3話
「どうして舞子じゃダメなの?」
せっかくお風呂に入って体も気持ちもスッキリしたのに、部屋に戻ると面倒な客がいた。
「言ったでしょ。私は歩実のこと諦めてないの」
私の気持ちはまだ変わってない。恋人として付き合っている彼女。一方的に別れを告げられて以降、会うことも無ければ連絡も一切来ず、話し合いすらできていないのだ。だから私は納得してない。またきっと元に戻れる。
「でも! あの子もう他の人と付き合ってるじゃない!」
2人で歩いてるのを見ただけ。声をかける勇気が出なくて、その時は付き合ってるか聞けなかったし。ただの友達でもおかしくない。
「まだ私の中では片付いてないの」
「見れば舞子でも分かる! もうななちゃんと戻る気なんてないよ」
食い下がる舞子だけど、私だってそこは譲れない。
「関係ないでしょ」
「でも舞子、ななちゃんの1番になりたいんだもん」
急に振られて納得なんてできない。あの子だってそれは分かってるはず。
確かに、認めたくないだけでもうあの子の中に私はいないことは、なんとなく分かってる。でも、それを他人に指摘されるのは、すごく嫌。
イライラした気持ちで、ベッド脇に立つ舞子をそのまま押し倒す。意識的に、お腹をそろりと撫でた。
「……付き合ったとこで、発散する為だけの相手にしかならない」
「のぞむところだよ」
しばし睨むように視線がぶつかる。するとコンコン、とドアをノックする音が聞こえて、私は舞子から離れる。助かった。
「誰か来た。もう帰って」
そう言うと舞子は、まだ何か言いたげな顔をしながらも、やっと部屋を出て行った。そのドアをもう一度開けると、朝会った女の子が立っている。
なんの用だか分かんないけど、恩人に違いないので「どうぞ」と中に招き入れる。
「もしかしてお取り込み中でした? って、なんで服脱ぎはじめるんですかっ!!」
やっと落ち着ける。のんびり過ごす予定だったのに、早速予定が狂ってしまった。
「来てくれてありがとう」
歓迎の意味を込めてハグすると、急に顔を真っ赤にして慌てだした。
「ちょちょ! 何もしてないですし! そーゆうのはせめて服を着てからにして下さい!」
「だって。シャワー浴びて戻ってきたらあの子がいて、脱げなかったの」
暑苦しいんだもの。服って。
「だからって何故今脱ぐんです!? もう! 目のやり場に困るんでちゃんと着てください! 私そんなに長居するつもりないですから!」
……やっと脱げると思ったのに。
「それで、何か用があった?」
冷蔵庫に冷やしてあったお茶をグラスについでテーブルに置く。私も飲もう。
「あー。えっと、まずわたしは高等部1年2組の有原はじめっていうんです。寮監さんから先輩の保護者を命じられまして」
あの子を放せって話でしょ。嫌よ、これから可愛がるとこなんだから。
「そんなの聞かなくていいじゃない」
「まぁ、そうなんですけど。なんとなく気になって」
そして何か言いづらそうに目を逸らしながら、
「さっきの人……誰ですか? なんかすごく睨まれたんですけど。わたし何かしたんでしょうか」
あの子。私の客とは限らないのにそういうことするなんて。
「気にしなくていい。私もよく知らないし」
「はぁ……そうですか。それで、朝のバッタはもう放したんですか?」
もちろんまだいるわ。
「…………ふあぁ……ねむくなってきた」
でも、可愛がるのは起きてからにしよう。
朝が早いのでお昼寝を時々挟む私。と言ってもまだお昼前だけど。
「はじめも、一緒に寝る?」
「いや、話をそらs……」
「ちょおおおおっとまったーーー!!」
\(*°д°)ノダレ〜