四話【到着、五大国クリネイト】
皆々様のお陰でPVが1500、ユニークが500を超えました!
拙作ではありますが、読んでいただきまことにありがとうございます!
まだまだ拙い文章ではありますが、よければこれからも読んで行っていただけたら嬉しいです。
しっかりと倒れていた二人──ライルとアンガを回収して馬車に積み、白とヒイナ、ルリネは馬車に揺られながらクリネイトの街へと向かっていた。
馬車の中では白はヒイナとルリネに請われてクリムゾンドラゴン討伐の時の事を話しており、二人は目をキラキラと輝かせながら白の話を聞き、時折白に質問を投げかけている。
ちなみに、当然のことではあるが白がほぼ一人でクリムゾンドラゴンに致命傷を与えたことなどは当然ながら話してはいない。
白自身《神鳴》や《白狐化》は少々規格外な自覚はあるのだ。
まあそんな《白狐化》を平然と移動手段に使ったりもしているのではあるが。
「じゃあじゃあ、その手の防具ってクリムゾンドラゴンのものなんですか?」
「うん、そうだよ。それまでお世話になった先輩の冒険者さんたちがもっといい防具をつけろって街を出る時に餞別でくれたんだよ」
ルリネの質問に答えた白は、《アイテムボックス》からクリムゾンドラゴンの素材──鱗や爪を取り出して二人に見せた。
「な、なにもないところからものが出てきました!?それにこれがそのクリムゾンドラゴンの素材なんですか?」
「ん?ああ、そうか《アイテムボックス》自体が珍しい魔法なんだっけ」
クリムゾンドラゴンよりも《アイテムボックス》により虚空からものを取り出したことに驚いたヒイナに、白は《アイテムボックス》、というよりそもそもの空間属性が希少な属性であることを思い出す。
「これは空間属性の《アイテムボックス》って魔法でね、別空間にこのクリムゾンドラゴンの素材とか、色々なものをしまっておけるんだよ」
「「空間属性!?」」
やはり空間属性は珍しいためか二人は揃って驚きの表情を見せている。
「そういえば空から何かを落とす魔法を使ってましたし、お兄さんってすごい魔術師さんなんですね」
「空から何かを落とす...?やっぱりAランクともなると凄い魔法が使えるんですね」
二人はそう感心したように呟くと、尊敬の眼差しを白に向ける。
ちなみに、一般的なAランクの魔術師と比べても白はかなりの規格外なのだが、それは知らなくてもいいだろう。
世の中には知らない方が幸せなこともあるのだ、主に他のAランクの冒険者にとって。
そんな馬車の中での一時の語らいをしているうちに時間は過ぎ、一行はクリネイトの街へと到着する。
ちなみに、意識を失っていたライルとアンガだが、いつの間にか睡眠に移行していたようで、道中で目を覚ますことはついぞ無かった。
白たちは特に問題もなくスムーズに検問をパスし、クリネイトの街へと入る。
さて、このクリネイトの街だが、実はこの街はクリネイトという国の首都でもある。
つまり、クリネイトという国の名前がそのまま街の名前になっているのだ。
ちなみに、トータスの街は別にトータスという国の首都というわけではない。
この世界には五つの大国があるのだが、トータスの街はその中のどの国にも含まれていない独立都市なのだ。
そんな地図の話はさておき、まずは白たちはクリネイトの街の冒険者ギルドへと向かう。
ルリネと男二人はヒイナの護衛依頼を受けおり、その報告を行うためだ。
ちなみに、馬車の中で白が聞いた話だがルリネとヒイナは幼なじみであり、ルリネは両親が既に亡くなっておりヒイナの家でお世話になっているそうだ。
ルリネが冒険者になったのはこの世界の冒険者たちの英雄譚を読んで英雄に憧れたかららしい。
まあそんなことはともかく、まずはルリネたちの依頼報告を行うのが先だ。
