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第1話


「・・・ここは?」


「お、気づいたにゃん! トーヤ、元気かにゃ?」


凍夜は上半身を起こし、頭を振る。

目を開けたそこには、大きな肉球の見えるグローブと、こちらも獣の足をかたどった柔らかそうな靴を履いた虎皮のビキニ姿の女の子だった。


「うーむ、いつの間にコスプレ会場に?」


「これはコスプレじゃないにゃん! トーヤは神様に対して失礼にゃん!」


腕を組んでぷりぷりと怒る虎皮ビキニ少女。

なかなかに豊満なバストのせいで、腕を組むと余計にバストが協調されている。


「ラ〇ちゃん?」


「違うにゃん! 誰が〇ムちゃんにゃん! ウチはミーニャにゃん!」


「みーにゃ?」


「そう! ミーニャ! 獣人の女神ミーニャにゃん!」


獣人の女神ミーニャと名乗った虎皮ビキニ少女は偉そうに腕組みするとその豊満な胸を強調しながら大きくそらし、ドヤ顔をキメる。


「獣人の女神?」


「そう! ミーニャは獣人の女神にゃん!」


凍夜の頭はショート寸前までこんがらがった。

周りを見ると、白くモヤのかかったような世界だった。

どうみてもここは現実世界ではないようだ。

そう、夢でも見ているかのような。


そして、早々に凍夜は状況把握をあきらめた。


「なんだ、夢か」


そうして再度横になろうとする凍夜の腕を慌てて取るミーニャ、


「夢じゃないにゃん! 現実にゃん!」


「どこが現実だよ? ていうか、ここはどこだよ?」


「ここは異世界のはざまにゃん。凍夜は大型トラックにはねられて死んでしまったにゃん」


「・・・!!」


凍夜の心臓がドクンとはねる。

確かに直前までの記憶はある。

道路に放り投げられた子猫を助けようと車道に飛び出して、道路にたたきつけられる前に救った。

だが、その瞬間眩しいヘッドライトに照らされたのである。


「・・・そうか、俺は死んだのか」


「・・・残念にゃん」


「そういえば、子猫は?」


「子猫は凍夜が救ってくれたから無事だったにゃん」


「そうか・・・それならば無駄ではなかったか」


凍夜は子猫が助かっただけでも自分の行動に意味があったかと、自分自身を納得させた。

元より家族を早くに失い、生きる意味に乏しかった凍夜には生への執着というものが薄かったこともあった。


(しかし・・・トラックの運転手には申し訳ないことになってしまったな。それにしても、トラックに引かれて、女神に会うとか・・・なんだったか。暇つぶしに読んでみた携帯小説のネタにたくさんあった気が・・・)


凍夜は暇つぶしに携帯で読んでいた無料小説にそんなストーリーがあったようなと記憶を探る。


「あの子猫はウチの眷属一号だったにゃん! その眷属一号を助けてくれたお礼に凍夜には特別に異世界転移してもらって、私たちの統べる世界で第二の人生を楽しんでもらうことにするにゃん!」


「異世界・・・転移?」


「そう、異世界転移にゃん!」


「死んだのに・・・異世界転生ではなく、異世界転移?」


「うにゅ~~~、ムツカシイことはよくわからないのにゃん!」


(あ・・・これダメなヤツだ。ダ女神様ね・・・)


凍夜は遠くをそっと見つめた。


「ミーナ~、お話はうまく伝わったかしら?」


ダ女神ミーニャとは違った色っぽいツヤのある声がしたので、凍夜は目線をそちらに向けた。


そこにはギリシャ神話の美の女神といわれても納得するような薄い衣をまとった美女が姿を現していた。


「あの・・・貴女は?」


「私は愛と美の女神アフロディアよ~。獣人の女神ミーナの先輩よ」


にっこりと微笑んで自己紹介してくれる愛と美の女神様。

なんでもこのダ女神の先輩らしい。


「おう、ミーナや。話はうまくまとまったかの?」


今度は背の小さいがっちりとしたひげもじゃの男がやってきた。


「そちらは?」


「ワシは鍛冶の神ドワルゴンじゃ。元はドワーフという種族での。そのおかげか鍛冶だけでなく酒の神としても名が通ってしまっておる」


(なんだが続々と神様が集まってきているような・・・)


凍夜はこの状況をとりあえずだれか説明してほしいと願った。






「で、ミーナはちゃんとトーヤ君に説明できたのかしら?」


「もっちろんにゃ! トーヤは快くOKしてくれたにゃん!」


「まったく、これっぽっちも、何一つ、わかりませんが」


肩を竦めて首を振る凍夜。

凍夜の反応にアフロディアがミーニャにジト目を向ける。


「にゃははははは・・・」


「にゃははじゃないでしょ! 笑ってごまかしてもダメ!」


「ごめんにゃさいにゃ・・・」


「なんじゃ、せっかくワシが強靭な体に作り直してやったのに、まだ説明も終わっておらんのか?」


鍛冶の神ドワルゴンが大きくため息をついた。


「俺の体を作り替えた・・・?」


「そうじゃ。お主の体は事故で破損しておったのでな。通常は魂だけの状態で異世界にわたり、そこで転生することにより新たな生を獲得するのじゃ。だが今回は獣人の女神ミーナが初めて神の使徒を異世界に送り込むことになるのでな。転生で赤ん坊から苦労するようなことはさせずに、特別に肉体を再生させて今の感覚のまま異世界で無事に生きていけるように強靭に仕上げたのじゃよ」


「仕上げたって・・・」


「その方がお主もすぐに異世界での生活を謳歌できるじゃろうて。お主、赤ん坊からやり直したいか?」


「それは確かにごめん被るな・・・」


凍夜は眉をひそめた。

なにせ、自我がこのままあるのに赤ん坊から人生やり直しとか、どう考えても精神が持たなさそうだ。毎日ゴロゴロ寝て、起きてはおっぱいを吸う。

・・・最高か?


一瞬凍夜はそれもありかと思ったが、かぶりを振って妄想を打ち消した。

どう考えても暇すぎる。自分の精神は持ちそうにない。そう凍夜は結論付けた。


「じゃろ? だから今回は特別サービスで肉体を復活させておるのじゃよ」


「なるほど、それは素直に感謝しておくべきか」


「そうじゃ、存分に感謝せい」


ホッホと鍛冶の神ドワルゴンが笑う。


「肉体の再生はわかったが・・・神の使徒というのはなんだ? それも獣人の女神ミーニャの?」


「ミーニャ? この子はミーナよ?」


「そうにゃ! ミーニャはミーニャにゃ!」


「・・・(こいつの発音が訛って・・・イヤ、にゃまっていただけかよ!)」


凍夜は立ち上がると獣人の女神ミーナの正面に立ち、両手でグーを作るとミーナのこめかみをグリグリした。


「にゃにゃにゃにゃにゃ!?」


「お前の発音が悪いから恥をかいたじゃないか。ミーナならちゃんとミーナと言え」


「イタイにゃ~、ヒドイにゃ~、ミーニャはミーニャにゃ~」


「だめだこりゃ」


凍夜は天を仰いだ。


自分にそのスキルが皆無なので、超絶イケメンすかしインテリ眼鏡の描写が激ムズ・・・。

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