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『主人公』佐上至のいつも通りの日常

 プロローグ


 期待という言葉を、好意的に受け止められなくなったのはいつからだろう。

 たとえばそう、好きな人が自分のことを好きになってくれないかな、なんて期待。

 誰もが一度は胸のうちに抱いてしまうようなそれを、当然のように自分も抱いている。抱いてしまっている。

 しかし、これが希望的観測に過ぎないことは少し考えれば分かることで、例えば学年でも有数の美少女として数えられるクラスメートが、クラスの隅で細々と生きながらえ、もはや掃除ロッカーにさえ存在価値という観点で負けてしまいそうな人に振り向いてくれるなんてことは、きっと太陽が超新星爆発でもして地球に日の光が注がなくなってしまうことと同じくらい有り得ないことだろう。下手をすれば後者の方が起こりうるかもしれない。

 大袈裟に言い過ぎだと笑う者もいるかもしれないけど、ゼロに何をかけてもゼロなのと同じように一縷の望みなんてものはない、万が一なんて存在しないのだ。

 だから、期待するなんてことは無意味で不利益で人生の道草でしかない。

 そう心の底から思ってはいても、気が付けばあの人のことを目で追っている自分がいた。



四月二十二日 月曜日


 どこまでも延びていくような並木道に併走する桜色の群れは僕のような人間さえも歓迎するようにその花びらを散らす。もしかしたらこっち来るなと威嚇射撃を放っているつもりなのかもしれない。もしそうだったら申し訳ないと思う。

 一時間後には忘れていそうな妄想を脳内に蔓延らせながら平均より幾らか大きい面構えの校門をくぐり、誰かと世間話に興じている満たされた者と僕のように退屈そうに、されど満たされようともせずに歩んでいる者が半々ぐらいで交じり合っている中にさりげなく紛れ込む。

 その過程で知り合いが目に入り、ついでに目も合ってしまったので軽く手を振って挨拶の代用品を即席で出荷した。

「あっ…………」

 僕の数少ない友人である木場秋葉きばあきははその細身を一瞬凝固させた後、

「おう!」

 男らしく返答して何故かこちらへと駆けてきた。

 通行を邪魔された生徒達が迷惑そうに木場を見て、その背中に背負われた竹刀袋を見て萎縮し、代わりに僕を見る。申し訳ない、と心の内で頭を下げる。

「おはよう佐上さがみ!」

 ビシッと敬礼のようなポーズを取ってくる木場。

 乱雑に腕まくりされた冬服から覗く引き締まった肌色が眩しい。 

「おはよう木場。遠い所からわざわざどうもありがとう」

「いやいや」

 社交辞令染みた応答の後、

「…………………………」

「…………………………」

 沈黙が訪れる。

 いつものことだ。マンネリ化したくはないんだけど。

 こういうときどちらから話題を挙げればいいのかな、なんて考えてしまうのは僕のトーク力が低いからだろう、とこの沈黙の原因を一概に片付けてしまう事も可能なのだけれど、それでは友人の将来に禍根を残すかもしれないので一応同罪であると主張しておく。

「…………………」

「あの、さ。木場」

「なんだ!?」

 どこか嬉しそうに僕の隣を歩いていた友人に話題を振ると、友人は眼鏡をかけていたら間違いなくこちら側に眼鏡が投擲されていたであろう速度で僕の方へ顔を向けた。

 この様子からして、話すことを拒絶しているわけじゃないんだろう。ありがたい話だ。

 まあ、近寄られた相手に会話を拒否されたらさすがの僕でもちょっと悲しくなる。

「今日も、いい天気だね」

「そうだな!」

「午後からは雨が降るらしいよ」

「そうなのか!」

「金曜日には球技大会があるんだっけ」

「楽しみだな!」

「昨日何食べた?」

「カツ丼だ!」

「おいしかった?」

「ああ!」

 木場は、僕の数少ない友人だ。

 中年親父が思春期の娘に振るような広がりようも当たり障りもない話題でも嬉しそうに応答してくれるから、話下手で人と接するとどうも萎縮してしまいがちな僕としては大変ありがたい友人だ。

 代わりに会話をしている意味をしばしば見失いがちなのだけれど、そんなもんいらん、とこの前彼女本人に一蹴されたのでそれでいいのだろう。

 骨粗鬆症を起こしたような中身スッカスカの会話の応酬を十六ほど積み重ねた所で、下駄箱に着いた。

 組が違うのでさよならを告げなければならない。

「じゃあ、また」

「ああ!」

 別れ際も男らしい。

 ふりふりと右手を振って離れていく背中を見送った後、自分の靴箱へと向かう。

 右下で燦然と輝く正方形の扉を開くためにしゃがみこみ、よれはじめた上履きを取り出す。

 毎朝この作業が億劫でならない。去年はちょうど胸の高さぐらいにあったからなおさらだ。

 朝からため息を吐きながら、僕は顔を上げ、

  

