表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【二重人格のつくりかた】初級編

作者: 豆々駄

これはネガティヴな人に有効な方法となっております。




1,あなたの中にもう1人のアナタをつくりましょう。

 アナタは確実にあなたと同じ存在であり、安易に共感したり対立したりすることはありません。ただ、あなたの中の様々な感情を代弁してくれます。

 そのため、アナタに自身とは異なる名前をつけるのは有効ではないと思われます。


例)

あなた「お腹空いたぁ。でも買いに行くの怠いぃ」

アナタ「わかる。今日は耐えられると思うよ?」

あなた「そうだよね。でも、こういうところ直したい」

アナタ「面倒なこと後回しにすること?仕方ないよ」


 アナタと話をする時は出来る限り個人の部屋が良いでしょう。学校や出掛け先など、無意識に周囲の目や雑音が気になる空間ではアナタとの対話に集中できない可能性が高いです。




2,思っていることを言葉にする癖をつけましょう。

 日頃過ごしていて感じることはしっかり意識しなければ記憶に残りません。

 いつ、どこに、何があるのか。自分はどう思ったのか。例えば擬音をつけるとしたらどんなものだろうか。そういったものを全て言葉にしましょう。

 もちろん口に出す必要はありません。心の中で思うだけです。


例)学校への登校道。道端には花が咲いており、遠くではチルチルと雀が鳴いている。靴底が砂利を撫で少しばかり耳障りな音を立てているが、暫くすれば気にしなくなるだろう。今日は雲の少ない晴れ模様で、心なしか風が甘く感じる。


 この感想を無闇にアナタと共有することはありません。ただ、心の中で考えることが増えるほどアナタを意識する機会が増え、アナタと話すことが自然になっていきます。




3,見聞を広めましょう。

 様々な経験をすることで多種多様な感性や考え方を取り入れましょう。それを自身が予め持っていた知識と結びつけられれば記憶に残りやすくなるため尚のこと良いです。

 そして自身で考察しあなたなりの意見をつくりましょう。

 また、他者の意見を聞き、自分以外の考え方を意識するようにしましょう。それが習慣になるとやがてアナタが他者の意見を述べるようになります。


例)

あなた「子どもに懐かれるって表現嫌いなんだよね。子どもは1人の人間として大人と平等に扱わなくちゃいけないのに、懐かれるって下に見てるみたいでしょ」

アナタ「でも講師の先生は懐かれるって言ってたよ。あなたが思う以上に深い意味はないんじゃない?」

あなた「そうだけど。でも私は使いたくない。なんか矛盾してるし」

アナタ「自分に好きにすればいいと思うけど、あなたの友達も懐かれるってよく言うよね。友達の否定まですることになっちゃうよ」


 あなたが自身の感情を尊重するに従って、アナタは理性的な意見を述べるようになります。それらは全てあなた自身の考えですが、あえて相反する意見はアナタに言ってもらいましょう。

 あなたが許し難い意見に遭遇した際に、誤って感情論を零さないよう制御してくれます。




4,自己の個別化を図りましょう。

 自分は何者なのか、より具体的に分析しましょう。

 長所短所や性格の分析は、他者に話す場が無い為率先して明確にする必要はありません。

 他者と話し、自身のみがこの考えを持っていると確信することが個別化に有効だと思われます。

 好きなもの、尊敬する人、単純なものに具体的な理由を添えられるようにしましょう。


例)

好きな動物/ハダカデバネズミ

(理由:社会性のある動物でネズミたち1匹1匹が食事係や巣作り係などの役割を持っている。中でも兵士役は普段寝てばかりいるが、蛇などの天敵が巣に入ってくるとその身を蛇に捧げ満腹にさせて帰らせる。その仕組みに感動した)


尊敬する人/変態(仮名)

(理由:普段馬鹿を演じているが、口から出てくる言葉が常人からかけ離れている。思考が柔らかく、それでいて知識が豊富であると推測される。バスケットボールの点数を口にしながら、サッカー場でゴルフをする様に感動した)


