第1章:高校生から勇者へ転職
これは作者が自己満足かつ、気分によって更新していく物語であり、いつ更新するかなども不明なので、気が向いたときなどに「そういえばこんなタイトルの小説があったな」と思い出して読んでいただければ嬉しい限りの不定期更新の小説ですので、「別にそれでも構わないぜ!」と言う方だけお読みください。
そうでない方はすぐさま『戻る』を押して、別の素晴らしい作品を読むことをお勧めいたします。
「はぁ・・・」
深いため息をついて空を見上げる。
ここは工事中の建設ビルの最上階、当然人気なんかありゃしないし足場なんかも相当悪い。
では、何でそんな場所に俺がいるかと言うと・・・疲れたんで死にに来ました。
俺はこの世でもっとも不幸だと思われる男、緒守勇也だ。
なぜ不幸か、そんなもん簡単だ。神でも見放されているのか外を歩けば不良に絡まれるわ、海に行けばおぼれるわ、自分でも何で生きてこれたか不思議なくらいで・・・先日、親から勘当だっと言われたばかりだ。
まぁ、ほとんど俺が悪いわけなのだが・・・家の父は親厳しい人で、テストの点数が悪くて散々怒られた矢先に不良に絡まれて自己防衛のために戦ったのだが多勢に無勢で逆にぼこぼこにされたうえに警察沙汰で、挙句の果てには強盗扱い。何の因果か知らないがどこぞの馬鹿が俺の学生鞄と大金入れたアタッシュケースを間違えやがったおかげで警察に連衡。
っとこの辺で父親が完全に切れて、俺の事情も聞かずに勘当されて行くあて無しに2、3日ふらついてたけど、そろそろ生きるのがめんどくさくなったわけですよ。
もちろん俺も学生だから学校行ってたんだけどさぁ、こんな不幸な奴と友達になろうなんて物好き居るわけがなく、一人だったし、半分以上空気扱いだったから別に居なくなっても問題ないだろうしね!
ただ、心残りがあるとしたら・・・一度でいいからコーラのプールで泳ぎたい。
アホくさいとか言わないの!
まぁ、そんなわけで飛び降り自殺をしにここまで登ってきたんだけど、下見た瞬間足すくんじゃってさ、自殺・・・やめようかななんちゃって!
けど、生きてても飢え死ぬなんて真っ平ごめんだし、やっぱ飛び降りて死ぬか。
そんな時、俺の鞄(新しく買った)から携帯の着信音がした。
ふん、俺は出ないぞ!出ないんだ!出ない・・・・やっぱ出よう。
携帯を出して確認すると見知らぬ奴からの電話だった。
「はいもしもし?」
しかし、電話に出てみても何の反応もない。
誰かのイタズラだろうか俺が電話を切ろうとしたとき、電話から声が聞こえた。
「捨てる命なら・・・・い・・・・・」
電波が悪いのかよく声が聞こえない。
「なに!よく聞こえないんだけどぉ!」
「・・る・・・な・・・こっち・・・来い」
なんとも言いがたい機械的な声は、もう何を言ってんだかさっぱりわかんないし、これ以上話すのもだるいから適当にはいはい言って終わらせることにした。
すると、突然携帯から「契約成立」とか言う声が聞こえて目の前が真っ暗になって、目が覚めたら
「どこだここ?」
見ず知らずのお城のような場所でした。
お城のような場所っつうか完璧にお城で、いかにも王様ですよって感じの王冠被ったおっさんや、ピンクでフリフリの着いた清楚なドレスに身を包んだ、これまたいかにもなお姫様。
黒いマントに杖持った魔法使いらしき人やら、いかつい鎧に身を包んだ筋骨隆々とした兵士まで、日本に居たら間違いなく「頭イってんじゃないか?」って思われるような人々ばっかりかこれはいったい何の集まり? っと聞きたくなるほど貧相な服を着た人達が山ほどいる。
とりあえず、ここでは俺の常識は通じない物と考えてた方がいいのかな?
こんなときでも楽観的なのは俺の性格上仕方がない。 基本的には他力本願、二言めには「どうでもいい」とやる気なんかこれっぽっちもありゃしない。
こんなんだから駄目なんだ! っと自覚はしているもののどうにも直す気になどなれはしない。
人間誰しも長所と短所がある物さ!
