五話【初めての魔法!新たな魔法?】
はい!そんなこんなで五話目です!
ついに白君が魔法を使います!いえい!
「「はぁああああ!?」」「それは驚き」
白が魔法適性測定と属性検査の結果を話すと、静かな平原にウィリルとガンツの叫び声が響き渡った。
ルテラも叫びこそしなかったが、両目を大きく見開いている。
三人のこの反応を見るだけでやはりあの場ですぐ言わないでよかったな、と白は心の中で思う。
「というとあれか、ハク坊は全ての属性を使うことが出来るうえに、魔法適性も最高評価ってことか」
「まあ、そういうことみたいです」
ガンツはそれを聞くと、ウィリルに目をやった。
「ウィリル、お前はどうだったっけ?」
「適性がAで属性が火、風、雷、回復よ」
ガンツの質問に憮然とした様子で答え、ウィリルはやや肩を落とす。
ウィリル自身もかなり魔術師としては優秀であり、魔法適性はA評価で攻撃特化の雷属性と、言わずと知れた回復属性を得意属性としていたのもあり、攻撃も補助もできる天才だと言われていた。
そのことで驕っていたつもりはないが、自分よりも遥かに優秀な白の才能に多少の劣等感を抱いていた。
そして、白はこの件に関して悪いわけではないが、ウィリルの様子に申し訳なく思っていた。
しばらく(と言っても数分ほどだが)思考の海に沈んでいたウィリルだが、魔術師としてこんな破格の才能を持った白がどれだけ優秀な魔術師になるのか(魔術師になると白が決めた訳では無いのだが)に強い興味が出てきた。
「ねえ、白くん。白くんがこれからどんな冒険者になるのかはわからないけど、とりあえず私と魔法の修練をする気はない?」
「え?いいんですか?」
白自身ウィリルのその申し出はとてもありがたい。
どれだけ才能があろうと、基礎のきの字もないような白では魔法が使えるようになるか怪しかったからだ(まあ初級くらいなら適性さえあれば魔術書を読んでいれば使えるようになるが、当然白はそんなことを知る由はない)。
そんな白からすればむしろウィリルに教えてもらえるというのは願ったり叶ったりだった。
「せっかくそんないい才能があるんだし、白くんがどれだけ大成するのかが私自身楽しみだもの」
ウィリルの言葉にガンツとルテラも頷いている。
ガンツとルテラは魔術師ではないが、凡人の域を出ない自分たちからすれば、こんな才能を持った白がどれだけ上に行けるのか見てみたかった。
本音を言えばガンツたちも魔法を教える側に回りたかったが、ガンツは魔法適性が低い上に火属性のみでウィリルと被っており、ルテラも魔法適性はあるが風属性のみでこちらもウィリルと被っている。
だからウィリルが白に魔法を教えるというのはガンツとリテラも大賛成だった。
「えっと、じゃあお願いします。むしろ僕からお願いしたいくらいですし」
そんなこんなで白はウィリルから魔法を教わることとなる。
そして、折角こんな人がいないだだっ広い平原にいるので、実戦...とまではいかないが、変に周りに気を使わずに練習ができるんだからさっそく練習をしようという運びになった。
白からすればガンツとリテラは暇になってしまうんではないかと思うところだが、二人は白たちから距離をとって完全に見学体制に入っていた。
「よし、じゃあさっそく初級の火魔法《ファイアーボール》の練習をしよっか」
魔法とはどういうものかという話はトータスの街に来るまでにある程度は話している。
なのでまずはそれなりに簡単な魔法を使ってみるところから始めようということになった。
「じゃあまず私が呪文を唱えて発動するから、そのあとに白くんもやってみて」
そう言うと、ウィリルは誰もいない方向に向かってたち、腕をまっすぐ正面に伸ばし手のひらを突き出す。
「我が身に眠る魔力よ、火球となりて敵を撃ち抜け《ファイアーボール》」
直後、ウィリルの手のひらから火の玉──ファイアーボールが形成され、まっすぐに撃ち出される。
ファイアーボールはそのまままっすぐと50mほど進んで霧散する。
「さ、白くんもやってみて」
そう言われ、白はウィリルの横に並んで立つと、つ出をまっすぐ正面に伸ばし、手のひらを突き出す。
「わ、我が身に眠る魔力よ、火球となりて敵を撃ち抜け《ファイアーボール》」
ウィリルに比べてゆっくりではあるが、しっかりと詠唱をした白。
すると、白の手のひらからファイアーボールが形成されていく。
しかし、そのファイアーボールの形成速度は遅く、出来上がったサイズは小さい。
