表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場に愛された領主の息子  作者: かかと
13/286

新兵エトハムカ

 私の名前はエトハムカ。近所の子供たちを締めていたガキ大将。そのガキ大将がどうしてか兵士をやっている。親は喜んでいるし、面倒見のいい大人の女の人もいる。でも、私は若様に誘われて兵士になった。いや、ならされたと言っていい。

 彼は私たちのアジトを簡単に突き止めた。もともと子供たちの遊び場はセドウルには非常に少なかった。その上、領主が公認しているような盗賊組織があることで主要な隠れ家はすべて抑えられていた。結果、親にも認められないもしくは組織に売られた子供たちは行き場を失っていた。力のある者は組織の幹部へと昇格し、組織から衣食住が手配される。しかし、力のない者は衣食の手配はあるが住の手配はない。当然と言われれば当然のことである。どんな組織だって活躍するもしくは役に立つ人間はそれなりの報酬をもらうのだから。

多くの人間を匿う組織は組織の幹部の人間も外に出し普通の人間を装うように指導されている。いかに領主公認であるとはいえ、領主が失脚すればその地盤が崩れる。もし、すべての人間が組織に完全に組み入っていると全員がお尋ね者になってしまい、組織の体裁を保つことができない。だからこそ、表面上は普通の住民を装う必要がある。この体制は他の街で情報収集することでも役立っていた。セドウルでの状況が知られなかったのはこういったところもある。また、盗賊組織は外部の人間を特定する形を取っていたため無差別に襲うわけでもなかった。それも発見が遅れた原因である。

 子供のエトハムカでもその組織の概要は理解できていた。残念ながらセドウルでは賢くなければ生きていけない。いかに組織を怒らせず領主を怒らせずにいることが重要視されていた。エトハムカは子供たちをまとめ上げて組織に寄生する組織を作り上げようと決意したのは4歳の時。いつも泣いて帰ってくる2歳ぐらいの子供を見てこれではいけないと思ったのだ。しかし、たかだか4歳のやることは知れているため、積極的に不安もしくは悲しい顔をしている子供たちと友達になっていった。エトハムカは友達の友達を作ることによって仲間という意識を植え付ければうまくいくと考えた。

そして時間はかかったものの地下に部屋を作った。いわゆる秘密基地である。空気は悪い上、狭いけど仲間と一緒にいることで裏をかかれることもなくなり、安心して眠ることができるようになった。エトハムカは組織に売られているわけではないけど、子供たちの笑顔、特に年下の子供笑顔を見ると心が温まる。そんな感じでやってきたわけだけど、若様からは子供たちの行動範囲を丹念に調べ上げてこの部屋を発見した。

 若様は私たちの状況を詳しく聞いた上で放置することに決めたと言った。盗賊組織に加担しているわけではないため、エトハムカたちが罰せられることはない。反対に盗賊組織が壊滅した際にはここにいる子供たちを兵士にしたいと提案をしてきた。エトハムカは初めのうちは笑っていた。学もない子供たちが兵士に登用されることなど稀である。しかし、若様は真剣にエトハムカの顔を見て話をしていた。その目には一点の曇りもない。その言葉の節々には明らかに強い意志を感じていた。エトハムカの仲間として認定もしくは部屋に招いている子供たちは全部で5百人程度。その5百人を食べさせることができると考えれば若様の話に乗るのは当たり前の話だった。でも、領主が負ける可能性も否定できなかった。過去にそれなりの名の通った数多くの兵士が討ち取られている。中には有名な騎士もいたらしい。その彼らでも敵わず領主を従えるような盗賊に勝てるのかと思っていた。

 しかし、若様は非情にもすぐに回答を求めている。拒否する場合は私たちも根絶やしにするとのことだった。エトハムカもこの話にはすぐに返事ができない。昔は単純に友達ごっこに毛が生えた組織だったが、今ではそれなりの組織として大きくなっている。だからこそ、エトハムカの一存で全員の運命を決めるわけにはいかなかった。隣の幹部の男はエトハムカに決めろと言ってきた。彼はエトハムカが最も信頼を寄せる幹部である。どうもエトハムカにみんながついてくるようである。本当かよ。

エトハムカはその場で若様へついていくことにした。今までに発見されたことない部屋を見つかったこと、そして若様の非情なほどの決断力に惚れたのだ。また、領主の風聞も聞いていたため今度こそカール・ベッカーという男ならあの盗賊も負けるのではないかと思っていたのだ。

 その後、カール・ベッカーは勝利し、見事盗賊の頭を倒した。その上、前任の領主も摘発し、首をさらされたという話を聞いた。子供たちはようやく若様を信頼し、全員が兵士になる決意をしたのである。話をしたところ、結局、兵士として雇われたのは490人だった。エトハムカは激怒したが、若様はその10人を文官として雇いたいと言ってきた。若様それに領主は思ったよりもお金を持っているため、10人が飢えることはない。その上、住居を準備し、諜報活動を行う住民として生活するように命じた。ただの文官は多くいる。その他でも活かせる技術があったほうが良いと若様はその10人に話をしたらしい。

 その話を聞いたエトハムカは安心して兵士となった。周りの新兵には強い人がいない。もちろん、指導するヴァルター隊長にエトハムカは敵わない。それも当たり前でヴァルターのほうが体格も経験、力の強さも全て負けているため勝てるわけがなかった。しかし、ヴァルター隊長はエトハムカを気にかけているし、熱心に指導もしてくれており、以前に比べて格段に強くなっていると思う。若様はエトハムカが将軍になれる器であると言っている。半信半疑だが、信じてみよう。若様の言っていることはすべてその通りになっている。エトハムカはまた再度剣を振り始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