実際、俺の弟なんて私立名門学校で常に1位取り続けてるし、全国模試でも順位は1桁、スポーツ万能、超イケメン! 非の打ち所なんかありゃしないがなぜだか俺にあこがれてる。
あこがれてぇのはこっちだよ! ってこれのどこに短所があんだよ! 自分で言っておいてなんだが矛盾しすぎだ。
そう、この考えは現実逃避だ。 現実逃避、それは嫌な事から目をそむけありもしない架空の世界や自分の思考の中に逃げ込む行為。
けど、世界はそれを許してはくれなかった・・・。
「勇者様! 貴方はこの国の・・・いや、この世界の救世主さまだ!」
「どうか、どうかわれわれを苦しめる魔王を倒してくだされ!」
貧相な服を着た人たちが口々に何か言っているが俺には聞こえない! そう、聞こえないんだ!
なんて思っていてが、話しはどんどん進んでいく。
「勇者様お名前は」
清楚なドレスを着たお姫様が俺の名前を聞いてきた。 う〜ん、ここは素直に応えるべきか否か・・・。
お姫様可愛いし素直に応えるか!
「緒守勇也です」
「まぁ、何と素敵なお名前でしょう!」
ここはどこぞのゲームのなかか?
そんなありきたりな反応いらねぇから状況説明プリーズ!
「ではユウヤ様、この剣をおとりくださいまし」
「うん、ちょっと待ってくれ、とりあえず俺に状況説明をしてくれ。」
俺が早口にそう告げると、姫様は少し困ったような顔をしてしまった。
俺なんか悪いこと言ったか!?
なんて自問自答していと、なんともセバスチャンと言いたくなるような老人が一歩前にでた。
どうやらこの人が説明をしてくれるようだ。
「恐れながら、私目がご説明させていただきます。」
それからセバスチャンに状況を説明してもらったのを、さらにもう一度俺の頭の中で整理しよう。
どうやらここは日本ではないらしい。 そんなのすぐに分かりそうな物だがな。
で、魔王がやりたい放題やっていて人類の危機だと。 俺の知ったこっちゃないな。
そんでもって、王国の魔王討伐隊が全滅して藁にもすがる思いで太古の技法を使って俺をこの世界に召喚したと。 なんつうはた迷惑な。
「で、これから俺は魔王討伐に行くわけだ」
「そういうことですので、さあ剣をおとりくださいまし」
姫から剣を受け取ったが、剣って結構重いんだな・・・。
あの姫何気に力あるな・・・俺持つのが精一杯ですよ。
そんなこんなで勇者にされてしまった俺、この先いったいどうなるのだろうか・・・。
俺の心配をよそに話しは進んで今日はもう休むことになった。
案内された部屋はかなり豪華で、例えるなら高級ホテルの最上階と言ったところだろう。
流石お城!
とりあえず手に持っていた剣を置き、ベッドに腰掛けた。
「なんかとんでもないことになっちゃったなぁ〜・・・ま、いいか」
どんなときでもマイペースな俺は、さっさと寝る体勢に入った。
横になって目をつぶって夢の世界へ旅立とうとしていると部屋のドアを叩く音がした。
たっく、誰だ人の睡眠を邪魔するやつは。下らない用だったらぶん殴ってやる!
俺がドアを開けるとそこに居たのは黒いローブに身を包んだ青い短髪の男・・・の子だった。
年齢的には2、3歳下だろう。
「あんたが勇者様か?」
ん〜なんつうか小生意気なガキだな。
「まぁ、一応はそうっすが」
俺の事を見渡すと一言
「軟弱そうなやつ」とかぬかしやがった。
ぶっ飛ばされたいのかオンドレは!
「ふん、納得いかないが王様のご命令だからな、泣いて喜べヘッポコ! この魔術大元帥ゼルカーロが貴様の魔王討伐を手伝ってやる!」
言いたいことはそれだけかこんちくしょうが、勇者の恐ろしさをその身に刻みこんでやる!