また、撃ち出された後の速度もウィリルと比べるべくもなく、ファイアーボールふらふら~っと数mほど進み霧散した。
そのなんともしょぼい結果に白は肩を落とす。
だが、実は白のこの結果は初めて魔法を使ったにしてはとても優秀な結果だった。
「おお、やっぱりハクくんの適性が高いからかな?一回目から結構ちゃんと撃てたねー」
ウィリルの言葉の意味がよくわからなかった白は首を傾げた。
実際ウィリルはそこまで説明していなかったから白は知らなかったのだが、普通、初めて(その魔法を初めて、という意味ではない)魔法を使った場合、例えば今白がやったファイアーボールでも形成には白の数倍の時間がかかり、また撃ちだすことなく霧散してしまう。
その点、白はきちんとファイアーボールを撃ちだすことができており初めてにしてはとても筋がよかった。
「この調子だとあと何回かやればファイアーボールは完全に使えるようになりそうな感じだね。よし、じゃあできるまで繰り返しファイアーボールをやってみて」
初級魔法も上級魔法も少しでも発動できるようになったらあとは繰り返し使って練度を高める。
そういうわけで白は再びファイアーボールの呪文を唱え始めた。
「我が身に眠る魔力よ、火球となりて敵を撃ち抜け《ファイアーボール》」
だが、二回目の詠唱の途中白は頭の中で妙な違和感を感じた。
詠唱は問題なくおこなわれ、さっきよりもスムーズにそして大きくファイアーボールは形成されて撃ち出される。
だが、脳内で生じた妙な違和感に白は首を傾げた。
「ん?どうかしたの?ハクくん」
そんな白の様子を不思議に思ったウィリルは白に声をかけた。
実際、先程よりも遥かにファイアーボールは良くなっており、もしかすると次には完成しているかもしれない。
にも関わらず首を傾げている白の様子がウィリルには気になった。
「んー、僕もよく分からないんですけど、ファイアーボールの詠唱中に頭の中で妙な違和感を感じたんです」
「頭の中で、違和感?」
白の返答にウィリルも首を傾げた。
魔法の詠唱中の違和感、一番多いのは魔力切れだが、あれは全身が重くなるようなもので、違和感とはまた違う。
ウィリルは練習を見ている二人にも目を向けたが、ガンツもリテラも分からないというように首を横に振っている。
ウィリルにもその違和感はなんなのかは分からず、とりあえずもう一度ファイアーボールを発動させることにした。
「じゃあ、もう一回ファイアーボールを使ってみて、また違和感を感じるか確かめてみて。もしかしたら気のせいって可能性もあるし」
「分かりました」
白はそう言いうと、再びファイアーボールの詠唱に備えて腕を伸ばした。
「我が身に眠る魔力よ、火球となりて敵を撃ち抜け《ファイアーボール》...っ!?」
今度は三回目のファイアーボールの詠唱を終えた直後、突然脳内で何かが弾けるような感覚が走り僅かにうめき声をあげて頭を抑える。
その間にもファイアーボールは形成され、ウィリルのファイアーボールと比べても遜色ないものが撃ち出された。
そして、ファイアーボールの発動が終わる共に頭の中に言葉が浮かんできた。
「ハクくん!?」
白がうめき声をあげたことに驚いたウィリルは慌てて白に声をかける。
ファイアーボールはもう完璧に発動していたがそれどころではない。
自分の判断ミスでなにか深刻なことが起こったのではないかと焦っていた。
ガンツとリテラも立ち上がり、白の元へと駆け寄ってくる。
そんな中、白は頭から手を離すと、再び首を傾げた。
「ハクくん!大丈夫!?」
「は、はい。大丈夫です、でもこれは...」
白の脳内に浮かんだ言葉、それはまるで魔法の詠唱呪文のようで、そして白にはそれが何故か懐かしく感じていた。
白は頭を上げて正面を見ると、右腕をあげ、顔の前で手のひらを上に向ける。
「ハクくん?」
そんな白の行動にウィリルが怪訝そうな声を上げるが、白はそれに答えず、脳内に浮かんだ言葉を口にした。
「現し世にありし火の理よ、我が言の葉によりて形を成し、舞い踊る鳥となれ《火之鳥》」
白が脳内に浮かんだ言葉を言い切った直後、白の手のひらから火が噴き出し、その火は鳥の形へと変じた。
それを見たウィリルたち三人は驚きで固まってしまう。
そして、火で作られた鳥はまるで生きているかのように羽ばたいて白の手から飛び立ち、まっすぐに進んでいく。
そして、呆然とした様子のウィリル、ガンツ、ルテラが見つめる中、まるで本物の鳥かのように空を舞い飛び、火の鳥は霧散する。