一行は馬車に揺られながらクリネイトの街の冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドクリネイト本部、それがクリネイトの街の冒険者ギルドの正式名称だ。
名前の通りこの街のギルドが冒険者ギルドの本部であり、冒険者の発祥の地とも言われている。
そんなクリネイトの街の冒険者ギルドだが、やはり流石は本部というべきか、トータスの街の冒険者ギルドよりも大きく立派な建物だ。
冒険者ギルドに着いた白たちは馬車から降り、冒険者ギルドの中へと入っていく。
ちなみに、いまだに眠りこけていたライルとアンガは冒険者ギルドに向かう途中で叩き起されていた。
冒険者ギルドに入った白たちは真っ直ぐに受付へと進んでいく。
途中、見慣れぬ白に視線を向ける冒険者や、重傷を負ったはずなのに怪我がなくピンピンしていることに首を傾げるライルとアンガがいたが、特に気にせずに受付へと向かった。
受付についた白たちは依頼を受けていたルリネとライル、アンガが依頼完了報告をする。
依頼完了の処理を行う受付嬢は、そこでルリネたちと共にいる白に気付き、不思議そうな表情を浮かべた。
「あの、ライルさん、アンガさん、こちらの方は?」
受付嬢はそうライルとアンガに問いかける。
ちなみに、ライルとアンガはCランク冒険者、つまりルリネより上位の冒険者であり、今回の護衛依頼の責任者でもあった。
そのために受付嬢はこの二人に問いかけたのであり、別にルリネのことを軽んじていたわけではない。
「い、いやそれがな、俺たちもついさっき事情を知ったぱっかで...」
「盗賊に襲われたのを助けてくれたそうなのですが、その時には私とライルは盗賊にやられて意識を失っており、その時のことが良く分からないのですよ」
だが、二人はついさっきまで意識を失い眠りこけており、白についてはろくに知らない。
二人が把握しているのは、盗賊に襲われて自分たちがやられて危機に陥っていたところを白が助けてくれ、自分たちの怪我を治療してくれたということだけだ。
「ではルリネさんはその時は?」
ライルとアンガからはろくな説明を聞けなかった受付嬢は今度はルリネに問いかける。
「えっとですね、お兄さんは・・・」
聞かれたルリネは盗賊たちに襲われてから白が助けてくれるまでの出来事を掻い摘んで説明した。
途中、十数人の盗賊団を一人で無力化したというところで受付嬢は怪訝そうな顔をしていたが、ひとまずはルリネの話を全て聞き、それから受付嬢は白を見る。
「えっと...今のルリネさんの話は本当ですか?十数人の盗賊団をお一人で無力化されたりしたというのは」
若干訝しげな様子で受付嬢は白に問いかける。
まあそれも無理はないだろう、白は見た目からしてさほど強そうなわけではなく、またAランクとはいえ新人でそこまで名前が知られている訳では無いのだから。
「ええ、まあ今のルリネちゃんの話は全部本当ですよ」
白はそう言って冒険者カードを取り出し、受付嬢に提示する。
「なっ!?」
白が提示した冒険者カードを見た受付嬢は驚愕の表情で一瞬固まってしまう。
だが、流石は受付嬢と言ったところか、比較的早く正気に戻り、改めて白の冒険者カードを確認する。
「冒険者ランクA...名前ホシガミ ハク...ってハク!?」
名前を確認した受付嬢は再び声を上げて固まってしまう。
その様子に首を傾げる白だったが、白は知らなかった。
クリムゾンドラゴン戦で大活躍し、Aランクへと昇格した白は一般の冒険者の間ではともかく、冒険者ギルドの職員の間では超がつくほどの有名人なのだ。
受付嬢は冒険者カードを見、そして白の顔をマジマジと見、そして勢いよく頭を下げる。
「す、す、すみませんでした!!〈龍滅姫〉のハク様とは知らずとんだご無礼を!!」
「龍滅姫?」『龍滅姫!?』
突然の受付嬢の態度の変化に驚いた白だったが、それよりも耳慣れぬ龍滅姫という単語に首を傾げる。