俺が怒りを右手に凝縮していると、目の前にいるゼルカーロが横から飛び出してきた何者かに吹っ飛ばされた。
「こらゼル!あなた勇者様になんてこてを! 勇者様申し訳ありません」
ゼルカーロと言う少年をぶっ飛ばし俺の前に現れたのは白に水色の混じった服を着た、淡い緑色の髪を伸ばした女の人だった。
身長や顔の整い方からみて俺とおない年くらいだろう。
「あ、いや、特に気にしてないから別にいいんだけど君は?」
気にしてないって言うのは嘘だ、けどこの目の前に居る女の人のことの方が気になった。
「あ、紹介が遅れました、私は魔王討伐にお供させていただく最高聖職者のフールリサーナと申します、リサーナとお呼びください」
恭しくお辞儀をしたリサーナさんはゼルカーロが吹っ飛んで行った方に早足で歩いて行くと、目を回しているゼルカーロの胸ぐらをつかんで起こした。
「ゼル、私あれほど失礼のないようにと言い聞かせばたかりでしょう!」
そのままブンブンと前後に揺らしながら文句を言うリサーナさん。
なんと凶暴な・・・・・・
「リサ姉俺が悪ったから、揺らさないで気持ち悪い・・・・・・」
「きゃ、ごめんなさい!」
いきなり手を放された勢いで壁に頭をぶつけてうずくまっているゼルカーロ、なんとも色濃いメンバーのようだ。
「あっははははは、あの姉弟は相変わらずだな」
「うわぁ!」
二人の様子に気を取られていた俺はすぐ後ろに人が来ていたことに気付かなかった。
思わずびっくりして尻もちをついてしまった。
「おっと、驚かせちまったみたいだね、いやぁ悪い悪い」
そう言って俺に手を貸してくれたのは赤い鎧を着た細身の女性だった。
身長は俺と変わらないのだが、燃えるように赤いショートカットの髪や顔立ちから大人の女性という雰囲気をかもし出している。
「大丈夫かい? 勇者さんよ」
「え、えぇ、えっとあなたは・・・」
「あたしはイサネ、フリーの傭兵さ」
そのフリーの傭兵であるイサネさんが何でこんなところにいるのだろう?
その疑問は即座に解決した。
「イサネ様も魔王討伐のメンバーに選ばれていたのですね」
いつの間にか戻ってきていたゼルカーロとリサーナさんがそんなことをいった。
どうやら3人は知り合いらしい。
「流石イサ姉! ウォルト国一の傭兵と呼ばれるだけあるよね」
へ〜この国一のねぇ・・・ってめちゃめちゃ強い人じゃん!
そんな人たちが居るなら俺居なくてもいいんじゃねぇ? てきな考えが頭に浮かんだ。
「てか、何であんたらは俺のところに来たんだ? 顔合わせなら明日やるって王様が言ってたし」
今更ながらの質問だと思う。
しかし、三人はきょとんとした顔をした後口をそろえてこう言った。
「「「勇者様の実力を見に来た」のです」んだよ」
まぁなんとも素敵な笑顔で・・・
空いた口が塞がらねぇぞこの野郎!
「まぁ、そういうこったから勇者様よ」
「どうぞ、私たちと一緒に中庭の方へおいでください」
「そこで、あんたの実力試してあげるよ」
冗談じゃない、一端の高校生男児がいきなり真剣持って腕試しとかできると思うなよ!
武術なんて習ってないし習ってたとしてもこの状況じゃ意味がない、だって魔法だとか抜かしてるチビスケ居るし。
「あ、いや、俺は皆が期待するほど強くは・・・」
「なにしてる、さっさと行くぞ」
「え! ちょ、ちょっと!」
イサネさんとリサーナさんがそれぞれ俺の右と左に立ち問答無用で中庭まで引きずって連れていかれた。
その後ろにゼルカーロが俺の鞄とお姫様に渡された剣を持ってついてきた。
んでもって今、中庭で剣を構えたイサネさん達と対じしているわけで・・・・・・
「これって一対一じゃないんですか!?」
「何を言っている、あたしらの目的が一緒だったんだからここは当然三対一だろうが」
もう容赦ない仕打ちに俺は泣きそうだ。
仕方なく鞄からメリケンと特注手袋を出す。
「剣を使わないのか・・・?」
イサネさんが不思議そうに尋ねてきた。
「重くて持つので精一杯ですから・・・」
いやマジですよこれ、あの剣半端なく重いんですよ!
絶対10キロ以上あるし・・・
「ここまで軟弱な奴初めて見たぞ」
思いっきり馬鹿にされているが、そりゃ今まで剣持つような環境に居なかったものでね、すいませんね軟弱で!
