第三十九話[戦力増強計画編 いきなり? 一人目の仲間発見!?その3]
はい、その3です。
やはり、バトルシーンが入るとどうしても長くなってしまいます・・・。もうちょっと短くならないものでしょうか・・・?
では、本編をどうぞ。零牙の新たな力が明らかに・・・!?
あの連絡があった後、俺達は念の為、戦闘服に急いで着替え、家を出た。勿論、炎人達にも戦闘服で来るように言っておいた。
今俺は、民家の屋根の上を飛んで、次の家の屋根へと飛び移りながら移動していた。ちなみに明は俺よりちょっと上空で魔術陣に乗って、飛んでいた。
「・・・お前、楽そうだな」
「そう?」
そりゃあ、まぁ・・・こっちは人力ですし・・・。
「別に飛び移ってて疲れるってことは無いけどな・・・。そっちの方がスピードあるんだから、まぁ、楽そうだな・・・と」
「・・・これでも、この魔術陣を作る為には結構魔術力使うのよ?」
「あ・・・そう」
俺は、その言葉を聞き、自分を無理矢理に納得させた。こんな時にこんな事を話していても意味がないからだ。今は、明の友人―――鈴空殊日を助ける事が先決だ。
それにしても・・・さっきから湿っぽい匂いがする。普通の人間には感じることが出来ないほど微かな匂いだが。俺が何故、この匂いを感じ取れるかというと、あの黒狼の力によるものである。俺が人間の状態でもこの嗅覚は少しだけ残る。・・・皮肉なことに俺はこの嗅覚に何度も助けられた。
さて、そんなことはどうでも良く、空は雲で埋め尽くされており、月灯りが僅かしか届かない程だ。目的地に着いたら、早いところ、誘拐犯と決着をつけたいものだ。ただの人間ならまだしも、悪霊が敵である。この天候だと―――更に戦闘が長引けば―――非常に困る。
「あ、零牙。そろそろよ」
「ん・・・あぁ」
「・・・どうしたの?」
「いや、ちょっと考え事をしていただけだ」
俺は思考を止め、目の前に見える目的地を見る。
距離はざっと数十m。あと数分すれば着くだろう。
「よぉ、零牙!」
後ろから俺を呼ぶ声がした。
「ん?」
後ろを振り向くと、炎人と未来、そして狼牙と由美の姿が見えた。勿論、みんなは戦闘服だ。・・・アレ?
「・・・どうした、零牙。そんな不思議そうな顔をして」
「いや、狼牙達と由美って家は逆方向だったよな?」
「あぁ・・・」
俺がどうして一緒に来てるんだ? と聞く前に狼牙が答えた。
「アパートを出たら、玄関先に由美がいてな。ここまで一緒に来た」
狼牙がそう淡々と答えている隣で、由美はうつむいているが、頬がほんのり紅くなっているのがわかった。
明はそれを見て、うんうん、と満足そうな笑顔で頷いている。
「はは〜ん・・・」
恋愛に疎い俺でも分かった。おそらく、由美は狼牙に・・・。それに明が頷いているということは、明は由美から相談かなんかを受けたということだろう。あとで明に詳しい話でも聞くか。
「おぉ〜い! 零牙ぁ〜!」
そんなのん気なことを考えていたら、左斜め後ろ辺りから少し声変わりしきってない、幼い声が聞こえた。
「千! それに千里か!」
二人も追いついたみたいだ。さて・・・これで役者は揃ったってとこか。後は・・・・・!
