロメロにするにゃ!」


「いや、俺は獣人じゃないし。メロメロとかにしないし」


「しないにゃ!?」


「しないよ?」


「す、するにゃ! そしていっぱい子供をつくるにゃ! そして獣人の女神ミーニャ教を作っていっぱいお供えするにゃ!」


「キサマ、それが狙いか」


凍夜は再びミーナのこめかみをグーで挟んでぐりぐりした。


「にゃにゃにゃ~~~~!」






両のこめかみからプスプスと煙を出して倒れる獣人の女神ミーナに愛と美の女神アフロディアが優しく声をかけた。


「じゃあ私の性の加護を与えて、私の性技スキルとミーナの交尾スキルを合体させて新たに最強にエッチなスキルを作ってトーヤに与えましょうよ」


「なんですとっ!?」


凍夜が驚いて声をあげるが、アフロディアとミーナはすでに笑顔で両手を重ねあっている。


「それはいい考えにゃ!」


「そしていっぱい子供を作ってもらって、愛と美と獣人を愛する教団を立ち上げてお布施をいっぱい・・・」


「アンタもか!?」


凍夜は思わず右手で顔を覆うと天を仰いだ。

獣人の女神ミーナはともかく、愛と美の女神アフロディアはまともに見えたのだが・・・と苦悩する。


「はっはっは、世知辛い世の中だが、自分の信者たちからの信仰やお布施は天界でも大きな影響があってな・・・」


「ワシや戦神のは、常に一定の信者がおるからまだいいのじゃがの」


「私の魔法神としての立場もあまり揺らがないけど、女神になったばかりの獣人のミーナと、最近世の中が疲弊して愛と美にかまっていられない人が多いアフロディアはキツイのよね・・・」


「うっさいわね!」


「そうにゃ! これからトーヤがいっぱい信徒を増やしてくれるにゃ! お布施いっぱいにゃ!」


他の神々のため息交じりの説明に駄女神ズが吠えた。


「いや、そんないっぱい子供作らないけど」


「「なんで(にゃ)!?」」


「いや、そんな前のめりにツッコまれても・・・」


見た目だけはすさまじく美人でかわいい駄女神ズが凍夜の顔すぐ前までその顔を近づけて哀願する。

凍夜は全力で引いていた。


「助けるにゃ~、トーヤはウチの使徒にゃ~」

「助けて~、女の子といっぱいえっちして世の中の女の子をみーんな美人に磨いちゃって~」


(いや、えらいこと言ってる駄女神たちだな・・・)


凍夜自身は前世ではいわゆるモテモテであった。

イケメン細身、知的なインテリクール眼鏡。

だが、凍夜自身女性と付き合うということにそれほど興味を持てなかった。

それだけに、女性に抱き着かれたり誘われたりしてもテンションが上がらず、恋人として付き合うこともなかった。もちろん現在まで童貞のままである。


「ともかく、加護とスキルを与えるにゃ!」

「よし、行くわよ!」


「ちょ・・・」


だが、二人は凍夜の言葉を待たず光り出す。その光はやがて凍夜を包むと、消えていった。


「おお、スキルの合体なぞ初めて見たな」

「戦神の、お主も初めてか」

「そんなことができたのね・・・」


戦神、鍛冶神、魔法神が驚いている。


(そんな神々も驚くスキルが・・・)


凍夜は心の中に刻まれたスキルが頭に浮かんだ。


『性奥義スキル』


(なんだかすっげーヤベェ・・・)


凍夜は戦慄した。

相手からこういったスキルを看破されてしまうような、鑑定のようなスキルがあったら、間違いなく自分は危険人物、もしくは変態扱いされてしまうだろう。


「これでトーヤも性技の味方なのにゃ!」


(意味が違う気がするが・・・)


凍夜は首をひねるが、いくら駄女神ズとはいえ、自分のために生き返らせてくれようとしている神様たちに文句も言いにくかった。


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」


その時、いきなり笑い声が後ろか聞こえたので凍夜は驚いて振り返った。

そこには見事に胸まで伸ばされた白いひげを撫でつけながら笑う老人が現れた。


「「「「「創造神様!!」」」」」


「創造神様にゃん!」


ここにいる神々が全員驚く中、獣人の女神ミーナだけが嬉しそうに創造神様の前に立った。


「ウチにも神の使徒が出来たにゃん!」


創造神様と呼ばれた白く長いひげの老人は嬉しそうに報告するミーナの頭を撫でた。


「ふぉっ、ふぉっ。よかったのぉ、これでミーナも一人前の神様じゃな」


「やったにゃん!」


嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねるミーナを優しく見つめる創造神様。

ほかの神々も笑顔でそれを見守った。


「そうじゃ。ミーナの使徒、トーヤといったの?」


「はい」


凍夜はこの駄女神ミーナの使徒などお断りだと考えていたのだが、圧倒的に格の違うこの創造神の前では口に出すことはできず、素直に返事をした。


「ふぉっ、ふぉっ。よい心がけじゃの。これから行く我らの世界での生活は苦労が多いことじゃろう。だが、ミーナの初めての使徒じゃからな。その困難にも負けぬよう、わしもしっかりと加護をやろう」


そう言って凍夜に手をかざす創造神。

すると、創造神の手から優しい光があふれだし、凍夜を包み込んだ。


「そ・・・創造神様のご加護・・・」

「ワシ、今まで聞いたことがないのう、戦神の?」

「オレもないわ」

「すごいのにゃん!」


ミーナは相変わらずだった。


(創造神の加護・・・一体どういうものなのだろうか・・・)


「まあ、おいおいわかるじゃろう」


凍夜の疑問を見透かすように笑う創造神。

さすがだと、凍夜はため息をついた。


「それで? 俺はアンタたちの世界で何をすればいいんだ? 魔王討伐でもするのか?」


「ん? 特に何かしなくちゃいけないことはないにゃん! 私たちの世界を思いっきり楽しむのにゃん!」


「世界を・・・楽しむ?」


「そうじゃ。わしらの世界がどういうものか、聡いお主なら旅をすれば自ずとわかること。お主は何物にも縛られず、好きに第二の人生を楽しむがええ」


創造神は穏やかな笑みを浮かべて凍夜を諭すように説明した。


「じゃあミーナにも縛られないということで」


「ダメにゃあ! トーヤはウチの使徒だから、ウチにぐるぐるまきにされているにゃん! 創造神様なんてことを言うのにゃん!」


「ふぉっ、ふぉっ、すまんの。トーヤ、獣人の女神ミーナのことを頼むぞ?」


「はい・・・なんだか普通は逆のような気もしますが」


トーヤのつぶやきにミーナ以外の神々は大いに笑うのだった。


「さあ、それではトーヤを我らの世界に送るとするかのう」


そう言うと想像神が手をかざす。

淡い光に進まれた凍夜はだんだん意識が遠くなっていくのを感じる。


「それではの」

「トーヤ、思いっきり世界を楽しむのにゃん!」


凍夜の体が完全に光に包まれると、次の瞬間、光とともにその姿はその場から消えていた。




自分で2話の会話や設定を見直していたら、元々この話はノクターンで18禁設定で進める予定だったのを思い出しました。私の筆力では18禁の描写が全くかけず、断念したんでした・・・。

そんなわけで駄女神ズの会話がロコツになっています。

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