「そんなことどうでもいいけどいい加減始めない?」
ゼルカーロが苛立たしげに言った。
「そうだな、勇者様の準備もできたみたいだし・・・行くぞ!」
突如駆け出したかと思うとイサネさんの剣が目の前に迫っていた。
「うをぉ! っぶね〜・・・」
上半身を反らし、何とか初撃の突きを回避した。
そのままイサネさんの顎を狙うように蹴りを繰り出してその勢いを利用してバクテンをした。
だが、俺の蹴りは難なく避けられてしまった。
「ほぉ、思ってた以上にやるようだな」
そんなこと言ってもらってもあまり嬉しくありません!
こんなときだが俺の武器は拳だ。
手には鉛で甲の部分を保護した指先部分無しの革の手袋にメリケンをつけているが、それ以外は何もない。
めっちゃ不利じゃねぇのかこれ! だってリーチの差が歴然だろう!
とりあえず向こうは様子を伺っているようなので、こっちからしかけるようなことはしないが・・・・・・ん?
よく見るとゼルカーロが杖を掲げて何かをブツブツと唱えている。
もしかしなくても、魔法の詠唱とか言うやつだろう・・・・ってこんなに悠長にしてたらまずい!!!
俺はその場から全力で真横に駆け出した。
その直後さっきまで俺の居た場所に大人5人分はあろうかという氷の塊が振って来た。
「あ、あぶねぇ! あんなもん当たったらマジで死ぬ!」
ゼルカーロは自慢の魔法が避けられたことにショックを受けたのか知らないが目を見開いて驚いている、ざまあみろだ!
なんてことを考えていると後ろに気配がして、振り向くとリサーナさんが笑顔とは裏腹に凶悪な蹴りを放ってきた。
かろうじて手袋の甲でガードしたが、威力が半端なかった。
吹っ飛ばされて体制の崩れたところに、たたみ掛けるようにイサネさんが剣を振るってきた。
甲を使って攻撃を受け流しつつ距離を取ろうとするが後ろからリサーナさんが、そうはさせまいと凶悪な蹴りや十字碑のついた杖をブンブンと振り回してきた。
「クネクネと奇妙な動き方をするな、まるで猫みたいだな」
こっちはギリギリだというのに向こうは喋っている余裕すらある。
イサネさんの言葉に気を取られ、剣撃を受け流すことができず吹っ飛ばされてしまった。
そして、立ち上がったところにゼルカーロのツタの絡まる魔法で動けなくされてしまった。
ツタで動けない俺の目の前に来たリサーナさんが「神のお慈悲を」とか言いながら十字碑の杖で俺のとこを殴り飛ばした。野球のボールでも打つかのようにだ。
流石にそれは効いた、手袋でガードしたが腕がジンジンしている。
「つえぇ〜・・・」
俺のことを打ち飛ばした張本人であるリサーナさんが一番に駆け寄ってきてくれた。
「大丈夫ですか勇者様」
「ケホ、あ、あんまし大丈夫じゃないかも・・・それよか、リサーナさんって最高聖職者とか言ってなかったっけ? それがなんであんなに格闘術多彩なんですか」
「だって、自分の身が守れないようでは他人を救うことなどできませんよ」
笑顔でそう言ったリサーナさんを見た瞬間、俺の頭の上にバスケットボールほどの氷塊が降ってきてそこで意識を失った。
目が覚めると、俺はあの豪華な部屋のベッドで寝ていた。
俺の今の格好は着てきた学生服ではなく、この世界のパジャマなのだろうか、薄い生地の青色の服だった。
ここで、いくつか疑問が浮かんだ。
まず、俺をここまで運んだのは誰か?
次に俺を着替えさせたのは誰か?
