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白の賢者 ~転生先は魔法の世界~  作者: 春野霞
第一章 
1/44

1 気がついたら赤ちゃんだった

  ん、ふあっ・・目が覚めたのになんだかとても眠たくって、うとうとしたまま(今何時なんだろう?)無意識に腕時計を見ようとして左手を持ち上げたら、ぎょっとして目が覚めた・・目に入ったのは小さな赤ちゃんの手。


「ええっ?なにこれ」


 まるで生まれたばかりのような少しピンク色の可愛らしい手のひらがそこにあった。にぎにぎしてみれば見えてる手もそれに合わせて動いてる。何が起きたのか解からず、慌てて起き上がろうとしたけど体が持ち上がらない。小さな手の手首から上は柔らかそうな生地の布で出来た服らしきもので覆われている。鏡を見たわけじゃないけど、今現在あたしがが赤ん坊なのは間違いなさそうなの。


 えーとー???。頭の中がはてなマークで一杯に。


 落ち着け、落ち着け、あたし。


 この状況になっている原因としては・・

 1. 夢を見ている?。うん、もう一度目を閉じて目が覚めるのを待って・・・ 駄目だ、眠れない。


 2. 夢ではない?。そんな馬鹿な、脳移植?大きさ違うでしょ、脳だって臓器なんだから大人の脳が赤ちゃんに入る訳無い。却下。


 2.1 2.から派生してラノベ風転生?

  うーん、たいてい神様がごめん間違った、とかでチートもらってってパターンのはずだけど、神様に会った記憶無いから却下。


 2.2 2.から派生した憑依?生霊となって赤ちゃんに憑依・・って、ないない。


 とりあえず、何がどうなって居るのかが判らないってことが判った。

 困った、大学にレポート出さないと単位落としちゃうんだよね、あの教授試験だけじゃ駄目なんだ。


 ところで此処は何処なのかしらねぇ。天井を見上げたけれど、天井は・・そんな物無かった、あまりはっきりと見えないのはまだ目の機能がきちんと働いていないのかもしれない。ぼんやりと見えるのは屋根らしい丸太の列。ログハウスっぽい。リゾート地? 別荘? 誰の? そんなの持ってる人に心当たりないしなあ。頭を巡らせて自分の周りをみると柵のような棒が目に入った。ベビーベッド? 赤ちゃんだからそうなのかも。割と雑な作りの木らしき棒。きちんと製材されて無くて、枝の付け根とかが残っていて少しねじくれている。


 あー、手作りなのかも。


 じっと見ていると、ふと頭に「木」って言葉が浮かんでくる。見りゃ判るわよそんなの。いや、プラスチックで出来た木の模造品って可能性も有るかな。もう一度念入りに見てみたわ。「木。樹木の一部」、判ったってば。


 そういや、誰も居ないね。赤ちゃんを放置するはずも無いんだけど・・周りを見ても人影は無い。

「あの、誰か居ますか?」そう話したはずが、声がまともに出なくて、「あうああう」、ってなってしまったの。


 がたがたと音が聞こえて、扉の無い入り口から女の人が入ってきたみたい。


「※☆□△■※★※△□」あたしの顔を覗き込んでくる


 やべ、外国語だよ。少なくとも日本語英語中国語じゃ無いわ。第二外国語は中国語取ったけど、こんな言葉じゃなかった。


 女の人は「△■※☆□△■※□△★※△□」と優しそうにあたしに話しかけて、両脇に手を入れ持ち上げ抱っこの体勢に。


 思わず顔をまじまじと見てしまった。片手で抱っこしたまま、清潔そうな綿っぽいワンピースの胸をくつろげて、乳房を出すとあたしの顔を近づけて口に含ませる。


 ああ、この人が母親なんだ。たぶん間違いない・・と思った。少し疑問の余地があるのは、見た目美少女、年の頃にして15歳か16歳にしか見えないのよ。元の自分より年下の母親ってどうよ、って感じで少し焦ってしまったあたし。しかもこの子、見事な金髪、緑の瞳、顔も整ってて、動かなかったらどこかの天才人形氏の作品かって位に可愛らしくて、この土地が早熟なのか、たまたまの個人差なのか、母乳出すから膨らんでいるからなのかもしれないけど、元の自分より胸がでか・・。