〜某マンション 殊日視点〜
今、私はとても広い空間の中心で何か、鉄筋なようなものに貼り付けにされている。
意識は今にも途切れそうで、ここがどこだかも分からない。
近くには、私をここに連れて来たと思う、奇妙な奴がいる。人間のような体にコウモリのような羽、全体的に黒い鎧のようなものを着て、悪魔や死神を連想させる、大きな鎌を担いでいる。顔は青くてどこか獣じみているけど、人間っぽさもある。
「ん・・・気付いたか、人間」
「放せぇ・・・」
「ヒヒ・・・誰が放すかよ。絶命したあとの人間の魂は格別に美味いんだ」
背筋にゾクッ、と悪寒が走った。そして、自分の不幸体質を呪う。
怖い・・・助けて・・・。
「助けてっ・・・・!」
「ひひゃははははははは! 叫んだって届きゃあ、しねぇ! こんなところに誰も助けに・・・」
「来るんだなぁ、これが!!」
広い空間に声がこだました。
声がしたところを見ると、少し上にある、壁の窪みに甲斬・・・甲斬零牙が腕組みをして悪魔のような奴を見下ろしていた。その隣には明もいる。
いつも、冴えない奴だと思ってたけど、その時だけ、本当にその時だけ、何故かカッコよく見えた。
〜零牙視点〜
「来るんだなぁ、これが!!」
俺は叫んだ。思いっきり。
「私の友達をさらうなんて・・・許せない!」
隣で明も怒りを込めた叫びを上げる。
「へっ。敵さんよぉ、運が悪かったな!」
俺達より下で―――恐らく、あの辺りが入り口だと思われる―――肩に【龍炎刀】を乗せて、炎人も叫ぶ。隣には炎人の腕に抱きついている、未来もいる。
「外道が・・・!」
そして、俺達の真正面―――といってもかなり遠いが―――で狼牙も呟く。となりには由美もいる。
「へへ・・・僕達に」
「勝てるとは思わない事です!」
銃雷姉弟も俺達より、ちょっと低めのところにある窪みで叫ぶ。
この、大きな空間は、マンションの左側にある、五階全ての部屋を無くし、広い講堂のようになっている。一階だったと思われる場所には残骸が転がっている。中央には鈴空が貼り付けられている、鉄筋がある。・・・この場所には血の匂いがにじんでいる。ここでも何人もの人が殺されたのだろう。
俺達はまず、このマンションに入ってから、それぞれに分かれ、敵の注意を引く為に叫んだ。
「ヒヒッ・・・お前達もまとめて、血祭りに上げてくれる!!」
「それは無理だな!」
俺は窪みから、一気に飛び降り、腰の剣を一気に引き抜き、敵に斬りかかった。
ガキィン!
敵は大きな鎌で俺の斬撃を受け止めた。
明は今の内に魔法陣で窪みからゆっくり降りて、鈴空の場所へ駆け寄る。
「俺のことも忘れないでもらおうか・・・!」
狼牙も一気に詰め寄り、斬りかかろうとするが、敵は俺を弾き飛ばし、横飛びに避けながら、右手を狼牙に向ける。
「こいつを食らいなぁ!」
敵の手のひらからビームらしきものが放たれる。
「ちぃ!」
狼牙は持っていた剣でビームを受け、弾く。
「炎招!」
炎人が魔術を詠唱し、炎が飛ぶ。
横飛びに避けていた敵に炎が襲い掛かり、敵は避けきれずに炎に飲み込まれる。
だが、何事も無かったように敵は、立っていた。
「・・・ありゃ?」
「バカ! 上位なんだから、そんな初級魔術が効くはずねぇだろ!」
敵は俺らの話に呆気を取られていたが、上空の異変に気付き、バックステップで避けた。
敵がいたところに、斧を振り下ろした由美が着地した。
「・・・外した」
由美は残念そうに呟いた。
〜明視点〜
零牙達が戦闘をしている中、私達は中央に貼り付けにされている殊日の縄を解いていた。
「大丈夫?」
「あか・・・り?」
私達の近くでは、千君と千里が銃器を構え、未来が矢に手をかけたまま敵を見ている。
「明・・・何が起こってるの?」
「後で話すから・・・」
私は殊日を少しみてから、零牙達に視線を移す。
他のみんなは戦闘中の僅かな隙に開放を行ってるけど、零牙だけは普通の状態で戦っている。
「零牙っ!」
私は零牙を呼んだ。零牙はこちらをチラッとみた後、戦闘から離れ、私の元に寄る。
「何のようだ?」
「今のうちに開放しておくから」
「分かった。早くしてくれよ」
〜零牙視点〜
俺は、開放を済ますと、すぐに戦闘に戻った。
後ろからは千や千里、未来が矢や銃弾による援護射撃をし、明の魔術でのサポートをしている為、戦闘に集中することが出来る。
敵には徐々にだが、ダメージは与えている。この調子だともうそろそろ決着が付くだろう。