「おはよう」

 眼前に、白百合のような清純があった。 


「…………っ、うぁ……………………」

 一瞬。

 ほんの一瞬、完全に心臓が止まった。

 穢れを知らないような真っ白で豊かな髪。

 穏やかな光を湛えた碧色の双眸。

 透き通るような淡い肌。

 その全てに、身体の支配権を奪われた。

「どしたの?」

 いつまでたっても応答しようとしない僕に小首を傾げる。

 その挙動に、今度は逆に鼓動が和太鼓のように大きく波打ち、化石と化していた僕の身体が血液という水分を得て瑞々しく復元していく。死後硬直と見まがうほどに身体が思い通りに動かないのは仕様だ。

「い、いや、なんでも、ない、よ」

「そう」

 乱れに乱れ、8ビートを刻み続ける心臓を抑えるのに必死な僕に追い討ちをかけるように彼女はいつもの真顔に少しばかりの喜色を浮かべた。16ビートへの転調を余儀なくされる。 

「ならいいけど」

 こちらはまったくよくない。

 それでも言うべき事があるから言っとかないと。

「おは、よ」

 喉は化石化が特にひどかったらしくまだ干上がっており、そこから出たものはもはや声ではなく掠れだった。

「ちょ、ちょっと、タイム」

「承認」

 ぐっと真顔でサムズアップ。

 与えられた作戦時間をありがたく深呼吸に使わせてもらって、再挑戦。

「…………おはよ、白峰しろみねさん」 

「うん」

 彼女は頷いて、

「おはよ、佐上くん」

 柔らかく、花のように微笑んだ。

「う、ぐ………………」

 心臓はもはやオーバーヒート寸前。循環していく血液の摩擦で身体が内から熱を帯びていく感触さえする。

「そ、それじゃ、また、教室で」

 これ以上この場にいてはいけないと脳内の議会が満場一致で判決を下し、それを受けた僕の身体は素直に戦略的撤退を図る。

 階段を駆け上りながら、僕はそういえば今朝の星座占いで乙女座が一番だった事をふと思い出した。

 

 入学式のあの日。

 校舎へと向かう校庭で、桜の花が舞い散る中、一人ぽつんと立っていた女の子のことを覚えている。

 白く長い髪を風で揺らしながら、彼女は前を向き、しかし何も見ていないように思えた。  

 ただぼんやりと校舎を眺めている彼女に、僕は何故だか声をかけた。 

『誰かを待っているんですか?』

 その問いに、彼女は微笑みを返してくれた。

『……………』

 周囲の雑音に紛れてしまったのか、何を言っているのか分からなかった。

 けれど、その笑顔を、僕は覚えている。

 