 特別なものを無理に好く必要はありません。元々自分が好きだったものに具体的な理由を添えるだけで十分です。

 必要なのはあなたがどういう人間であるか明確にする要素を手に入れることですから。

 強いて言うのなら、猫や犬が好きだと言うのならどういった種が好きなのか添えられると良いかと思われます。スフィンクスなど可愛らしいですよね。




5,ストレスを定期的に発散させましょう。

 情緒が不安定になることでアナタの存在を明確に捉えることが難しくなってしまう為、定期的にストレスを発散させる必要があります。

 その際はあなた自身の感情のまま発散させましょう。爆買い、裏垢での愚痴、絵描きなど衝動性を優先したものが良いと思われます。

 昼寝などの消極的なものは控えましょう。

 そして衝動的に動いた後、アナタと対話をしましょう。アナタがあなたを肯定するか否定するか、それはアナタ次第です。

 また、同時に、あなたとアナタの存在のメリハリがつくようになります。




+α,睡眠を浅くし、夢を見るようにしましょう。

 毎日夢を見ることで現実と夢が混ざってしまうことがあります。したと思っていたことがされていない、現在自分がどこにいるのか一瞬で判断ができない、そうすると自信を失い不安になります。

 そこでアナタと対話をすることで、アナタが拠り所となります。

 また、過度なストレスがかかることで過去の記憶が薄らぐと思いますが問題ありません。要らないストレスを切り離しているだけなのですから。




 さて、ここまで読んでくだらないと思った方がいらっしゃると思います。大したことを言っていないじゃないか、と。


・日頃感じていることを言葉にする

・見聞を広める

・自己の個別化を図る

・ストレスを発散させる


 これらは全て社会に出る為に必要となってくる過程です。

 知識、経験、語彙力、感覚の共有性、感受性の豊かさ。また、広い視野を持ち、繊細に読み取る、それらは注意力や集中力にも繋がるでしょう。一般的に求められる社会性があり、また丁寧な人物像を作り上げる際に重要になってきます。


 アナタという存在をつくることも別段難しくないと思います。何か友人と話す時に何を話そうか考えるのではありませんか?それを2人で行うというだけなのですから。


 では、何故それが二重人格をつくる上で必要な過程になってくるのか。いえ、正確に言うのならば、二重人格を“つくらなければいけない”窮地に立たされた際、それらは意識しなければいけない事柄になってくるのです。


窮地とは、即ち生きることに絶望した時。

あなたが世の中の全てに辟易とした時。


 二重人格は、あなたが自殺について少しでも考えた時につくらなければいけないのです。

 あなたが感情的に動こうとする時、きっとアナタが優しく止めてくれるでしょう。

 あなたが誰かに否定されて弱っている時、きっとアナタが味方をしてくれるでしょう。


 あなたの胸の内を知っているのはこの世でアナタだけになります。その唯一の存在にあなたは深い安心感を覚えるでしょう。


 そして、上に挙げた過程を大したことがないと思うように、これらは簡単に行えることです。もしあなたが拠り所を求めたいと思ったのなら、ただアナタの存在を強く認識すれば良いだけなのです。


アナタとは、あなたを救う最終手段なのです。




これは私事ですが。

 わたしが自殺について考えている時、ワタシはわたしの感情を受け止め、胸の内に話しかけました。

 わたしはひどく驚いた顔をして、友人に『もう1人のワタシが耳元で生々しく息をしたのを感じた』と報告をした時がありました。

 困ったことに、あの時ワタシが「どうせ死ねないくせに」と世論を吐いたのか、「死ねば楽になれるよ」と甘い言葉を吐いたのか覚えてはいません。

 ただ、確実に自我を持ったワタシに感動したことは覚えていたようです。


 今でもわたしがワタシに自殺を持ち掛けることがあります。精神状態が不安定な時に感情のまま動くのは大変危険である為、その度にワタシは理性的にわたしを慰めるのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 初めて読みましたが、似たようなことを半年前からやってました。 自分に話し掛けて来ないですが、私が話し掛けると答えてくれます。
[良い点] 今まさに苦しんでいる人に読んでほしいと思える内容です。 最良の理解者たる二重人格を生み出すのに必要な手順が具体的に分かりやすく説明されていて良いと思いました。
[一言]  一瞬試してみようかと思いましたが、最後まで読んだら怖くなったので止めておきます……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