「ヒヒッ・・・よくも俺様をここまで追い詰めてくれたな・・・血祭りに上げるどころか、跡形もなく切り刻んでやるっ!」
敵が叫んだと同時に敵の霊気が一気に膨れ上がる。
「死神サマのお通りだぁ!!」
敵はどっかで聞いたことがあるような台詞を言いながら、真っ先に俺を目指し、鎌を振り上げながら襲い掛かる。
俺は剣を鞘に収め、右手に魔術力を溜め、俺の頭程ある、プラズマ球を作った。そう、魂弾だ。
敵が俺の目の前まで来たところで、
「うるせぇ! 黙れッ!」
叫ぶのと同時に右手を敵の腹あて、一気に振り上げる。
「ぐぉっ!?」
俺は敵が上がったところまで飛び、次は右足に魔術力を溜め魂弾を作る。
「砕け散れ! 【稲妻流星落し】ッ!」
俺は魂弾と共に、敵を地面に落とす。
大きく、煙が立った。
着地した俺に狼牙が駆け寄る。
「やったのか・・・?」
「手応え・・・いや、足応えはあった」
俺の嗅覚でも、煙のせいで役に立たない。
何の反応も無いので、警戒を解きかけた、その時。
「甲斬! 来るぞっ!」
鈴空の声が飛ぶ。それと同時に。
「ヒャッハァァァァァァ!」
ボロボロの敵が俺と狼牙に斬りかかろうと、鎌を振り上げる。
「零牙!」
「おうっ!」
俺達は左右に避け、敵の大きく振りかぶった鎌は空振りし、そのまま突っ切った。
敵はその勢いを利用し、この空間から逃げ出した。
「逃げた!?」
俺は逃げた敵を嗅覚で追いながら、明を呼ぶ。
「明! 追うぞ!」
「え? あ、うん!」
明は、千達に後は任せると言って、俺の元まで来た。
「二人でいいのか?」
「あれだけ弱ってるもの。二人で十分よ!」
俺は何か違和感を覚えながら、この空間を後にした。
〜明視点〜
私達はアイツを追って、屋上まで来た。いつの間にか雨が降っていた。そして雷の音もする。
屋上に出た瞬間、零牙は一瞬だけ何か考えるような表情をしたが、すぐに目線を敵に向けた。
「ヒヒャハハハハハハ! たった二人かぁ!」
「そうだ! 二人だ! 二人で十分だ!」
「ヒヒッ! たった二人で勝てるというのかぁ!?」
「あぁ、今、お前は弱ってるからな」
零牙は「それに・・・」と付け加えた。
「この天候だしな。俺が有利だ」
零牙はニィッと笑いながら言った。
そんなの初耳だ。
「ど、どういう事!? この天候で勝てるって!!」
「あぁ・・・まぁ、見てろ」
零牙は二、三歩前に出た。私もついて行こうとしたけど、零牙が目線をこっちに向けて、「こっちに来るな」と呟いた。
「ヒヒッ・・・どういうことだぁ?」
「・・・・・・」
零牙は黙っている。・・・すると。
ドゴォォォォォォン・・・
零牙が立っている場所に雷が落ちた。
私は一瞬、雷にひるんだけど、零牙に雷が落ちたと分かって、いてもたってもいられなかった。
「零牙ぁ!」
思わず叫んだ。敵は下品な高笑いをする。
「ヒャハハハハハハハハ!」
「うるさいぞ。外道」
どこか、低い―――けど、どこかで聞いたことがあるような―――声が響いた。
敵は高笑いを止め、零牙が立っていた場所に目を向けた。
―――そこには、いつもとは違う零牙がいた。目は据わっていて、体にはいつもの開放状態とは桁違いの量の銀の雷を纏っていた。
「さて・・・お前の最後だ」
〜零牙視点〜
「さて・・・お前の最後だ」
俺は敵に向かって言い放った。
・・・この状態だと、気分が落ち着く。良い気分だ。
「零牙・・・それ・・・」
後ろから明の声がする。
「あぁ・・・」
そうとだけ答えると、敵に向かい、こう言った。
「お前にも、この状態のことを話しておいてやろう。・・・どうせ消えるんだからな」
敵は俺に斬りかかろうとする素振りを見せる。
「無駄だ。まぁ、話し終えるまでじっとしているんだな」
俺は敵の眼を見、睨む。それと同時に金縛りもかける。
「ぐっ・・・」
「さて・・・では話そうか。この状態のことを。・・・この状態は自然の雷を体内に取り込むことでなれる。普段とは桁違いの力を手に入れる。・・・だが、この力を使うにはまだ修行が足りないみたいでな、力の調節が難しい。まぁ、それと同時に手加減は出来ん、ということになるがな。ある意味、黒狼の状態よりも厄介な力ということだ。黒狼の状態が暴走状態なら、この状態は覚醒状態とでも呼ぶべきだろうな」
俺は一気に話し終えると、敵に向き直る。
俺は鞘から剣を抜き、剣の先端に左手を添える。俺は魔術力を込めながら、添えた手を少しずつ、柄へと下ろしていく。添えた手が通り過ぎたところは実態のない雷の剣となる。
「それは・・・なんだぁ!!」
