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影使いの街  作者: やぎざ
第二章 人は皆消すべきなんだ
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人は皆消すべきなんだ 15

 深夜の港。停泊する巨大な黒船は、そのなめらかな船体に月光を反射させている。

 断崖の内側十数メートルの位置に鎮座する高さ2メートル、横幅4メートル、縦幅2メートルの黒ずんだ青色のコンテナ。その横に立つ人物は桃城レンカだった。黒の外套が潮風に揺られてひらめく。

 対して、船の方からやってくるものも黒の外套を纏った女性だ。桃城よりも少し高い身長をした人物で、女性だ。黒のストッキングを纏わせた長い足をタイトスカートから伸ばし、赤茶色のウェーブのかかった髪を指でいじりながら歩をすすめる。


 「随分と早いですね。先輩」

 「まあな。本部へ降ろしたいものもある。付きあわせて悪かったな」


 いいえ、と漏らす桃城を尻目に、これが例の異端分子か、とその女ネスト員、先輩は言った。


 「ええ、報告にある糸吊ブラックラスプの素体入り保存瓶です」

 「ふぅん。ここじゃもう何件目だ?」

 「”4件目”……ですね。この属性()の登録外影使いは」


 コンテナをバシバシと叩くその先輩と呼ばれる女ネスト員は、一度船の方向を振り返り甲板の方に居る人影に手を振った。すると、数秒後に、船はクレーンの駆動音を夜暗に鳴り響かせだす。

 安全のためということもあり、桃城と先輩は距離を移した。


 月明かりに映し出される浮遊するコンテナ。その奥にある、半島を先輩は眺めながら口を開いた。


 「あそこは、今日も賑やかだな」

 「まあ、そうですね」

 「監視は?」

 「ウチの世話になってるエステライトが形式的には」

 「アイツは信用ならなんな」


 腕組みをして微笑する先輩。普通の人間では分からないが、影使いならわかるこの瘴気と波動。桃城も、その野蛮な影の波をピリピリと肌に感じていた。

 瘴気の源流はその半島だった。桃城もその方向に目をやる。暗い海と空に浮かぶその半島も、暗い影の塊の様にして浮かぶ。


 「今や上層部に居る、頭も血管も硬くなったジジババが沈めた月影がそこから出てきたって話だったな」

 「海から出てきたって話じゃ」

 「そうだっけか」


 唇を内側に巻き込みモゴモゴとさせる先輩は、一つあくびをして答える。

 まもなくコンテナが船体に積まれたのか、クレーンも折りたたまれそれ以上動くことは無くなった。


 「鬼道の奴はどうした?」

 「どうしたも何も、大変ですよ新人育成は」

 「数年前の私もそう言ってたよ」

 「そう……ですね」


 腕組みを解いて、船の方に先輩は歩を進めようとした時だ。小さく笑う桃城は、そのちょっとだけ高い背中に声をかける。


 「先輩」

 「なんだ?」

 「銀咲……『銀咲のハウライト』の対処、どうなりましたか?」

 「お前たちに任せる」


 え、と漏らし硬直する桃城は、問いただそうと再度口を開く。だが、先輩は手の平でそう吐き出そうとする桃城を精してから言う。


 「現時点で、被害が出ているのはネストの下級戦闘員十数人のみだろ? 一般人には被害が出ていないってことから、上層部の判断は死亡した戦闘員は必要経費、銀咲は現状維持ということになっている。あわよくば始末するのが望ましいが、あれの戦闘能力はネスト屈指の機動部隊『δ-12(デルタ・トゥエルヴ)』のそれとカチ合わせても決着が着くかわからん。あのエステライトとコグネもディザストクラス・ファンブルと示した月影だ。下手に刺激して覚醒させるよりかは、穏便にすませるよう努めてくれ」

 「監視、ということになるのですか?」


 まあな、と先輩は片腕を立ててゆらりと左右に腕を振るう。


 「じゃ、頑張れよー。仕事も、勉学も、それと──」

 「私にはそれだけで精一杯です」

 「そうかい、枯れてるねぇ」

 「先輩もでしょう」

 「まあな」


 桃城があくびを堪えながら、甲板の上に手を振る。先輩も片手を上げて桃城の方向にそれを揺らす。

 

 低い駆動音で大気と水面を揺らし、船は水平線の向こうへと小さくなっていく。

 桃城は一つ伸びをして唸るような声を漏らした後、ホットの缶コーヒーを購入しすすりながら寝床へと向かった。


※別にコレ読んでおかなくちゃ話について行けなくなるよ! 的な補足でも何でもないメモ※


鬼道ムサシ

男    :16~18歳

身長   :189cm

髪色など :黒髪オールバック

血液型  :A型

出身   :今は月影の被害で壊滅させられた街の施設

誕生日  :7月7日

趣味   :絵を描くこと、動物図鑑を眺めること

大切なもの:仲間

嫌いなもの:無法者、弱い自分

欲しいもの:強靭なメンタル


過去に桃城レンカに救われた経歴を持つ大男

逞しい身体つきをしており、影力による筋力強化によって白兵戦を得意とする

きっちりとした細かな性格をしているところがあるが、融通が利かないわけではなく案外譲り合いの心がけはある

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