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魔王の息子だけど、恋愛は個々の自由でいいと思う その1

「フォーク……こんな姿になって……」


僕は根本からぽっきりと折れて、二つに分かれたフォークの残骸を手に嘆く。


今日一日はフォークで戦う予定だったのに……。


戦う度に柱を折ってたら、直ぐなくなってしまう。拳で戦ってもいいのだけど、リーチの差はどうしようもない。手っ取り早く(一時的に)成長する方法もない訳ではないが、とにかく疲れるので却下。


「取りに行けばいいんじゃないですか? フォークぐらいキッチンに沢山置いてあるでしょうに」


割れた硝子の破片を片手で弄りながら、従者が呆れたように僕に言った。

う……言われてみれば確かにそうだよね。


「そうだよね……。うーん、次はナイフ&フォークにしようと思うんだけど、どう思う? それともフォーク&スプーン?」


「正直どっちでも大差ないと思うんですけど、あえて言うならスプーンを推します。ええ」


……んん、あえてのスプーン?


何となく候補にあげたスプーン。ナイフの方が強そうだと僕は思うけど、どうしてだろう。

そう聞くと、妙に張り切った顔をして、従者がアイスを食べる時のような仕草をして言った。


あ、これはロクなことを言わない気がする。


「そりゃあ目をくりぬ……ぐぇ! 何なんですか坊ちゃま!」


慌てて僕は、従者の脇腹に回し蹴りを決めた。足が足りなくて腰あたりにダイレクトアタック。 やったね従者! 腰痛に効くよ!


「確かに目玉は鍛えにくいけど! 駄目だから!」


それはやっちゃ駄目なやつだから!

G15禁ならぬG18禁に突入してしまう。どうやら戦った後だからか好戦的になっているようだ。これだから魔族は……。


マゾクはこれをブーメランと呼ぶ)




そんなことを言い合いながら、次第に気分も落ちついてきた僕らがキッチンに向かっていると、突然大理石で出来た床に罅が入った。

拳サイズだった罅が急速に広がっていく。


「……坊ちゃま」


「……言いたいことは何となくわかるよ」


僕は従者の方に生ぬるい笑顔を浮かべておいた。



「なんで普通に出てこれないんですかァァア!!」


言わずもがな、僕の兄姉様達の事である。


折角落ち着いた従者が絶叫すると同時に大理石の床が大破した。破片が勢いよく飛んできたので、幾つか打ち返しておく。


当たったかどうかは砂埃が酷くて判断できない。


「……ほら、反対に考えたらいいんじゃない? わかり易くていいってさ」


四姉様は分かりにくかったし。兄姉様達を探す手間が省けると思えばそう悪いことばかりでもない。きっと。




立ち込める砂煙の中から、天井へと飛び出す塊ーー否、子供の様な体躯をした四兄様。

どうやら四兄様が大理石をぶち破ってきたらしい。

そして、その勢いのまま飛び上がり、天井を蹴って軌道修正し、地面へと鮮やかに着地する。


白くてまろやかな頬。

もみじのように小さな手のひら。


着地した時にきゅきゅと可愛らしい音をたてる靴を履いた、幼い子供ーー






ーーが頭に白いパンツを被っていた。


幼い風貌をした四兄様はぽかんとする僕らを尻目に、その場からとんでもない俊足で消えて行った。


その後ろを追いかける者が一人。


「ガァアアア!! ア"ア"ァァ!!」


我を失った三姉様だった。

あの白パンツ、もしかして三姉様の……?


涎を垂らし、血走った目で四速歩行でブリッジをしながら追いかける三姉様を見て、僕は初めて判子を諦めようと思った。なにあれこわい。



でも。

……それでも!


それでも、僕は諦めたくない! 人間界に行きたい! もの〇け姫のグッズも欲しい!

それと平穏に暮らしたい!


なにか、なにかあるはずだ……。

荒ぶった三姉様から判子をもらう方法が!




「やっぱり……三姉様の怒りを沈めるには、四兄様が被ってたパンツを納めるしか……」


「いきなり何言ってるんですか」



し〇がみさまの怒りを沈める為にはこうするしかないんだ。

パンツはお返しします。どうかその怒りをお収め下さい、南無南無。

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