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創作論的な何かを書いたエッセイ

異世界テンプレはプラットフォーム論

作者: ロロサエ

異世界モノに対する認識の前提が間違っていると思います。

現実をどんなに忠実に描写した所で、そこには作者の主観が入っており、現実そのものを文字で書き表す事は不可能です。

従って、小説の世界は全て異世界だと言っても過言ではないと思います。


そしてテンプレ。

テンプレの利点は、その世界について詳しく説明しなくても良い事です。

設定の詳細は、場面場面で小出しにしていけば、説明回がなくて読者に理解してもらえますので楽です。


というよりも、そもそも現実世界を舞台にした小説こそテンプレなのです。

なぜなら、その創作世界に対する知識を、読者が既に獲得しているからです。

太陽があり、第三惑星の地球で、衛星として月を持っており、重力があり、生命が生まれ、人類が増えて文明を築いた。

その共通認識の下に作品の世界を展開しているのです。


これと異世界テンプレのどこが違うのでしょう?

ドラクエ風、中世ヨーロッパ世界である。

魔法があり、モンスターがおり、魔族がいて魔王が統治している。

レベルアップして、ステータスもあり、冒険者ギルドがある。

読者の多くがこの共通認識を既に獲得している時点で、現実世界を舞台とした小説と何も変わりません。


問題は、異世界モノは設定がいい加減だったり、その為に矛盾が出てきやすい点でしょう。

まず、生命が惑星に発生するには、恒星からの適度な距離が必要です。

大きすぎる惑星であれば重力が強くなりますし、小さすぎれば大気が維持出来ません。

水の存在も重要ですが、多すぎれば陸生生物は生まれないかもしれない。

地球に生命が生まれたのは偶然かもしれませんが、偶然には偶然なりの必然があります。

ですが、こんなどうでもよい設定は物語には直接必要ありません。


小説なので設定が破綻していても良いのです。

矛盾だらけでも問題は無い。

大事なのは、読者が楽しんでくれるかどうかです。

その作品が受け入れられるかどうかです。


勿論、余りにご都合主義が過ぎれば醒めてしまう読者もいるでしょう。

その時は設定を見直す必要が発生するかもしれません。

けれども、それは程度、バランスの問題であって、実は現実世界を舞台とした小説と何も変わりは無いのです。

学園青春物で、平凡なヒロインがイケメンに次々に惚れられるなんて、ちょっとお花畑に過ぎるでしょう。

それと異世界転生主人公がチートを貰ってハーレムを築くのと、何が違うのでしょうか?


現実世界を舞台にしている作品は、実は手抜きです。

なぜならその世界に対する設定を考えていないからです。

「だって現実の世界なんだから。」

これが手抜きでなくて何でしょう?

読者の常識、共通認識に全てを委ねていますよね?

「言わなくても分かっているよね?」

と読者に強要していますよね?


また、読者もそんな説明を求めてはいません。

これは太陽系第三惑星「地球」が舞台で、類人猿から進化した人類が西暦2000年という暦の中で到達した社会における、義務教育とよばれる制度で、学校と呼ばれる教育機関に通う登場人物達が繰り広げる物語です、ってアホですよね?

分かり切った事を説明する必要はありません。

読者は理解しているからです。

これをテンプレと呼んで差し支えないのではないでしょうか。


「なろう」における異世界テンプレとは、作者が説明しなくても読者が理解できている、我々が生きる現実社会と似た世界を、異世界というくくりの中で実現している、と表現出来る気がします。


勿論異世界なんて現実には存在せず、そこには作者の数だけの異世界がある訳ですが、それはそれとして、細かな違いは作品ごとの味として、大まかな所では共通認識が出来上がっていますよね?

これは素晴らしい事ではないでしょうか?

異世界テンプレの設定が作者と読者の中でもう少し洗練されていけば、矛盾の少ない異世界テンプレが出来上がっていく気がします。

これは普通、プラットフォームと呼ぶのではないでしょうか。


そして、現実世界ではこれが既に出来上がっている。

各人がその目で見る世界が、そのまま現実世界のプラットフォームですから気づいていないだけで、異世界テンプレと同じことだと思います。


例えばですね、中世ヨーロッパでは天動説が世界の設定だった、ですよね?

庶民はそういう認識の下、現実世界を見ていた訳です。

魔法が普通にある異世界モノを読む読者の意識と、何が違うのでしょう?

天動説は科学が否定しました。

では、異世界モノの中の魔法は?

作者、読者の考察でバージョンアップ出来うるのですね。

科学的思考で、異世界であれ、現実的な魔法の効果も規定されうるのです。

だからこそ、矛盾が指摘されるのですよ。


そういう事を考えれば、異世界であろうが現実世界であろうが、物語は全て同じです。

現実世界を舞台にすれば、矛盾は少なく仕上がるだけです。

だって現実的に考えれば、そうおかしな展開にはならないからです。

トラックにひかれたら普通死にます。


でも、異世界であれば魔法とかチート能力とかあるから、展開に無理が生じたり矛盾が発生したりしやすいだけです。

トラック並みにでかいモンスターの突進を受けたけれども、チート能力で大丈夫だったが出来ても、そんな奴なら人の拳で吹っ飛ぶなんてことは可笑しいでしょう。

そういう事です。


ちょっとぐだってしまいました。

結論として、異世界テンプレは素晴らしいが発展途上。

読者の方の考察、指摘、改善案の提案で、ますます素晴らしいモノになる可能性がある、です。

それはつまり、今のままの「なろう」でOKという事です。

私も異世界転生モノを書きたいと思っていますので、その節は宜しくお願い致します。


科学は、この世界に対する認識を一つづつ増やしていきました。

数学の公式もそうです。

それは、この世界への知を修正していく過程でもあります。

古代においては、火山の噴火は山の神の怒りでした。

今ではマントルの動きの影響とか、その詳しいメカニズムが解明されつつあります。

それは、何かのプラットフォームを整えていく作業と似ています。


異世界テンプレも、これと同じでしょう。

今はまだ黎明期です。

異世界モノは昔からありましたが、一般人が創作の一プレイヤーになったのはここ最近ですから、「なろう」の異世界テンプレは、まだまだこれから進化していくのだと思います。

より分かりやすく、矛盾の少ないプラットフォームが構築されていくと。

これは、日本のネット社会が生み出した、世界に誇る文化的な資産だと思います。

テンプレに沿って書けば、ある程度のモノは出来上がる。

これは凄いと思います。

また、これだけの数の一般人が小説を書き、投稿し、読んでいる国なんて、他にあるのですかね?

いや、日本人で良かったぁと思います。

両親に対しては、生んでくれてありがとう! と言いたい。


後ね、日本語自体がテンプレなのですよ。

日本語というよりも言語そのものですね。

各人の共通理解がなければ成り立たないモノ。

それが言語ですから。

ことわざ慣用句が誤用され、嘆く意見があるじゃないですか。

あれも、異世界テンプレに対する批判に似ていますね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まあそうですね。 共感25%。内容が大した事で無いから
2019/03/11 10:50 退会済み
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