6話
「そういえば先輩って、部活入ってるんですか?」
わたしがいいと先生の前で駄々をこねた先輩の額に氷嚢を当てながらはたと気付く。
「ううん」
わたしは部活だから当たり前に登校してたけど、今は夏休みだから学校に登校してくるのは部活生か、補習がある生徒だけのはずだ。
「じゃあ、補習?」
「ううん。静かなところで涼みに来たの」
涼みに、って……。
「部屋に冷房ついてるじゃないですか。壊れたとか?」
「ううん、由菜がいると煩いから」
随分な言い様……。由菜ちゃんは先輩と一緒にいるの楽しそうに見えたけど。
「そうですか……あの、今日はたまたまですよね?」
もう夏休みに入って何日か経っているんだ。まあ、由菜ちゃんだって友達付き合いがあるはずだし、毎日ずっと部屋に篭ってるわけでもないだろうけど。
「毎日ではないけどよく来てる。最初は図書室で課題やってて、でももうすぐ終わりそう」
意外と真面目? なとこもあるんだ。
「ご実家には帰らないんですか」
「うーん、お盆辺りに帰る予定なの」
「じゃあ、お友達と遊べばいいじゃないですか」
せっかくの夏休みなのに、予定無しって勿体ない。先輩には高校最後の夏休みだし。
「はじめが遊んでくれるの?」
「えっ? わたしは部活ばかりなので……どうでしょう。他にも友達いるでしょう?」
「…………」
なんか、あからさまに残念そう。
って、由菜ちゃんを忘れないであげて?
それに……そうだ、この間、
「確か……歩美さん、でしたっけ」
由菜ちゃんからその名前を聞いたような。
「歩美……そうね」
なんだか微妙な顔。由菜ちゃんが言ってたから友達だと思ったけど違ったのかな?
「違いました?」
「ううん」
良かった。
「わたし、毎朝あの時間にジョギングしてるんです。まあ、たまには会えるでしょうし、ご飯くらいならご一緒しますよ。ゆっくりできそうな日があれば教えますし」
「うん!」
先輩、完全に朝型だよね。こないだは帰ってきた後寝たみたいだったけど、この時間に学校に来るって事はそのまま準備して出てくる感じなのかな。
わたしも課題やらなくちゃ。部活漬けになってたらどんどん夏休み終わっちゃいそうだし。
「先輩、課題、分からないとこあったら教えてもらえますか?」
「うん、いいよ。教えてあげられると思う」
自信ありそう? 先輩、結構頭良かったりするのかな?
部活の先輩たちと部活以外で遊ぶことはよくあるけど、正直勉強はあんまりっていう子もいる。
教えてくれる存在は非常にありがたい。
「由菜ちゃんとも一緒にできるのかな」
由菜ちゃんだったら同じ学年だし、もしかして由菜ちゃんの方が良かったかな。
「話しておく。一緒にするだけならいいけどあの子馬鹿だから……」
あー……。そうなんだ。
「はじめ、ありがとう。私ついでだからここで寝てる」
あ、わたしもそろそろ行かなくちゃ。
マイペースだなぁ。確かに保健室は静かで涼める場所だけど。
「こらこら勝手に決めるな。寝る為の場所じゃないんだから」
全くその通りだ。それに、先生がいるのにわたしに手当てしてって駄々をこねるなんて失礼だと思うし……。
「誰もいないからいいでしょう?」
「あのなぁ……まあいいや。誰か来たら起こすからな」
いいんだ!? わたし、感覚がズレてるのかな……。
次回、急展開(?)