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奥羽越建国戦記  作者: 穴沢賢次郎
第一章:出逢い
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二話:日新館猪苗代校にて

 会津といえば有名な藩校、今で言う国立学校の位置づけになる日新館(にっしんかん)がある


もともとは鶴ヶ城天守閣から見て西側の城下町に存在していたのだが、戊辰戦争の際に焼失した

猪苗代城の消失と同様に敵の手に渡らせないためである


現在復元された日新館は、会津坂下河東線の道中にある

観光名所となっており、会津を語るには外せない存在である


そんな日新館だが、実は猪苗代に日新館の()()()()があったのだ

おそらく今の猪苗代町民や会津好きでも、このことは知っている人は少ないだろう


十兵衛はこの猪苗代校に通ったのだった


10歳になると会津藩士の子弟は日新館に入学する


中国文学である四書五経、論語などを扱う素読


武士のたしなみである書を習う書学


弓術、剣術、馬術、槍術などの武術


これらが今でいう一般教養である


十兵衛の家は猪苗代城から見て東南、現在は猪苗代警察署があるあたりに住んでいた


猪苗代校はどこにあったかは不明だが、猪苗代城近くにあった可能性が高い

そのためこの物語の中では、猪苗代城から見て東の城下町にあるという事で通そうと思う


この時、天保8年から10年経ち、弘化4年4月(西暦1847年、太陽暦5月ごろ)

十兵衛は10歳になっていた


十兵衛は家から徒歩で15分かけて、猪苗代校へ行く

講義が始まるのは8時からだ


母と父に「行ってきます」と声をかけると真っ先に学校へ突っ走る

突っ走っていると後に並走してくるものが現れる


近所の須田三郎(すだ さぶろう)という者で同じ猪苗代校に通う友であり、そしてライバルでもある


「十兵衛、今日こそは負けねぇべ」


「おうとも、やってろぉ三郎」


どちらが先に猪苗代校の机に着けるか、毎朝競い合うのだ

それほど三郎とは仲が良かった


二人が猪苗代校の目前に迫ったとき、馬に乗った身分の高い武士と猪苗代校の講師、三瓶(さんぺい )

助左衛門(すけざえもん)にぶつかりそうになった


かろうじて二人は足を止め、衝突を避けられた

そして二人は必死になって頭を下げ謝った


「またにしら(お前たち)か!競争はいいが前には気ぃつけろ!」

三瓶は知らない生徒がいないくらい厳しい講師である

しかし、彼の厳しい言葉の中には優しさが詰まっている


すると馬上の武士が話し始めた

「藩校まで競争とはいやはや、良い鍛錬ではないか」


「お褒めの言葉ありがとうございます」

十兵衛がそう言い礼をすると、三郎も礼をした


三瓶は、申す言葉が違うのでは?というような顔をしていたが、子供の無邪気さ故と考え直し納得したような顔になった


「にしらの名前は何と言う?」


「は、穴沢十兵衛と申します」


「須田三郎と申します」


二人がそう言うと武士はこう言った

「十兵衛に三郎よ、文と武双方抜かりなく学べ。さすれば立派な会津武士になれるべさ」


この武士の名は、山川重英(やまかわしげひで)という

八代会津藩主、松平容敬(かたたか)の信頼により家老にまで昇格した優れた人物である


この出会いが十兵衛に大きな影響を与えることになったのだった

〈会津藩校日新館〉


会津藩の藩校。1798年(寛政10年)、会津藩家老・田中玄宰によって計画された。やがて1803年(享和3年)鶴ヶ城の西方向に校舎が完成した。

会津藩士は10歳になると日新館に入学し、論語や四書五経などの中国文学を学び、武術、天文学、水練なども学んだ。全国の藩の中でも優れた藩校だった。

1868年(慶応4年)におきた戊辰戦争では、西軍(新政府軍)が会津城下に迫った時、会津藩士自らの手で燃やされた。敵軍に使用されないためであった。

幕末や明治時代に活躍する会津出身の者たちもこの日新館から輩出されている。


日新館での教育が与えた影響はとても大きく、会津武士の根幹を成していた。

現代社会においても、教育というのはその人の人格、人柄、才能を導き出す重要な役割を担っている。


教育はこのように古来から大切にされてきた。






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