 僕は今、初恋をしている。

 いつから、と聞かれれば高一の春、あるいは二週間前と答える。

 誰に、と聞かれればクラスメートである白峰詩織しろみねしおりに、と答える。

 どうして、と聞かれても答えようがない。

 一目惚れだった。

 十五にもなって、ようやく僕は恋なんてものを知った。

 しかし悲しいかな、僕なんて日陰者とクラスの人気者である彼女は釣り合うはずもなく。

「おいおい、なんか浮かねえ顔してんな、テメエ」

 数少ない友人Bである宇佐類十波うさるいとなみにからかうように笑われても、何か言い返す気力さえ湧かず僕は黙って窓際、教室の隅の席に着いた。

 その様子に彼は一瞬で悪ガキのような笑みを心配そうな表情に変えた。

「…………おいおい、マジで大丈夫かよ。風邪か? 調子悪いんなら保健室行くか?」

「ああ、いや、大丈夫。ただちょっと、落ち込んでるだけだから………」

 あははと苦笑すると彼はむ、と少しだけ目をつぶった後、

「………はーん、白峰に挨拶されたけど大したことも言えずに逃げてきたってとこか」

「うぐぅ…………」

 図星を突かれ僕は机に突っ伏した。

「いつも思うんだけど、そんなに僕って分かりやすいかな………?」

「いや、ここは俺の推理力を褒め称えろよ」

 どや顔がうざいなぁ。

 でも実際、彼の推理力、というか洞察力や思考には目を見張るものがある。

 僕の顔色を見て、少しばかり目を閉じるだけで何があったのかを言い当ててくるのには毎日驚かされる。  

「わあ、さっすがうさりん。すごいなぁ」

「おうおう、もっと崇めろ崇めろ」

 うさりんというのはこの友人の仇名だ。僕以外が使っているのを見ないのはただ単に彼の友人が僕しかいないからだろう。

 ちなみに佐上、と僕の名を呼ぶのは木場か白峰さんかうさりんか教師くらい。僕もまた、友人が少ない。

「せっかく声かけられてんだから世間話の一つでもすりゃいいのに」

「や、白峰さんはお情けで声をかけてくれてるだけだし」

 言いながらちらりと教室の中央を見る。

 そこには級友と楽しげに会話する白峰さんがいる。

 僕に限らず、少なくともクラスメートには挨拶を欠かさない。

 クラスの中心にいるわけではないけれど、ぱっと見真顔ながら気さくで陽気な彼女にはクラスの誰もが一目置いている。

 クラスに一人はいるような、誰にでも優しい人気者。それが白峰さんだった。

「俺なんか声かけても無視されるのになぁ………」

「それはうさりんがあんなことやらかしたからでしょ」

「だよなー。高校デビューミスったよなー」 

 そう言う割に気楽そうなうさりん。

 入学式の際友人になった彼は、入学式の翌日、あろうことか一組の担任でありイケメンともてはやされていた着任三年目の教師を全力でこき下ろした。


『おいおい! お前らその教師がイケメン清純系だって期待してんのかもしれねえけどよ! そいつ女子生徒がっつり食ってるぜ!?』


 そんなことをのたまって。

 教師は精神的ショックを理由に休暇届を出し、まだ復帰していない。

 言いがかりで無垢なイケメンを傷つけたとして、あの日から宇佐類十波は学年一の嫌われ者になった。

「そんな俺と仲良くしてるお前何なの? いいよ別に俺一人でも。一匹狼でも生きれるし」

「いや、少なくとも僕は気の合ういい友達だと思ってるし」

 入学式の日、同じ中学の子たちがクラスにいたのもあって早速村八分にされていた僕の隣の席に座り、話しかけてきてくれた時は本当に嬉しかった。

 誰かに話しかけるような勇気を持っていなかった僕は、その糸を必死でつかみ、そしてそれが間違いではなかったと今でも思っている。

「顔色が優れなかったらすぐに心配してくれるような君だしね」

 粗暴な口振りとは裏腹に、思いやりに溢れた人だと僕は知っている。

「それに、うさりんがあんなこと言ったの、うちのクラスの女子が担任に文句言ったからでしょ?」

『一組はイケメン男子教師なのに、なんでうちらはあんな老いぼれなのよ。不公平でしょ』   

 そんな馬鹿みたいなことを、クラスメートは当たり前のように言った。

 第三者の僕だって腹が立ったというのに、初老の担任、野下のした先生は申し訳なさそうに笑っていた。

 きっと、そういうことを言われ慣れているんだろうと思った。

 でも、うさりんはそれが許せなかったのだろう。

 彼の告発を言いがかりだと皆は言うけれど、男子教師の狼狽ぶりからして、きっとそれは真実で。

 あの時初老の担任が止めていなければポケットから取り出されていたうさりんのケータイには、証拠写真でも入っていたことだろう。

『…………入学してすぐに問題を起こすとは、とんだ問題児だな』

『サーセン。俺、イケメン嫌いなんすよ』

 あくまでもしらを切るうさりんに、溜息を吐きながら担任は顔をしかめ、

『…………だがまあ、一応お礼はしておこう。ラーメンは好きかね?』

『いやいや、先生ラーメンなんか食ったら内臓脂肪やばいっしょ? うどんにしときましょうぜ』

『…………こいつめ』

 額を小突かれる彼を見て、こんな奴の友人でいれる自分がひどく誇らしく思えたものだ。

 そんなことがあり、そして未だ彼が僕の隣にいてくれるので僕は彼の友達でいるんだけど。

「でも、俺と絡んでる限り友達出来ねえぜ? お前」   

「うう…………」

 この素晴らしい友人から離れるつもりはさらさらないけれど、学年中から嫌われている彼とつるんでいれば必然として僕の立場も悪くなることは学生として時を過ごした者なら想像に難くないだろう。

 白峰さんのような”いい人”はともかく、クラスメートはまるで僕らを元からいないもののように扱い教室の隅へ二人島流しにしている現状を考えると、楽しい学園生活はどうも送れそうにない。

