二話【これから】
初日ということで連続3話の投稿!いぇい!
「う......ん...」
どれほど意識を失っていたのだろうか、白は再び意識を取り戻した。
体になにかかけられているように感じ、目を開けて体を起こしてみると、体には布が布団のようにかけられている。
さらに、先程まで頭を置いていたところには、袋を枕のようにしたものが置かれている。
「一体なにが...?」
気を失う前に三人組?の人に助けられたのは覚えている。
だが、当然のことながら気を失ってからのことは分からず、今現在どういう状況なのかがわからないでいた。
「あ、目が覚めたんだね。よかったー」
これからどうするのがいいか考えていると、不意に後ろの方から声をかけられた。
振り返ると、そこには予想通り杖の女性がおり、白を見て笑顔になっている。
「一応傷とかは治療しておいたんだけど、どう?まだ痛んだりする?」
そう言われて、白は初めて自分の怪我が綺麗さっぱり消え、痛みもなくなっていることに気づいた。
あれだけ派手に転んで出来た傷だ、どれだけ気を失っていたのかは分からないがそんな短時間で自然に治るわけがない。
杖をもった女性が治療をしたと言っているので、どんな方法かは分からないが手当をしてくれたのだろう。
白はその場で立ち上がると、杖の女性に頭を下げた。
「さっきは助けてくれてありがとうございます!それと、怪我の手当もありがとうございます!」
「いいよいいよ、こういうのは助け合いでしょ?」
杖を持った女性はそう言って白の頭を軽く撫でた。
そして、頭から手を離すと白の後ろの方に向けて大きく手を振って大きな声を出した。
「おーい、二人ともーこの子が目を覚ましたよー!」
白が振り返ってそっとを見ると、剣の男性と弓の女性が走ってくるのが見える。
「お、さっきの嬢ちゃん目が覚めたんだな」
「無事でなにより」
二人は近くまで来ると笑顔でそう言った。
「さっきは助けてくれてありがとうございます!」
そう言って白は二人に頭を下げ、それから顔をあげて剣を持った男性の方に顔を向ける。
「それと...あの、よく女の子に間違われるんであれなんですけど、僕は男ですよ?」
「「「え!?」」」
白がそう言うと、剣の男性だけではなく、三人ともが驚きの声をあげた。
白が三人それぞれに目を向けると、驚いたような顔をしていたが、白が顔を向けてからすぐに気まずそうな顔になる。
「やっぱり...、みんな勘違いしてたんだ...」
白自身、自分が小柄で女の子に間違われるような顔をしているという自覚はある。
あるのだが、やはり三人が三人とも女の子だと思い込んでいたと思うと悲しいものがあった。
どことなく沈んだ雰囲気を漂わせ始めた白に三人は慌て出した。
「いや、すまん!悪気はなかったんだが小柄で可愛らしい顔してるしてっきり嬢ちゃんだと思い込んでてな...」
「それフォローになってないよ!むしろ追い打ちだよガンツ!」
「ごめんね?そこのポンコツガンツはともかく私たちだけでも気づいてあげるべきだった」
「いやポンコツガンツってルテラお前な!」
わーきゃーと騒ぎ始めた三人に乾いた笑みを向けると、白は自嘲気味に呟き始める。
「気にしないで大丈夫ですよ...、もう15歳になったのにこんなに背も低いですし...、声変わりもほとんどしてないし...、女の子みたいで可愛い顔だよねっていつも言われるし...、いつも...?いつもっていつ誰に...?」
自虐に入っていた白は、自分の言葉に違和感を覚えて考え込んだ。
いつも言われると自分は明確に言った、でもそんなことを言われていたことを思い出せない、ならなぜ自分は"いつも言われている"などと言ったのだろうか。
白の自虐が止まり、考え始めたのに気づいた三人は慌てて話題の変更を試み始めた。
「そ、そういえば坊主はなんであんなとこで武器も持たずに一人でゴブリンに襲われてたんだ?見たところ冒険者ってなりには見えないが」
「あ、それは私も気になってたんだよね、ここ最近はゴブリンは森から出てきてないから森に近づかない限りは襲われることはないはずなのにって」
