第三話 らめぇ
「ちょっと御地井真子さん!どういうことですかこれは!?」
教室のドアを勢いよく開けて、メガネを掛けた、気の強そうな美女が入ってきた。
風紀委員の封木さんだ。
「えっ?何のこと?」
「コレですよコレ!」
封木さんはスマホの画面を見せてきた。
そこには昨日真子が昼休み中に教室でやった、アイスバケツチャレンジの動画が流れていた。
真子が現代の文化に触れたくて、どうしてもやると言い出したのだが、既に日本でやってる人などほどんどいないし、教室でやるのは迷惑だからやめろと散々言ったのだが、ちょっと目を離した隙に、無理矢理実行し、その動画をSNSにアップしてしまったらしい。
それを封木さんに見付かったという訳だ。
そりゃ怒るわ。
ちなみに琥太狼先生は、笑って許してくれた。あの先生も大概だ。
「あーそれかぁ。まあ、みんなも楽しそうだったし、それでチャラってことじゃダメ?」
「ダメに決まってるでしょう!学校を何だと思ってるんですか!!」
「そっかー、じゃあしょうがないなぁ。この手はなるべく使いたくなかったんだけどなー」
「な、何ですか!?私は脅しには屈しませんよ!」
「いやいや、そんなことはしないよ。ところであなたとっても綺麗だね」
「ハッ、そんなお世辞で誤魔化せると思ったら、大間違いですよ」
「お世辞じゃないよ。実は私、女の子もイケるんだ」
「へっ!?イケるってどういう……」
「まあまあ、ちょっと二人であっちの物陰に行こ?」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!どこに連れていくつもりですか!……こ、コラ!本気で怒りますよ!……アッ……そんな……ンンッ…………らめぇ」
二人が戻ってくると、封木さんはすっかりしおらしくなっていた。
「ま、まあ今回だけは大目に見ますが、次からは気を付けてくださいね」
「はーい。ねえ封木さん、今度二人でどっか遊びにでも行かない?」
「か、考えておきます」
「うん、じゃーまたねー」
「うおおおおおい真子ー!!!何やってんだお前はー!!!!」
「何って、ちょっとオハナシアイをしただけだから、硬いことは言わないでよおじいちゃん。シワが増えるよ」
「まだシワはねーよ!!でもお前のおかげでシワができそうだよ!!」
何故俺は目の前で、孫が禁忌を犯すところを見せつけられにゃならんのだ。
「でもこの学校って、可愛い女の子がいっぱいいるよね。せっかくだからもっと沢山の可愛い子と、オトモダチになりたいなー」
「真子……」
何だこれは。
もしかして今後俺は、孫がひたすら可愛い子を堕としていく様を、延々見させられ続けるのか。
これがもし、誰かが書いた小説だとしたら、俺は作者のことを絶対許さないぞ。