そしてこれが一番重要なことなのだが・・・・・・なんでイサネさんが俺の隣で寝ているのかっつうことだ。
「ん・・・目が覚めたか勇者さんよ」
なんとも色っぽい声でベッドから起き出したイサネさんは一般男子には刺激の強すぎる格好だった。
まず、昨日着ていた赤い鎧は全部はずされており、変わりに白いTシャツのような物を着ているのだが、女性の女性たる部分の主張が激しく、はちきれんばかりなのである。
もちろ俺は女性にたいする抗体はなく、速効で目をそらした。
「イサネさん、とりあえずさっさと着替えてもらえませんか? 目のやり場に困るんで、それと俺のことを勇者さんと呼ぶのはやめてください。 ユウヤと言う名前があるんですから」
俺がそう言うと、なにか面白い物でも見つけたかのような声で返事をした。
「ところで、なんでイサネさんは俺なんかの隣で寝てたんですか?」
「いや、別に深い意味はないが、久々に ベッドで安心して眠りたかったから」
俺が安心して? と聞き返すと少しは声のトーンを落としていたが話してくれた。
「傭兵なんて事をしてるといつ寝首をかかれるか分からないからな、おちおち睡眠もとれやしないのさ」
最後の方は声のトーンも元に戻っていたが、俺はなんかばつがわるく次の言葉を発っせられないでいた。
けれどそんな俺とは裏腹にイサネさんはおちょくっているのか、いきなり抱えるように抱きついてきた。
「い、イサネさん!?」
動揺して裏返った声をあげると、イサネさんはあははっと笑っていた。
それから俺はイサネさんにだき抱えられたまま話をしている。
「それにしてもユウヤは見た目のわりにしっかりとした体をしてるね」
いきなりそんなことを言い出したイサネさん。
そうですか? と答えるが自分ではそんなに筋肉質ではないと思う。
「いやね、最初はこんなヒョロイやつで大丈夫か? って思ったんだけどね、実際に脱がしてみて分かったけど結構筋肉ついてるし・・・・・・実は着痩せするタイプ?」
そうなのか・・・自分ではあんまり気がつかないが確かに着痩せするタイプかもしれない・・・ってちょっと待て、今なにかとてつもなく重大なことを流した気がする。
俺はイサネさんから離れて、向き直り聞き返した。
「イサネさん・・・今なんて言いました?」
「だから着痩せする「その前です」 実際に脱がしてみて分かったんだけど「そこ!」?」
「実際に脱がしたってどういうことですか!」
俺がやや興奮気味でイサネさんに食って掛かる。
「いやな、あたしらとの組み手で色々と怪我してただろ? だからリサの奴が治すんで服を脱がせようとしてたんだけど、どうやって脱がしたらいいかわからなそうだったんでこう無理やりブチっと」
なにやってんだよこの野郎!
非常に叫びたい衝動に駆られたが寸でのところで我慢した。
「まぁそれで実際に脱がした訳なんだけど、生傷だらけでびっくりしたぞ」
イサネさんは面白い玩具でも見つけたようにニマニマした顔をして俺の言葉をまっている。
「・・・じゃぁ今着てる服を着せたのも・・・・・・」
「もちろんあたしだ!」
笑顔でガッツポーズなんかしてんじゃねぇええええええ!!!!!
がっくりと膝をついた。
多分俺の顔は今真っ赤になっているだろう。
他人に着替えさせられたのなんて幼稚園児のとき以来だし、こんな色っぽいおねーさんがやったとなればなお更だ。
「なんてことを・・・・もうお婿にいけない・・・・・・」
俺の一言にイサネさんは腹を抱て笑い始めた。
「お、おま・・・ククッお、お婿にいけないとか馬鹿っっっあっはははははははははは!! 堪えらんね〜〜〜」
まったくもって酷い言われようだが、これはこれでいいと思う。
何せ地球に居たときなど笑ったことさえなかったのだから。
「さて、そろそろ行かないと」
イサネさんが笑い転げている間に着替えを済ませた俺は剣を背中に背負い、イサネさんを引き連れて部屋をでた。
今着ている服は昨日破られた学校指定の制服ではなく、鞄の中に入っていた私服である。
それからはとことんつまらなかった。
まず王様のありがたーいお話を長々聞かされたあと、イサネさんやゼルカーロ、リサーナさん達との会談などなど・・・etc
それが終わったら勇者承認の儀を行った。
このとき知ったのだが、勇者承認の儀で剣が自分の使いやすい形へと変化するのだ。ちなみに、今までのは前回の勇者が使用していた重剣であり、変化した形は日本刀だった。
その後はパーティーで貴族の方々にご挨拶をして、食事をして明日の旅立ちに備えて解散となった。
部屋に戻る途中リサーナさんと会って今一緒に歩いている。
行き先はもちろん俺の使わせてもらっている部屋だ。
