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影使いの街  作者: やぎざ
第三章 業と力
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業と力 4

 そこは回送の鉄道。昼下がりということもあるのに、灯りも何もついていない車内はじっとりとした暗闇が降りている。

 そして、その闇の中に身を潜める黒い外套の集団。年齢も性別もバラつきのある集団の一人が口を開く。


 「補給物資だ。先月の月影の骸から抽出したナイトセルのカートリッジ。対影力用弾丸。それと近接戦闘用の超振動刀剣の研磨剤だ。それでは戦況報告に移るぞ」


 緘黙な風貌の男は、小型コンテナの中から床に投げ出すように武具を並べる。銃剣、増幅装置らしき物体。その中で疎らに出された手のひらサイズの長方形の金属からは、黒紫の粒子が漏れ出ている。


 「まーた適当な仕事をしやがって」

 「しょうがないだろ。今月に入って糸吊ブラックラスプの事件件数は7件。全く登録外の新しい反応が現れては、その力を行使して反社会的活動に精を出す」

 「反社会的……か。公に顔を上げることも出来ない自分みたいな立場の人間がそういった人間を処分するというこの流れは、同族嫌悪か……それとも」

 「何時にもなく軽口が多いな。──来灯丸」


 緘黙な風貌の男は、皮肉めいたことを漏らす人物に言いかける。

 腕組みをして脚を組むその人物はやや小柄だ。やや中性的なシルエットと顔立ちをしながらも、声質はやや高い。女性。十代だ。


 「糸吊ブラックラスプ。観測班が最近、大量に出現した登録外影使いの判断した識別コードだ。だが、性状や特徴はどれもばらつきが多いばかりか全く違う。レンサブリッジの様に月影めいたそれを出す者も居れば、空から槍状の影を雨のように無差別的に降らして街に壊滅的な被害を出した影使いも居る。それら全てのコードが……」

 「糸吊ブラックラスプ……か。まあいいや、自分の仕事はそれじゃあない。第7小隊の無能どもには、『四海臨空の骸』……半島の管理を任せきれないわけで、自分にお呼びがかかったってわけだ」

 「仕事に精が出るな。真面目になったもんだ、家出少女も」

 「からかうつもりか? 開発班。単純に、偶々『内包影力』に覚醒めただけで、結果も出せてない勘違い無能野郎が大嫌いなだけだ。ノルマをこなすのは影の力が全てじゃない。あのアホどもを超えれることでそれを証明してみせる」


 揺れる淡い金色の細い髪。だが、その隙間から少女の眼光は鋭く光を帯びていた。

 黒紫の粒子を漏らす金属片を手に取り、自分の横に倒して置いてある金属塊に打ち付けるように取り付けた。


 「しかし、あの無能の桃城と、それとなんだ? 偶々救われただけであの女に同行するオッサンみたいな男。あの二人と、戦力になるかならないか微妙な連中だけで、糸吊ブラックラスプの一人を仕留めることが出来たのが、不思議で仕方ないな」

 「銀咲の始末ともいい、報告書には陰りが見える。余裕があれば、それらに対しての調査を頼みたい」


 緘黙な男が顎に指を添えて少女に言う。

 鉄塊。よく見たら縦長の得物のそれに、カートリッジを取り付けリロードを終えた金髪の中性的な少女──来灯丸は言う。


 「できたらな」


遅れて申し訳ないです

これからも不定期更新が続きますが、読んでいただけると幸いです

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