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影使いの街  作者: やぎざ
第五章 初界穿の翼
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初界穿の翼 6

 「凍えるな」

 「機械の身にも染みるか?」

 「ああ」


 鬼道の下肢を横目に来灯丸が言う。

 一帯は霜の降りる瓦礫。元々は娯楽の並ぶ商業区とだけあって、復興が遅れているようだ。空には新月が浮かび上がり、リング状になったオーロラがある。


 「アイツは……!」


 夜闇に浮かび上がるのはしなやかな体躯の獣。来灯丸が鉄塊を握り、素早く駆け出してぶった切る。


 「雷刀牙ッ!」


 両断されたのは巨大な狐に似た異形だ。7本の蛇の尾を生やす下半身がうごめいていたが、数秒もすればくてんと生気を失う。


 「骸の回収は?」


 鬼道が問いかけると来灯丸は頼んだと言う。鉄塊を振り回し、どろりとした鮮血を振り払いながらも、来灯丸はマフラー越しに白い息を吐きながら呟く。


 「こんな雑魚が、月影でもなく、人でもない反応──」

 「いや、骸は回収できた。紛れもなく月影──瞬間的に突然発生したそれだろう」

 「それじゃあ……」


 来灯丸が鼻の下に手の甲を当てながら唸る。


 「なんだ? キョロキョロとして」

 「あいつは?」

 「あいつ?」


 周囲を見渡すが、鬼道と来灯丸の他に人影は無かった。地吹雪が遠方で吹き上がり見ているだけで凍えそうな景色が闇でうごめいている。


 「足跡」


 ジグザグに並ぶ円柱形。それらを二人は辿って行く。

 鬼道が携帯用の水槽に骸を入れ終え、荷物袋にそれを保管した時にはある一帯についていた。


 「噴水?」

 「お前こんなところで何を──」


 レンガ敷の一帯。その中心で、尚も直立する塔。それを眺めて、少女は沈黙していた。

 だが、立ち尽くしていた訳ではない。防寒用のローブのフードを拭い、つややかな短い黒髪を露わにする。跳ねっけを北風で揺らしながらも、その眼には高揚の色が浮かんでいた。


 鬼道と来灯丸も硬直していた。それは細い塔の上で鎮座する、巨大な翼が月の逆光を浴びて浮かび上がっていたからだ。


 「ここが境界──なのかな」


 自信なさげにそういう黒髪の少女。どうでも良いと言った声色が吹雪に流れていく。


 「──ッッッ!」


 影が黒い羽を巻き上げて展開する。幾重にも折りたたまれた黒い翼が、白色の粒子を巻き上げて敵意をむき出しにしていた。


 「ッ! ヤバイぞコイツ」

 「おい逃げるぞッ!」


 来灯丸と鬼道が、その圧に身震いを抑えきれず駆け出していた中、少女はただその巨影を眺めて──同時に純白の影を展開し、一本の剣の如く形成させる。


 「やろうか……スイレンッ!!」


 少女は──月詠サラクは防寒コートを脱ぎ捨て、冬空に跳躍した。


 「……サラクゥゥゥーーーーッッ!!!」



 To be continued

※別にコレ読んでおかなくちゃ話について行けなくなるよ! 的な補足でも何でもないメモ※


晶叢シナツ

男    :19~23歳

身長   :180cm

髪色など :銀髪

血液型  :O型 RH-

出身   :不明

誕生日  :12月31日

趣味   :誰かと語らうこと

大切なもの:自由な時間

嫌いなもの:束縛

欲しいもの:理解者


生前の記憶のようなものを持ち、人と月影に輪廻の関係があると確信した人間。

その真意は確かではないが、その束縛から開放されるため、人でも月影でもない存在を望み影に目覚めた。

結果はただ現世に停滞するだけの存在。殺意の無い月影とでも呼べるし、人の感性を持ち合わさず虚ろな人間とも呼べる。

今回の「プラン」を企てた主犯であり、ネストやその他の武力に『四海臨空のゼフトクリューゲル』の覚醒を妨害されないよう、桃城レンスケを使って監視を行い、フォビア=トライシスを使い注意を外に惹きつけるよう促していた。

どっちつかずな存在である自分に嫌気が指し、自らの開放を望み自分を殺すのでなく、跡形もなく消滅させる存在を望んだ。

その存在を引きつけるために四海臨空の覚醒を企てた。

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