まだ、金縛りが解けていない敵が叫ぶ。
俺は剣を雷に変えきると問いに答える。
「雷の剣・・・。俺の【双牙の剣[零]】は持ち主が込める魔術の系統によって、姿を変える・・・。火であったら、炎の剣、風であったら、風の剣・・・というふうにな」
俺は答えた後、敵に近づいていく。少しずつスピードを上げながら。
「光より速く貫け! 【雷の瞬撃】!」
俺のスピードは光速に達し、敵を貫き、敵の背後にいた。
「馬鹿・・・な・・・!」
敵は青い燐光に包まれ、魂となった。
「明・・・」
俺はボソリと明の名を呼んだ。
明は呆気に取られていたが、その内、ハッとしたように我に返り、駆け寄ってきた。
「何?」
「魂の封印を頼む」
「あ・・・うん」
明はコクリと頷くと、早速魂の封印に取り掛かった。
俺は明から離れ、空を見上げた。
次第に雨は止み、星空が見えてきた。・・・その時。
丁度、封印を終わらせた明の足元が崩れだした。
明がいたところは俺と悪霊が戦闘をした為、もろくなっており、更に屋上の端の方だった為、崩れたのだと思う。
「えっ・・・? キャアァァァァァァ!!」
流石に使い手と言えどもマンション五階から落ちればただでは済まない。しかも、全然鍛えていない明が落ちている。魔術を唱える暇も無く、このままでは確実に死んでしまう。・・・そんなのは嫌だね。アイツがいねぇと、何かツマンネェ。
俺は走って、明が立っていた場所まで行き、ためらいも無く、飛び降りた。
飛び降りるのと同時に、覚醒状態の効力が消えた。
・・・クソッ。覚醒状態で落ちたら、たいした怪我はしないと踏んでたんだがな・・・。しかたない。
俺は手のひらから雷のエネルギーを放射しつつ、スピードを上げ、明に追いつく。
「零牙っ・・・・!」
明が泣きそうな目で俺を見る。
あぁもうっ・・・泣くなよ。俺が助けてやっから。
俺は腕を伸ばし、明の腕を掴み、引き寄せた。そして、抱きしめた。
そのまま、地面に背を向け、明の体の一部でも地面に激突しないようにしながら落下した。
ズドォォォォォォォン・・・・
砂煙が立ちこめ、意識が飛んだ。
「零牙・・・零牙っ!?」
俺は一瞬だけ、意識が飛びかけたが、明の声で我に返った。
「大丈夫・・・?」
また泣きそうな顔で俺を見る。
「だから、泣くなってのに・・・」
俺が答えると、明は安心したようだ。だが、顔を急に赤らめた。
「あのさ・・・放してくれない?」
俺はハッとして、腕を退けようとする。が、
「・・・感覚がねぇ」
しかも、腕がピクリとも動かない。
「動かせないの?」
「あぁ・・・悪いが、自分で降りてくれ」
そう言ったあと、明が俺の腕を退かそうとする。すると、腕に激痛が走る。
「いでぇぇぇぇぇ!!!」
「えっ!?」
明はビックリして俺の腕を退かそうとしていた手を止める。
「大丈夫・・・?」
「・・・悪い、明。しばらくこの状態のままでいてくれるか?」
俺がそう聞くと、赤かった顔が更に赤くなった。
「う、うん・・・」
とりあえず、了承してくれたようだ・・・・・。
〜数分後〜
「そろそろ大丈夫そうだな・・・明、降りてもいいぞ」
「う、うん」
明は痛みの引いた、俺の腕をどかそうとした。が、一瞬だけ、どこか惜しそうな表情をした。だが、すぐに腕をどかして、俺の隣に座った。
「・・・ありがと」
「別に気にするな」
俺はその後に「お前を守りたかっただけだからな」と付け足そうとすると、大きな声が聞こえた。
「おぉ〜い! 大丈夫か〜!」
派遣部のみんなと鈴空の姿が見えた。
話を聞いたところによると、俺達が追いかけていった数分後に大きな地響きが聞こえたので、ここまで来たというのだ。
鈴空は何か聞きたそうにしていたが、黙ったままだった。
「なぁ、零牙。鈴空、どうする? 記憶、消すか?」
「・・・いや、消さなくていい。鈴空から、俺達と同じような波長を感じる」
炎人は驚いたような顔をしたが、納得したように頷いた。
「分かった」
その後、俺は狼牙の肩を借りながら家へと戻り、自分の部屋へ行き、深い眠りについた。
その4に続く。
はい、後書きにも召還されました、ガルーです。誰に召還されたかはスルーの方向で。
いつもなら3話完結なんですが、今回はあと1話だけ続きます。新たな仲間は誰なんでしょうか・・・!? まぁ、読者の皆様には分かっていることでしょうけど・・・。
あ、それと、次回の後書きに半周年記念企画と二十話ごとに開催される人気投票の説明を書きます。
では、次回をお楽しみに!!