火の鳥が消えた後もしばし呆然としていたウィリルたちだったが、真っ先にウィリルが正気に戻り、口をパクパクと動かした。
「な、な、な、なななな何よ今の魔法!あんな魔法見たことも聞いたこともない!」
そう叫びながらウィリルは白に詰め寄る。
まあそんなウィリルの反応も無理はないだろう。
白が今使った魔法《火之鳥》はウィリルが、いや、そもそもこの世界の誰も知らない魔法なのだから。
「えっと、僕自身もよくわからないんですけど、三回目のファイアーボールのあと、頭の中で何かが弾けるような感覚がして、この詠唱が頭の中に浮かんできたんです」
その言葉にウィリルたち三人は信じられないという顔をする。
当然だろう、今現在存在している魔法は全て、ずっと昔から存在している魔法であり、使い手がいなくなって廃れていた魔法を再び使えるようにした人はいるが、本当に新しい魔法を使うなど、今の時代の大賢者と呼ばれるような人でもできない芸当である。
だが、いつまでも惚けているわけにもいかず、ウィリルは白にもう一度《火之鳥》を見せてもらうことにした。
「ねえ、ハクくん。今使った魔法、えーっとヒノトリだっけ?もう一度見せてもらえない?」
「あ、はい。分かりました」
ウィリルのお願いを聞き入れ、白は再び火之鳥の詠唱を始める。
「現し世にありし火の理よ、我が言の葉によりて形を成し、舞い踊る鳥となれ《火之鳥》」
白の詠唱が完了すると、再び白の手から火が噴き出し、火は鳥の形──火之鳥へと変じた。
そして白の手から羽ばたいて飛び立ち、空を優雅に舞い飛び、やがて霧散する。
それを見て、詠唱を覚えたウィリルも火之鳥の詠唱を試した。
「現し世にありし火の理よ、我が言の葉によりて形を成し、舞い踊る鳥となれ《火之鳥》」
だが詠唱の途中、ウィリルは普段なら感じ取れる魔力の力を感じられず、詠唱が完成しても何も起きない。
「あ、あれ?詠唱は間違ってないはずなのに」
ウィリルはそれから何度か詠唱を試してみたが、全く発動する気配はない。
なぜ自分に使えないのかが全くわからないウィリルだが、とりあえず火属性に適性のあるガンツにも試させることにした。
「ガンツ、あんたもやってみなさい。これだけきいてるんだし、詠唱は覚えたでしょ?」
「ああ、バッチリだぜ」
ガンツはそう言って手を天高く掲げると、火之鳥の詠唱を始める。
「現し世にありし火の理よ、我が言の葉によりて形を成し、舞い踊る鳥となれ《火之鳥》!」
だが、ウィリル同様ガンツが唱え終わっても何も起こらない。
それを見たリテラも試しにと詠唱するが、やはり何も起こらない。
にもかかわらず、白がもう一度唱えると当然のように火之鳥は発動している。
「うーん、理由は分からないけど、ハクくんのこの魔法はハクくんしか使えないみたいね」
「みたいですね」
その後も何度も試した結果、これは白だけが使える言うなれば固有魔法なのだろうということに落ち着いた。
「しかしあれだな、初級の火魔法《ファイアーボール》を使えるようになったら《火之鳥》が使えるようになったんだろ?なら他の初級魔法を習得したらまた別の新しい魔法を使えるようになったりしてな」
ガンツがそう冗談めかして言った言葉を聞いたウィリルの瞳が妖しく光った(ように見えた)。
「面白そうだね、それ。試してみよう、ハクくん!」
「は、はい!」
そうして、この日、白は既存の初級魔法を三種類──風魔法《ウインドアロー》、雷魔法《サンダーショット》、回復魔法《ヒール》を、そして新魔法?を三種類──風魔法《鎌鼬》、雷魔法《雷身》、回復魔法《癒しのしらべ》を習得した。
いやはやいやはや、新たな魔法(新しく覚えた既存の魔法)に加えて新たな魔法?(頭に浮かんだ魔法)を使えるようになった白君
実際どっちの魔法の方が性能いいんでしょうね?
次回、六話は白君初めての依頼!
白君は無事に依頼をやり遂げることが出来るのでしょうか?
乞うご期待!
あ、そういえば、私現在書いたものをそんな溜め込まずにポンポン投げてるわけなのですよ!
でも、やっぱりすぐ投げるんじゃなくて溜め込んで安定更新した方がいいのかなーってふと思ったのですよ!
この先、投稿速度がどうなるかは分かりませんけど、もしかしたら投稿記念の更新祭りって感じでもう少ししたら書いても投げずに溜め込むかも?
ま、先の更新スタイルがどうなるかは分かりませんがとりあえずまた次回お会いしましょう!