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魔王の息子だけど、注射の先端が恐ろしい

「ふむふむふーむ、坊! 大分損傷しとるなぁ。珍しいな! なんや兄姉相手に連戦でも決め込んだか!! ガハハハ!!」


酒瓶片手に豪快に笑うのは、医者の六姉様である。なんでも治してくれるが、とにかく雑なことで兄姉間では有名である。

だらし無く羽織られた白衣から褐色の素肌が覗く。小さな下着が申し訳程度に存在するだけで殆ど素肌に白衣だ。目に毒である。


その姿に従者が先程から無言で目を抑えて蹲っている。彼はチェリーボーイなのだ。そっとしておこう。


「それは坊っちゃまもですよね!」


五月蝿いぞ。僕はまだ子供なのだ。チェリーどころか、ただいま桜が咲いたばかりなのである。




どうして僕らが六姉様のところに来ているのか。

それは一時間ほど前に遡る。






四兄様との闘いを終え、暫く話したり、魚を食べたりしていたのだが、突然僕が倒れた。……らしい。記憶がないからよくわからないが四兄様曰くそうらしいのだ。


……うーん、やっぱり連戦の疲れかな。


そして慌てた四兄様が途中で従者を引っかけて、六姉様の医務室まで来たらしい。その図を想像してみたが結構シュールだった。じわじわくる。





……というわけで、僕は今手術台の上に乗せられてるわけだけど。


なにこれ、どうなってるの!?


体全身硬いゴムの様なベルトで手術台に括りつけられている。先程から身体を捩ってみたり跳ねてみたりしているがびくともしない。ハードSMプレイは僕にはまだ早いと思うんだ……。せめてあと五十年は先がいいな。


あははと乾いた笑みを浮かべる僕に、六姉様は先端が、菜箸サイバシの先よりも太い極太注射を持ってきた。


「なははー、ここまで傷ついとったら回復液を直接ぶっこんだ方が早いしな! 堪忍やで! 男の子やろ。簡単に泣くなや、な!!」


ベルトでぐるぐる巻きにされた僕だったが腕の部分だけ不自然に隙間がある。これはまさか。いやそんな。やめ。あ。え。嘘だ。



「あ"っ!! ああああああああああああァッ!!!」


大絶叫する僕を尻目に従者が床を叩いて大爆笑していた。

従者、覚悟しておけ……笑ってられるのも今のうちだ、け……。







「よしよし、殆ど完治したな! 流石坊! 三十分掛からんとは相変わらず巫山戯たァ生命力やな! ほんまほんま。まあ、一姐さんほどやないけどな!」


あの魔族ヒトと比べんのが間違いか! ガハハハ! と笑いながら魂の抜けかけた僕の背中をばしばし遠慮なく叩く六姉様。


「ああ、それと坊。始祖開放シソカイホウもせずに魔力・・・を結構使ったやろ」


「う、うん……」


……う……し、始祖開放、ううーん。聞きたくなかったその言葉。


確かに魔力・・・は双子姉兄様の時や、四兄様の時に使った。だがしかし、本来魔力とはそういう使い方はしない。

始祖開放した上で魔力を行使するのがデフォなのだ。

極一部例外はいることにはいる。例えば四兄様とかは何時でもどこでもバリバリ放電できるのだ。

もしかして : 電気鰻



これらを食べ物に喩えるならば、


冷凍食品(僕)をレンジでチン(始祖開放)した結果、温まる(魔力行使)


うん、うまい喩えが見つからない。でもこんな感じである。

それを無理矢理温めた結果、僕の身体に無理が生じたのだ。では、何故そうしたのか?


簡単な話だ。



僕は始祖開放が使えない。



なのに無理矢理行使してるから異常に疲れるのだ。故に極力魔力は使いたくない。

……実は始祖開放が使えない魔族は案外多い。

六兄様も使えないし、というより、一、二番目の兄姉様や父様ぐらいしか使えないのだから普段困るということは殆どないのだけども。

(魔力は使わなければいいだけの話だ)



でも、これからはそうはいかない。


残っている兄姉様達はその始祖開放・・・・・・が使える魔族ヒト達ばかりなのだ。


始祖開放を使える者に、使えない者が立ち向かうのは丸腰ゴブリンがドラゴンに闘いを挑むようなものだ。まさに無謀。


始祖開放が使えない僕にはかなりキツイ戦いになるだろうことは、火を見るより明らかだ。


「にしても、なして兄姉達に喧嘩売ってるんや。これが他の兄姉ならいつも通りやけど、別にそういうタイプちゃうやろ、坊。なんか理由あるんか」


「うん、人間界に行きたくて……」


事情を六姉様に説明すると、程なくして六姉様は腹を抱えて笑い始めた。


「ぷっ、ガハハハ!! 人間界ィ? よりにもよってそこか! あそこに行くために坊が十二人に喧嘩売っとるんか! これは傑作やな!」


「本気なのに……」


殆どの魔族に反対されたり、笑われたりしてる気がする。なんだいなんだい。魔族が人間界に行きたいのがそんなにおかしいのか、全く。


「グ、いやいや、ええと思うで! 行きゃいいやん。姉ちゃん応援するで! 判子もやるし」


六姉様は笑いながら、戦ってもいないのに判子をくれた。戦わずして判子をくれる兄姉様は殆どいないからびっくりした。


「良いの? 戦ってないよ?」


「言うたやろ、応援するって。まあ対価は払ってもらうけどな!」


デスヨネー。

魔族になにか頼みごとをする時は対価が必須なのである。兄姉間でも例外はない。


「新しい試作品の試しして欲しいねん。それに丁度ええと思うで」


「新しい……試作品……?」


なにそれ嫌な予感。なんかロクでもないのだったらどうしよう。


「なに、始祖開放を強制的にさせる薬や。ほら、丁度ええやろ?」



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