専属メイド
目が覚めると昼になっていた。
俺は、昼まで眠りこけていたらしい。
夢で、1000回クリアしてもボスが金の卵をドロップしなかった。
ボス、許すまじ。
それはそうと、目の前にはメイドさんがいる。
寝ている俺を起こせとの命令だったらしく、夢の中でボスに挑んでた俺をゆすって起こしてくれた。
俺は起きたが寝ぼけ眼で上半身を起こしたら頭と頭がぶつかってしまい、おたふたと今も謝ってくれている。
「ごめんなさい、ごめんなさい。私はなんでもしますから、せめて家族だけは。」
ん、今、何でもするって言ったよね?心の中で俺はゲス顔を浮かべる。
あんな事や、そんな事、あんな事に、そんな事。もちろん、なにもしないのだが、もしできたらと考えてしまって、すぐに気を確かにする。
しかしながらこの子は、何でもさしたくなってしまうような可愛い子なのである。それこそ、口にはしずらいあんなこともしてほしくなってしまう。
栗色をした髪の毛に、少したれた目、胸は大きくて、メイド服がぱっつんぱっつんになっている。おまけにドジっ子メイドときた。
欲情してしまってもおかしくはない。もちろん、エッチなことは命令しない。
しかし、見ているだけで目の滋養になる。ちょくちょく見れたらそれで満足である。
だからといって、なんでもするといわれて、なんにもしないのは男がすたるというものだろう。
寝汗を少しかいてしまったので、着替えを持ってきてもらい、腹が減ったので飯の準備などをしてもらおうと思う。
「じゃあ、替えの服を持ってきてもらえるか?あと、飯はどうしたらいい?」
「は、はい。着替えはすぐにお持ちいたしますね。ご飯は食堂で勇者様なら、無料で最高級のお料理が出まので、そこでお召し上がりになってください。」
口を頑張って回転させて一息で言うメイドさん。
ものすごく保護欲を誘う。なにこの子、かわいい。
「それじゃあ、服を持ってきてくれ。その後、食堂に案内してくれ。それで頭をぶつけた分はなしだ。」
「え、そんなことでいいのですか?ありがとうございます!」
ぱっ、と顔を明るくして返事をするメイドさん。なにこの子、本当にかわいいんですけど。
「それでは、服を持ってきてまいります!」
そういって、張りきった様子で部屋を出るメイドさん。
ドジしなければいいのだが・・・
メイドさんが部屋から出ていったので昨晩とったメモを改めて見返す。
・この世界では、三つの諸族がいるらしく、人間族、獣人族、魔人族にわかれている。その3種類の種族が一つの大陸に押し込められるようになっているから、関わりを断つことができないんだとか。
草原に住む人間族と森の奥に住む獣人族は最初から仲が良く、今でも貿易をおこなっているらしい。逆に魔人族とは仲が悪く、戦争が続いているそうだ。
・この国はファッツ王国である。ファッツ王国は、人間の大陸、その名も人間大陸の中で、最も魔族の大陸に近い国なんだとか。
・現魔王はすでに一回、この国のグラン砦を攻めている。ファッツ王国は魔王軍を打ち破ったが、こちらも被害が大きく容易に攻められないのだとか。そこで、戦力の補充のため古からの儀式である、勇者召喚をした。
・俺たちの身元、衣食住は確保されており、魔王を討伐した後は、余生を謳歌してよい。
・魔王を倒すための訓練の期間は、約3か月。ダンジョンにも潜る予定も含めると半年ほどらしい。
自分のぐっちゃぐちゃの字を眺めながら情報をまとめた。
我ながら情報をまとめるのが下手くそである。しかしこれを見れば、知りたいことは分かるので、良しとする。
情報がまとまって少し気を抜いていると、扉がノックされてメイドさんが入ってくる。
「衣服をもってきました。」
さっきのメイドさんが入ってくる。やっぱりかわいい。栗色の髪の毛を撫でまわしたい。
「ああ、それじゃあそこに置いておいて。そして部屋から出て行ってくれると嬉しいんだけれども。」
「私、何かしましたでしょうか?」
部屋を出るように言われて、自分が何か失敗したのかと、メイドさんが訪ねてくる。
「あ、えっと。そういうわけじゃないんだけど、その着替えるからさ。」
「はわわ。ごめんなさい。すぐに出ます。」
顔を赤くしてすぐに出ていくメイドさん。顔を赤くして本当にかわいい。
「俺が、いいって言ったら入ってきてね。」
外にいるであろうメイドさんに話しかける。
「はーい。わかりました。」
メイドさんの返事も聞けたところで、早速着替え始める。
服の質を見ると、今と遜色がないようだった。着ごごちも悪くない。
中世のヨーロッパなのにおかしいと思ったが、後でメイドさんに尋ねたところ魔法が使われいる高級品なんだとか。
デザインはいかにも冒険者といったデザインだった。大きくてだぼっとしているので、部屋着にも楽でいい。
ちなみに、下着はなかった。
一番交換したいものであったが、なぜかなかった。もう、下着ぐらいどうでもよくなってそのままのものをはいておく。
まさか、メイドさんが忘れたとかじゃないだろうな。
「入ってきていいぞ。」
「はーい。」
そう言ってメイドさんが入ってくる。
「じゃあ、食堂に案内してくれ。」
「わかりました。付いてきてくださいね!」
張りきって、扉を出るメイドさん。それに俺もついていく。
柔らかい、絨毯が足を包む。絨毯は最高である。
なんだか無言は気まずいので話を探す。あ、そういえばこのメイドさんに名前聞いていなかったな。
というわけで、メイドさんに名前を聞く。
「そういえば、名前ってなんていうの?」
「あ、自己紹介がまだでしたね。私はリリィです。一応、あなた様の専属メイドになりました。まだメイドになって間もないんですけど、よろしくお願いしますね。」
な、専属メイドだと。なんと甘美な響き。そういえばあの王様が俺たち一人一人に専属メイドをつけるっていう話だったな。
それよりも、名乗られたら名乗り返すのが礼儀である。専属メイドという響きに惑わされて忘れてしまうところであった。
「そうか。リリィか。俺はアサヒ。アサヒ・ヤクシだ。」
「アサヒ様ですか。それではアサヒ様、もうすぐ食堂になります。」
もうすぐ食堂か。どんな食べ物が出てくるかは分からないが、食べ物は最高級らしので楽しみである。
読んでくださりありがとうございます。林朋昌炎です。
リリィちゃんの口調が難しい。
それよりも、やっと主人公の名前が分かりましたね。