「話の流れからすると、魔王ってのは倒しても復活するんだろ?」
俺の前にも勇者と言われる存在が居たのなら倒したところで復活するのだろう、討伐というくらいなのだから。
「ええっと、それを説明するためには色々とこの世界について知ってもらわなければならないので、お部屋の方についてからでよろしいですか?」
「わかった」
魔王についての話はそこで一時打ち切り、部屋に着くまでの間、他愛ない話で盛り上がっていた。
部屋についてから改めて魔王について色々と説明してもらった。
まず世界観から教えてもらった。
世界には魔物と人間と悪魔が居て常に争いをしていて、いつも悪魔が優勢をとっていた。
そしてそんな状況を打破し、初代悪魔王を打ち倒した勇者が5つの王国をつくった。
剣の王国=ウォルト、杖の王国=デュアス、弓の王国=ターク、盾の王国=シュルトこの4つが人間の暮らす王国で、もうひとつが魔族の暮らす魔の王国=ギアディス。
ギアディス国は別名を北の王国とも呼ばれているらしい。
ちなみにここで言われている魔族というのは人間以外の種族のことで、竜族や獣族、鳥族なども含まれる。
そんでもって魔王というのは悪魔の王のことで、人や魔族といった者達の邪念の塊らしい。
「ここまではよろしいでしょうか?」
俺は頷きながら今の話しをひたすらノートに書き綴っていた。
「では、ここからは魔王と悪魔のことについて話しますね」
悪魔はこの世に生きる者の数だけ居るといわれていて、その中でもずば抜けて強い4匹を悪魔4将軍といい、炎、水、地、風とそれぞれの属性を司っている。
悪魔は人一倍丈夫で、倒すにはなかなか骨が折れる。
しかし、それを一瞬で成し遂げることができる武具が各国にある法具である。
剣の国は対魔の剣、杖の国が聖の杖、弓の国は破魔の弓、盾の国が封魔の盾、なのだけれど北の国だけ明かされていない。
そして、悪魔王はその法具を持ってしても倒すのに危険を犯さなければならないほど凶悪な存在だという。
「今更ながらメッサ不安になってきた」
そんな大役を任されたのかというプレッシャーが今になってのしかかって来た。
今までは、流されて色々と決まってしまっていたが、これからはそうならないようにしようと思った。
「大丈夫ですよ、そのために私たちが居るのですから」
リサーナさんは笑顔でそう言って俺のことを安心させてくれようした。
しかし、なぜか俺は安心しきることができなかった。
虫の知らせと言う奴なのか、何か得体の知れない不安が渦巻いているような感じだった。
それでも、俺はそんな不安を表情に出さないように話を続けた。
「っと、まぁ重要な部分はこんなところですね。 また詳しい事などは旅の道すがらにお話いたします。 私も明日の出立のための準備がありますので今日はこの辺で」
「あぁ、色々とありがとう」
「それでは、失礼します」
ペコリとお辞儀をして出て行ったドアを見つめながら底知れない不安と、俺は一人戦っていた。
この不安はいったい何なのか、頼もしいはずの皆が居るのにもかかわらず消えることのない不安に身を震わせた。
「俺の杞憂ならいいんだけどな」
そうポツリとつぶやいて、ベッドに横になり目を瞑る。
こっちの世界に来るまでは死ぬつもりで居たのに、自分を頼ってくれる人が居て、自分を認めてくれる人が居るだけて、死ぬことがここまで怖くなるとは思わなかった。
元の世界で、唯一俺という存在を頼り、認めてくれていた弟のことが少し気になったが、多分大丈夫だろう。
俺が弟と最後に合ったのが3年前、俺が高校に上がる直前で、弟が中学に上がる前だ。
俺と弟は離れて暮らしている。
それは、弟が病弱で都会に居るのは体に良くないから田舎の方で暮らしている。
あいつは今でも元気にやっているだろうか・・・・・・。
最後に見た別れ際の泣きそうな顔がまぶたの裏に蘇り、俺の心がチクリと痛んだ。
多分もう合うことはできないが、今では顔も思い出すことのできない母と元気で暮らしていることを俺は願う。
考え事をしているうちにいつの間にか俺は眠ってしまった。
そして、翌日の出立式がよもやあんなことになろうとは・・・・・・。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
前書きでも掲載いたしましたが、この物語は不定期更新なので続きはいつ読めるようになるかはわかりません。
それでも楽しみに待っていてくださる皆々様に改めまして感謝の言葉を申し上げます。
あつかましいお願いではございますが、物語への感想/評価などがございましたら遠慮せずにお書きください。
どのような感想/評価をいただいても、自分の糧にしていきたいと思います。