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第1話


 学校の校舎裏に呼び出される、そして目の前には恥ずかしがる女学生が……これはひょっとして!?


 「……鳴海君」


 とうとう俺にも!?


 「鳴海君、お願い!玲楓れいか様にこの手紙を渡して欲しいの!」


 ……うん、わかっていたよ……そんなもんだよね……


 「……うん、渡しておくけど……なんで自分で渡さないの?」


 そう俺が聞いたら「そんな!玲楓様に直接なんて……ファンクラブの皆さんに何て言われるか!」


 ……あいつ、ファンクラブなんてあるのか……


 「それじゃ、お願いね!」


 名も知らぬ女の子は嬉しそうに去っていった、残された俺の手には他人宛のラブレター。


 「……帰ってゲームやろう……」


 とぼとぼと自宅に帰る。「ただいま」と扉を開け、台所に入ると母親が「……おかえりなさい」と笑いかけてくる。


 「……はじめちゃん、玲ちゃんがお部屋で待ってるよ?」


 と母さんが言ってくる。年頃の男子の部屋に勝手に入ることが許されてる……それぐらい玲楓とは付き合いが長い……同い年の幼馴染みだ。


 「……玲ちゃんはいつ見てもイケメンさんね」


 母さんがそんなことを言う、姉さんも以前「玲楓はね……女の子が理想とする王子様の要素をすべて兼ね備えてるのよ!」って言っていた。


 「……それじゃ、部屋に行くから」


 と言って二階に上がり自分の部屋の扉を開ける。


 「……びっくりした、創ちゃん!扉を開けるときはノックしなくちゃ!」


 と、なんかごそごそやっていた玲楓が言う……俺の部屋なんだけどな。


 衛藤えとう 玲楓れいかという人物を客観的に見ると……短い髪に涼しげな目元、すらりとした体型に高い身長、そして物腰の柔らかいイケメン……な女の子だ。


 「……創ちゃん、ノックしなくちゃ駄目だからね!」


 と立ち上がった玲楓は俺を見下ろす……男子の平均身長くらいしかない俺はいつも見下ろされる。父さんは身長が高い……それは姉さんにはしっかり遺伝したようで玲楓ほどではないがそこそこ高身長なのに……俺は母さんに似たのか身長が伸びなかった。


 「……玲楓、ここは俺の部屋だぞ?それで勝手に何をごそごそしていた!?」


 「ふふ、創ちゃんがエッチな本とか隠してないかなって探してた」


 「……そんなの無いから」


 「つまらないなぁ」とか言う玲楓に預かったラブレターを渡す、手紙を読んだ玲楓は「……創ちゃんはラブレター貰ったことある?」なんて聞いてくる……わかってる癖に。


 「……そんなことより返事はどうするんだ?」と聞いたら


 「んー……多分、返事は求めてないよ。遠くから私を見て満足って感じみたい」


 「……そうか」としか言えない。玲楓がそっちの気がないことはわかってることだしな。


 とりあえず制服から着替えようと服を脱ぐと「創ちゃんのエッチ!」なんて笑いながら言うが……別に下着まで脱ぐ訳じゃないし見慣れてるだろうから気にせず部屋着に着替える。


 「……創ちゃんは本当に私のことを女の子扱いしてくれないよねー」なんて玲楓は言うが


 「……玲楓だって俺のことを男扱いしてないだろ?」


 階下に母親がいるとはいえ平気で俺の部屋に来るんだから……と言ったら「今さら……ねぇ?」と言うので俺も頷いた。


 子どもの頃から両親が共働きの玲楓は昔からうちの家によく遊びに来てご飯も一緒に食べたりした、うちの両親が玲楓が一人で自宅で両親の帰りを待ってるのは可哀想だからうちで預かりますよ?……と玲楓の両親と話して決めたのが今も続いてるのだ。


 「おば様の今日のご飯は何かなぁ……おば様は料理上手だから楽しみだなぁ」


 玲楓は俺のベッドに座ってそんなことを言っている。


 「……とりあえず料理ができるまでゲームやろうぜ?」


 「ふふ、いいよー。今日もこてんぱんにしてあげるよ♪」


 そう言って、父さん曰く


 『配管工の兄弟がお互いを谷底に突き落とすような兄弟喧嘩するし、助けるはずの姫にも突き落とされるゲーム』


 ……ス○ブラを二人並んで座り始める。


 「そういえば、創ちゃんは誘われた?同じクラスの五十嵐くん達がカラオケ大会やるから参加者募集って言っていたけど……」


 「……誘われてないぞ?」


 まぁ、クラスで陰キャの位置にいる俺は誘われないだろうな。誘われてないと言ったら


 「……私も行くの止めようかな……」なんて玲楓が言い出すから


 「俺のことなんて気にせず楽しんでくれば良いじゃないか」


 クラスでも陽キャで特に女性人気の高い玲楓が俺のせいで来なかったら何て言われるか……


 「……行ってきてもいいの?」


 こちらを見て聞いてくる玲楓に「構わないだろ」って言ったら少し不機嫌になって「……創ちゃんなんて知らない」って言う……どうしろと?誘われてない俺がのこのこ顔出す方がおかしいだろうに……


 そんな話をしてたら階下の母親から「創ちゃん、玲ちゃん、ご飯できたわよ」って声が聞こえるのでゲームを切り上げた。


 「……ほら、玲楓。行こう」


 「……うん」


 俺はこの時は何にも深く考えていなかった。その集まりがどんなものか知っていたら決して玲楓を行かせなかっただろうに……


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