コント「結婚式」
青年と中年男性が向かい合っている。ボケは白のスーツで、ツッコミは黒のスーツ。
ボケ「お義父さん、緊張しますね」
ツッコミ「あぁ、娘の結婚式なんて、私は未だに実感がわかないよ」
ボケ「お義父さん、1つだけ言わせてください…僕に、娘さんをください!」
ツッコミ「…だよね?認めてないよね?驚いたよ、許可した覚えのない娘の結婚式に招待されて、君に会うのも今日が初めてだよ!初めまして!」
ボケ「落ち着いてください!…落ち着きましたね?娘さんをください」
ツッコミ「そんなにすんなり受け入れないよ!?」
ボケ「受け入れてください!お義父さんの許可が必要なんです」
ツッコミ「順番おかしいよ!許可もしてないのに結婚式段取って、親戚まで呼んでさ」
ボケ「そう言わずに。お義父さんが認めてくれれば、すぐにでも式を挙げられるんです!」
ツッコミ「もし認めなかったらどうなるんだ?」
ボケ「その時は、挙式のために僕が負担した費用の600万円が無駄になる、それだけです」
ツッコミ「大ごとじゃないか!君、大丈夫か?600万は、君にとって大した額じゃないのか?」
ボケ「いえ、僕の全財産の半分です」
ツッコミ「めちゃくちゃ大金じゃないか!」
ボケ「全財産の半分、いわば半財産です」
ツッコミ「そんな言葉は無いよ!何でそんなリスクを冒す?あれか、私が断りにくい空気を作って無理やり認めさせるつもりか?」
ボケ「いえ、そんな。外堀から埋めるつもりは…」
ツッコミ「つもりは無いか?その割にずいぶん埋めたな、外堀あふれかえってるよ!」
ボケ「…と、言いますと?」
ツッコミ「なんでピンとこないんだよ!?君が言い出したんだぞ」
ボケ「そんなことより娘さんをください」
ツッコミ「そんなことって。とにかく君に娘はやれないよ」
ボケ「なんでですか?僕に何が足りないんですか?」
ツッコミ「常識だよ!」
ボケ「どうか、お願いします!(土下座する)」
ツッコミ「ずいぶん必死だな。そんなに娘が欲しいか?まさか、600万を無駄にしたくないから必死なだけじゃないだろうな?」
ボケ「そんなことありません!お金なんかより、“むっすめさん”が大事です!」
ツッコミ「“ろっぴゃくまん”みたいに言うな!金に意識持ってかれてるじゃないか。そんなに金が大事なのに、何でこんなやり方するんだ?」
ボケ「こうすると、燃えるんです」
ツッコミ「はぁ?」
ボケ「お金をかけるとやるぞーって気になるんです。ほら、僕って尻に火が付いた方が調子出るタイプじゃないですか?」
ツッコミ「本当に燃やしてやろうか!?わけのわからん事言って。君、変なギャンブルでもやってるんじゃないか?」
ボケ「変なギャンブルなんかやりません。せいぜいダイナマイトボートレースくらいです」
ツッコミ「それって、渡辺直美とかがCMをやってた…」
ボケ「いえ、そっちじゃなくて、僕がやってるのは最下位のレーサーをダイナマイトで爆破するっていうヤツです」
ツッコミ「何だそのイカれたギャンブルは!?そんな奴が、人の娘の結婚を賭けにしてるのか?」
ボケ「賭けちゃった婚です」
ツッコミ「できちゃった婚みたいに言うな!」
ボケ「だって、金と人生賭けるのが一番燃えるじゃないですか?」
ツッコミ「私たちの人生を巻き込まないでくれ!」
ボケ「そう言わずにどうか!これが、僕にとって人生で2番目に大きな賭けなんです!」
ツッコミ「2番!?じゃあ1番のはどんだけ大きな賭けだったんだ?」
ボケ「知りたいですか?」
ツッコミ「知りたいね。君は、他人としてみれば非常に興味深い人物だからね」
ボケ「1番大きな賭けをした時は…娘さんへ告白した時です」
ツッコミ「…え?」
ボケ「あの時は、成功するかどうかハラハラしました。あの時、私の人生で1番大きな賭けをしました」
ツッコミ「…そうか。君は君なりに、娘を大事に思っていたんだな。金を賭けるよりも、娘への告白の方が大事とは」
ボケ「いや、そうじゃないです」
ツッコミ「えっ?」
ボケ「告白の前にレースに全財産ぶち込んで、成功したら告白しようって思ってて」
ツッコミ「結局金賭けたのか!?しかも全財産だと?」
ボケ「レースに勝ったんで、倍財産になりました」
ツッコミ「だからそんな言葉は無いよ!」
ボケ「それで、ついでに告白して」
ツッコミ「ついでとは何だ!?」
ボケ「告白はOKもらえたんで、あとはお義父さんの許可だけなんですよ~。というわけで、娘さんをください」
ツッコミ「帰れー!」