そして、白以外で冒険者ギルドにおり、受付嬢の言葉が聞こえた人は龍滅姫という不穏な単語に驚愕の声を上げた。
これも白は知る由はないことだが、クリムゾンドラゴン戦で大活躍した白はドラゴンをほぼ単独で討伐するほどの実力、そしてその女の子みたいな容姿(実際にトータスの街の冒険者は白のことを女の子と思っている人が少なからずいた)も相まって龍滅姫という二つ名が付いていた。
だが、トータスの街ではその名で白を呼ぶ人がいなかったこともあり、白はそんな二つ名を付けられているなど夢にも思っていない。
「え?あれ?ハク様といえば〈龍滅姫〉のハク様ですよね?」
首を傾げる白にちょっと混乱しながら受付嬢は問いかける。
だが、知っての通り白はそんな二つ名がついていることを知らない。
「あの...その〈龍滅姫〉ってなんですか?」
「えっと、ハク様はトータスの街でのクリムゾンドラゴン戦に参加されていたんですよね?」
「はい、あの時はトータスの街にいましたし普通に参加してましたけど」
「そのクリムゾンドラゴン戦の時のハク様の大活躍っぷり、そしてその可愛らしい容姿からトータスの街では〈龍滅姫〉の二つ名が付けられた、と聞いたのですが」
受付嬢のその言葉に白は一瞬固まった。
クリムゾンドラゴン戦での大活躍はまだいい、あれだけの冒険者の前でやったのだ、それはまあ仕方ないだろう。
問題は可愛らしい容姿の方だ。
確かに白は女の子に間違われやすい、ルリネにも最初は女の子と間違われてお姉さんと呼ばれていた。
客観的に見たら多少可愛らしい容姿なのかもしれないが、だからといって姫はないだろう。
だが、その文句を仮に受付嬢に言ってもなにも変わらない。
白は小さくため息をつくと、どうにか気持ちを切り替えて口を開く。
「まあ...確かにクリムゾンドラゴン戦では頑張りましたけど、〈龍滅姫〉なんて呼び名は初めて聞きましたよ...僕男なのに姫なんですか」
だがやはり完全に気持ちを切り替えることは出来なかったようだ。
白は受付嬢に対して愚痴をこぼす。
受付嬢は「え!?男なの!?」という表情を一瞬浮かべたが、どうにか声に出すこともなく、幸いにも表情の変化も白に気づかれることはなかった。
「ま、まあ二つ名のことはともかくですね、先程は本当に失礼をいたしました」
受付嬢はどうにか話題を変えようとして白にそう言って再び頭を下げる。
「いえ、大丈夫ですよ。ぱっと見ただの子供な僕が盗賊団を倒したと言っても信じられないでしょうし」
だが、どうにか受付嬢の狙いは成功したようだ、白は顔をあげて受付嬢にそう答えた。
「それで、つかぬ事をお聞きしますが、その盗賊団はどうされたのでしょうか?」
「「「あ!!」」」
受付嬢の言葉に、白、ルリネ、ヒイナは揃って声を上げる。
そう、三人は倒した盗賊団のことをすっかりと忘れていたのた。
恐らく彼らはもうどこかに逃げてしまっているだろう。
「えっと...すっかり存在を忘れててその場に放置しちゃったので...多分もう逃げてると思います」
なんとも間抜けなミスに恥ずかしく思いながら白がそう言うと、一瞬受付嬢は惚けたような顔をしたが、特に追及はしなかった。
「では、今回は盗賊に関する報酬はないということになりますね」
受付嬢はルリネ、ライル、アンガにそう告げる。
ルリネはちょっと残念そうな顔をしたが、自分のミスなのでしょうがない、ライルとアンガにいたっては自分たちは特に何もしていないのだ。
三人は受付嬢の言葉に頷きを返した。
「では、今回の依頼の報酬を・・・」
それからの事務的な処理は問題なく終わり、ルリネたち三人は報酬を受け取る。
そして、白たちは冒険者ギルドでの用事が終わったので一度冒険者ギルドから出た。
先ほどの白の二つ名の件もあり、わりと周囲からの注目を集めていたのだ。
冒険者ギルドから出た白たちは一度ヒイナの馬車へと戻った。