「確かに、冒険者じゃなければ商人にも見えない。他に村人とか町人にしては服が見たことないものだから不思議に思う」
三人から矢継ぎ早に繰り出される質問に白は困ったような顔になる。
記憶がなくて自分の状況は自分でも分からない現状では、説明出来ることが非常に限られていたからだ。
だが、話せることが少ないと言っても話せないことがあるわけでもなく、自分一人で考えていても答えが出るとも思えない。
とりあえず自分についてと今わかってる僅かなことだけでも話そうと白は話し始めた。
「意識を失ってて気付いたら森の前にいて、それより前の記憶はすっぱり忘れてて自分の名前とか以外は分からないってか...」
白が話が終えた時、いつの間にかか分からないが四人はその場に座り込んでおり、ガンツは白の話をそう簡潔にまとめた。
「えっと...そうですね。ごめんなさ...」
「いや、謝る必要はねえ。一番困惑してるのはお前だろうしな」
白が謝ろうとするのをガンツは手を突き出して遮り、三人は顔を見合わせた。
「ホシガミ・ハクか...そんな名前聞いたこともないな、お前らはどうだ?」
「私もないわね、ホシガミって言うのが家名っぽいけどそんな家名聞いたこともないもの」
「私もない、それにこの子が着てるこの服。こんな不思議な材質で出来た服はみたことがない」
そう言って三人は再び顔を見合わせて首をひねる。
「んー...、そうだ!」
ガンツはいきなりそう叫ぶと勢いよく立ち上がった。
その様子に杖の女性は怪訝そうな顔で問いかける。
「そうだ!ってガンツ、なにか分かったの?」
「いや、全くわからん!」
ドヤ顔で言ったガンツのその返答に杖の女性はずっこけるような動きをする。
「ガンツ、あんたね...」
「まあ落ち着けってウィリル、俺は何も考えなしにそう言ったわけじゃねえって」
呆れたようにウィリルが言うのを遮ってガンツは言った。
「とりあえず俺たちがここで考えてても答えが出る保証はねえ、だから一度ギルドに戻る。ギルドならいろんな情報が集まるだろうし、この坊主の気持ち次第ではこの坊主に冒険者にならせるのもありだと思う」
「おお、ポンコツガンツにしてはまともな意見」
ガンツの案にルテラは驚いたような顔をしている。
「確かにそれがいいかもね、ポンコツガンツの案ってのがちょっとアレだけど案自体は凄くまともだし」
ウィリルはそう言って立ち上がると、白の方に顔を向けた。
「えっと...ハク...くんでいいのよね?私たちは今そこのガンツが言った感じで動こうと思うんだけど、ハクくんもそれでいい?」
ウィリルのその言葉に少し困惑して白は口を開く。
「僕はとてもありがたいというかむしろお願いしたいって感じですけど...いいんですか?」
「大丈夫、むしろここでじゃあさよならってする方が寝覚めが悪い。だから気にしなくていい」
白の疑問に、いつの間にか立ち上がっていたルテラはそう言うと白に手を差し出す。
「えっと...じゃあお願いします」
白はそう言って頭を下げるとルテラの手を掴む。
ルテラは白の手を引いて立たせると少し驚いたような顔をした。
「えっと、なにか?」
「気にしてることなのだろうけど、見た目よりも軽くて驚いた。きちんとご飯を食べてたのか少し心配になる」
白の疑問にルテラは正直に答えると、ウィリルとガンツに目を向けた。
「じゃあ、改めて私はウィリル、魔術師で、一応このパーティーのリーダーよ。よろしくね」
「俺はガンツ、見ての通りの剣士だ。よろしくな」
「私はルテラ、弓士。よろしく」
三人はそれぞれ白に対して簡単な自己紹介をする。
「えっと、星神 白です。よろしくお願いします」
白はそう言って三人にお辞儀をし、それから四人は白以外の三人がそこから来たというトータス街へ向かって歩き出した。
1話ごとの文章量も少なめで更に亀執筆なので次の話の更新日は定かではありません。
次回、主人公たちは街へとたどり着けるのか
ではでは次回の更新でお会いしましょう