第四十七話[事実は小説より奇なりって言葉があるけど結構当たってる]
さて、俺達が動物に変えられてから小一時間は経っただろうか。俺達は今、とある洞窟にいる。まぁ、洞窟といってもそこまで深くまで続いておらず、中には少し広めの空洞があるぐらいだ。
どうやって、元の姿に戻ろうか・・・。明の話じゃ呪術らしい。明はまだ呪術の解き方は習得してないって言ってたなぁ。どうしたものか。
俺がそこまで考えていた時、俺の横を一つの影が通り抜ける。俺は咄嗟に腕を伸ばし、手のひらをその影にぶつける。
「ウニャ!!」
悲鳴が上がる。
その影の正体は栗色の毛並みの猫・・・明だ。
「何するのよ!!」
「何って・・・そりゃあ、お前が殊日に飛びかかろうとしたからだろ?」
この数十分でだいぶ動物に近づいてきたらしい。ここ何回かこの会話がかわされている。
「え? ・・・あ、ゴメン」
「あ、うん・・・」
明は殊日に謝る。殊日はもう慣れたのか、一言で返す。
「なぁ、炎人・・・って、オイ」
俺が炎人がいる方向を見ると、炎人は夢中で穴を掘っていた。
「んぁ? 呼んだか?」
・・・あえて、何も突っ込むまい。
「そろそろヤバイと思うぜ。じっとしてるより、犯人探した方がいいんじゃ?」
「それもそうだな・・・」
「とりあえず、動いとくか」
俺は立ち上がるとみんなに声をかけた。
「みんな、このままじっとしてたら、動物に近づくだけだ。とりあえず、犯人を探しに行こう!」
みんなは頷くと立ち上がった。
犯人を探しに出たはいいが、やはり当てがあるはずも無く、しばらく山中をうろうろしていた。
「で・・・どうする?」
「とりあえずは、山頂に行ってみるか?」
「その方がいいと思うわ。一瞬だけ感じ取った犯人の霊気が山頂に充満してるもの」
「オレも調べてみたけど、本当に山頂で霊気ってのが充満してるみたいだ」
殊日が言うなら間違い無いはず。とりあえず、目指すは山頂か・・・。
~山頂~
山頂に辿り着いた・・・わけなんだが。
「誰もいねぇな・・・」
「そだなぁ・・・」
はぁ・・・と全員が溜め息を付くのが分かる。それもそうだ。誰もいないんだから。
俺はその場に座り込んだ。
「・・・行っちまったみてぇだなぁ」
「どうするんだ? もう手掛かりは無いぜ?」
「これじゃ、どこに行ったかも分からないわね・・・」
困ったなぁ・・・。
・・・こんな時に現れるのがアイツなんだよなぁ。
「フフ・・・呼んだか?」
不意に後ろの方から声がする。
「その声は・・・霧だよな」
俺が後ろを向くと、丁度霧が木陰から出てくるところだった。
みんな、霧はどうでもいいようで無視しているようだ。
「ご名答。・・・それにしても可愛らしい姿になったものだ」
霧はそう言いつつも俺に近づき、頭を撫でる。
「撫でるな、噛むぞ?」
「そう睨むな、元の姿に戻してやらんぞ?」
『え!?』
今の言葉に今の今まで無視をしていた派遣部部員が反応を示した。
「本当なのか?」
「あぁ。戻りたいか?」
「勿論!!」
「ならば、全員まとまれ」
俺達は言われた通りに全員で固まった。
「よし、それではいくぞ・・・」
霧はそう言うと、右腕を前に突き出し、何か呪文らしき物を唱え始めた。すると、俺達の足元に魔術陣が浮かびあがった。
魔術陣から発せられる光はドンドン眩しくなっていき、ついには目が見えないほどの輝きを放った。
俺は耐え切れずに目を閉じた。
光が収まってきたのがまぶた越しにも分かる。
俺は光が収まったのを確認して、目を開ける。・・・恐る恐る、腕を目の前にもってくる。
・・・!!!
「よっしゃぁ! 戻ってる!!」
俺は思わずガッツポーズをした。
服もちゃんと着てる。・・・・服は体毛かなんかに変わってたのだろうか?
辺りを見回すと、みんなもちゃんと戻っていた。
「やっと、元に戻れたわ・・・」
「あれはあれで面白かったんだけどなぁ」
「もう、炎人!」
「・・・もう動物になるのはこりごりだ」
「・・・・・」
「あはははは!」
「もう、戻れないかと思いました・・・」
「つーか、何者なんだよコイツ」
みんなそれぞれに言葉を漏らす。
「それでは、私は戻るとするよ。君達も早く学園に戻った方がいい。皆が心配しているぞ?」
霧がそう言い残すと、霧が立ち込め、霧は消えた。
「・・・それじゃ、戻るか」
「そだな。時間的には球技大会終わってる頃だろうし」
俺達はいろいろと話ながら、山を降りた。
それにしてもあっさり戻れたもんだなぁ。俺的には|悪霊《ナイトメア やらなんやら出てきて大騒ぎになると思ったんだが。・・・まぁ、何も無くて良かった良かった。
ちなみに、一年三組の球技大会は、俺達が抜けてから全ての球技が全敗だったのは言う間でもない。
次回、[体育祭と零牙]に続く。