 いいのよ、どうせあたしなんてAサイズだったから、みんなより小さかったから・・・だけど少しショック。


 でも、お腹が空いていたのも事実。少し吸うと口の中で母乳がしゅわーって出てきて、ごくごく飲んでしまった。飲みながら、顔を見ると慈しむ様な優しい視線にどぎまぎしてしまうあたし。

「人、雌」また頭に言葉が浮かんでくる。何だろうね、これ。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「メアリーちゃんどうしたの?」小さな声が聞こえた気がして、母親であるアリスは隣の寝室に寝かせてあるベッドのところへ行って見た。

 すやすやと寝ていたはずの赤ちゃんは目を開けている。

「おはよう、おなか空いたのかな?」そう言いながら、赤ちゃんを抱き上げておっぱいをあげる。

 なんだか戸惑ったように顔を見上げてくる赤ちゃんに少し違和感を覚えたけど、直ぐにごくごくと飲み始めるのを見て、気のせいかと安心した。

 初めての子供なので、判らないことだらけ。ピーピー泣いてばかりの小さな赤ちゃんに途方に暮れたりもしたけど、ちゃんとお乳も飲んでくれてるし・・と、胸に吸い付いている頭をそっと撫ぜて見たりしちゃう。

 「沢山飲んでね」

 まだ力のない小さな体を腕に乗せるようにして支えながらお乳を飲むのを見守って居たけど、しばらくすると赤ちゃんは口に乳首を含んだまま寝てしまった。抱きなおして背中をさするとケプッと可愛い声を立てる。眠ってしまった子をベッドへそっと置き、軽い布団を掛け直してもう一度頭をそっと撫ぜて。呟く様に話しかける。

「お利巧さんね、ゆっくりお休みなさい」


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 

 何時間後なのか判らないけど、また目が覚めたあたしは、覚えている記憶を探ってみたわ。そしてこんな赤ちゃんになる前の記憶が全て残っていることが判ったの。

 もともとあたしは22歳の大学生だった。生まれてから22歳になるまでの記憶が全て夢で無ければの話だけどね。気づいたら赤ちゃんになってるんだから、たぶん死んで転生したんだろうと思う。もっとも前世の記憶が蘇ったのは生まれてすぐでは無いみたい。何日後なのか、何週間後なのか、その辺はあたしには判らない。


 何日間か夢なら覚めて・・と願っても見たけど、目が覚めたらやっぱり赤ん坊だった。


 いくら悩んで見ても、状況は変わらない。とりあえずあたしは良い赤ん坊・・になろうと努力することにしたわ。

 まずは、泣かない事。おなかへっては泣き、おしっこしても泣き、赤ん坊は泣くのが仕事みたいなものだけど、親にとってはいい迷惑。下手をすると寝る暇も無くて疲れ切っちゃうのよね。学生結婚(出来ちゃった婚)した友達が「しんどぉ~」ってぼやいていたもの。

 まあ、こちらは頭の中身は22歳なんだから、そんなんじゃ泣かない。

 ただ、オムツに排泄するのは情けなくって、涙が出そうなんだけどね。


 自分がメアリーって名前なのはなんとなく判った。母親らしき人が抱っこする時とかに呼びかけているから。メアリーって、少なくとも日本人じゃ無いわねえ。姿形も金髪、緑の瞳だし、話せる様になったら大使館とかに一度行かないと行けないかなぁ。日本と国交ある国だといいけど。


 少し言葉も覚えた。おっぱい、ちー(おしっこのことよね)、うんち、だけなんだけど、でも直ぐに覚えるわよ。もともと記憶力はチート級なのだから。そう、あたしは一度記憶したものは忘れないっていう完全記憶能力を持っていたの。本のページを一目見たらいつでも記憶から呼び起こせるっていう。おかげで歴史とか暗記系のテストは毎回満点に近かったわ。減点の理由?そりゃケアレスミスくらい誰でもあるでしょ。小さい頃にはどのくらい記憶できるのかって思って二十巻以上ある百科事典を全部を覚えてみたりした事も有ったんだけどページを捲るのが大変だった。あと、覚えてはいるんだけど、目的に合わせて記憶から探し出すのが大変なのよね。

 

 まだ言葉は出せなくて、「あ-」とか「う-」しか発声できないんだけど、[YES][NO]の代わりすれば良いような気もする。でも、この年齢で大人の言葉を理解できるってのも異常な事かもしれないので、まだやってない。


 ぼちぼちと言葉を覚えるしかなさそう。なにせ赤ん坊なんだから、時間は沢山あるわ。



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