8話
「じゃあ……付き合う?」
由菜には散々言われてるけど、私は別に誰でも彼でもキスしないし、それ以上もするわけじゃない。シた事あるのは歩美と由菜だけだし。怪我したら手当てしてくれるから好き。
「はじめちゃん遊びに来たんでしょ? こんな奴ほっといて早く行こ!」
由菜はいっつも邪魔しかしないんだから。
腕を引かれて今にも部屋を出ていきそうなはじめを後ろから抱きしめる。
「はじめは私と遊ぶんだけど」
「あんなことした菜々花をはじめちゃんと2人になんて出来ないでしょ!」
「2人が良かったのに……」
「置いてくわよー」
有無を言わさない態度に仕方なく、外着に急いできがえて後を追う。昼間は暑い……。
「先輩!? さっきはちゃんと服着てたじゃないですか!」
合流したはじめはすぐにリュックからサマーカーディガンを取り出して駆け寄ってきた。
「これ着てください!」
「はじめちゃん、通常運転だから大丈夫よ」
「わたしが目のやり場に困るの!」
強制的に着せられた上に、1番目のボタンまで閉められてしまう。
「開けてていいよ。蒸れるの嫌なの。暑いからわざわざ着替えたのに」
「ダメです!」
「暑いんだけど」
せっかく少しでも涼しい格好をしてきたのに。
「少しだけ我慢です! ショッピングしようって話してたんですよ。駅までの辛抱です」
それって結構あると思う。汗かくの嫌い。
「ほらわたし、タオル持ってますから使ってください」
「う〜ん…」
◇ ◇ ◇
「やっと着いた…」
店内に入ると、涼しい風が体を撫でていく。
「そんなに経ってないと思いますけどね〜」
「こっち行こう、洋服見たいの」
「その前にアイス食べたい」
暑い暑い。もう……暑いよ。冷房足りない。アイスアイス。場所は分かっているのではじめの手を引っ張る。さっきは由菜に連れてかれたからお返しよ。
「先輩? この手はなんですか?」
繋いでるだけだけど? 何かおかしいことしてるかしら。
「だめ?」
「いえ。ずっと繋いだままだから暑いなら離せばいいのになって」
「だって由菜がはじめのこと取ろうとするから」
すぐ私と引き離そうとするもの。ちらと由菜の方を見て、今度は腕を抱きしめる。
「せ、先輩それはさすがに歩きづらいです。というか……当たってます」
歩いてるうちに熱も冷めてきたし、これでも平気。暑くない。はじめとくっつくのは好き。
「あたしははじめちゃんが良い子だから仲良くしたいだけよ」
「それが嫌なんだけど」
「え、何? まさか体目当てじゃなくて本当に惚れてるの?」
すごく失礼なこと言われてる。
「……はじめ、アイス奢ってあげる」
「え、自分で出せますよ」
「私先輩だから」
「ちょっとあたしは!?」
「……知らない」
由菜の私への認識が酷いと思うの。幼馴染だしルームメイトだからずっと一緒にいるはずなのになんでだろう。