 高校生になれば少しは変われるかも、と期待した僕がバカだったんだろうか。

「もう、この際うさりんだけでいいかな…………」

「お前がいいなら別にいいけどよ……………」

 うさりんはうさりんで、はなから友人なんてものをこれ以上作るつもりはないみたいだった。

『話せる友人が一人いりゃ十分だろ。わざわざ数持って群れるつもりはねえよ。もう高校生なんだし自立しねえとな』

 それは自立というか孤立じゃないんだろうかとも思ったけれど、うさりんがそれでいいならそれで。

「なんか悪いな、俺のせいで寂しい青春になっちまったみたいで」

「や、そんなことないよ。元から寂しい青春になる予定だったし。むしろうさりんみたいな気心の知れた友達ができただけで十分だよ。中学の時は僕虐められてたし」

「そんなさらっと鬱トークしてんじゃねえよ。なんかこっちまで落ち込んじゃうじゃねえか」

「いやぁ、今となっては笑い話だよ」

 理由は今でもよく分からないけれど、僕は虐められていた、のだと思う。

 靴はほぼ毎日隠されていたし、机の木目を拝めた記憶はない。

 明確な理由なんかなくて。

 ただなんとなく、僕は虐められていた。

「うん、笑い話にしよう。うん」

「暗示かよ…………。なに? その糞長い前髪はその後遺症なの? 額に傷でもあんの? 魔法使いなの?」

「あはは、一度虐められると周りからいっつも後ろ指差されて笑われてる気分になってね」

 一度蹴落とされると、その感覚が染み付いてしまう。

 加害者から離れた今でも、卑下される立場にいるような錯覚は離れてくれない。

 一度経験してしまえば、二度とは元には戻れないのだ。

「視線とかにも敏感になるからこの際こっちから見えなくすればちょっとはマシになるかなって」

「うわ重。なんかギャルゲ主人公かよってくらい伸ばしてんもんなお前。前とか見えてんのかよ」

「慣れれば意外と快適だよ? 日差し避けにもなるし」

「サングラスでいいじゃねえか……」

「いやいや、校則違反だから駄目だよ」

「そんな暗い理由話したら野下も許してくれるだろうよ」

 うさりんが担任の名前を口に出したところで、教室の入り口が湧いた。

 呼ばれて飛び出て、とでもなるのかと思ったけど、違った。

「おーっす梁間はりま!」

「梁間くんおはよう!」

 クラス中から好意的な視線を送られ、それに応えるように彼は爽やかな笑みを浮かべた。ホワイトニングでもしたような綺麗な前歯が光る。

「やぁ、おはよう皆」

「きゃああああああ!」

 ただの挨拶で黄色い歓声を上げさせることができるのは校内探し回ってもおそらく彼だけだろう。 

 梁間輝はりまてる

 イケメンで勉強もできてスポーツもできておまけに人もいい、と俗にいう完璧超人を絵に描いたような人だ。

「梁間、今日ちょっと遅かったじゃねえか! 何してたんだよ?」

「ああ、昨日少し夜更かしをしてしまってね………」

「ホントだ―目の下に隈できてるー!」

「何してたの何してたの!?」

「あー…………ちょっと、ボトルシップをね」

「きゃー、かっこいー!」

「すげー!」

 相変わらずすごい人望だ。

 クラスのほぼ皆が彼を中心にして集まっている。

 僕だったらあれだけの視線を当てられただけで震えあがる自信がある。

「ねえ、すごいよね、うさり」

「ぶっ、くくっ……………」

 彼は何故か噴き出していた。

 場違いなその音に、梁間くんの取り巻きが振り向く。

 宣言通り震えあがる僕と視線など気にも留めず腹を抱えるうさりんを見て、男子生徒A(多分木沼くん)が苛立たしげに眉を上げた。

「あ? 何笑ってんのお前?」

「あ、いや、これはその………」

 なんとか取り成して事なきを得ようとした僕の横、

「いや、お前らと一緒だよ。お前らが楽しそうだから笑ってんだよ」

 火に油注いでるよこの人………。

「は? あんたと一緒とか虫唾が走るんですけど? 教室の隅っこで静かにしてなさいよ」

 苛立たしげにギャル系の市原紗香いちはらさやかさんが言う。クラス内でも大きな発言力を持つ彼女の言葉に皆が頷き、

「そうだそうだ!」

「黙っとけや!」 

 突然巻き起こった喧騒に目を丸くする白峰さんとそのお友達や、僕たちと同類と思われるぼっちーずたちを他所にヒートアップする皆さん。学生運動もこんな感じだったのかなぁ。日本史で習えたらいいんだけど。

「ああもう………」

 思わず頭を抱える。

 ああいう群れてる人たちは刺激しなければプリント回してこなかったりはするけど基本的にこちらには不干渉でいてくれるんだから、あんまり喧嘩売っちゃ双方の労力の無駄なのに…………。

「いやぁ、俺だってお前らと一緒とか嫌だよ。でも人間だから仕方ねえよなぁ。ほら、鼻と口付いてるとことかお前らが崇めてる梁間とそっくり」

「ふ、ふざけんなやぁ!」

 大好きな梁間くんを貶された気分なのだろう、男子生徒B(鈴木くん)が激昂するが、うさりんはまるで聞こえてないような様子で笑いながら、

「つうかどうなのお前ら。ボトルシップとか分かってんの? カタカナ語っぽいっからってかっこいいとか小学生かよ」

「は、はぁ!?」

 叫ぶ鈴木くんの後ろ、どよめきが走る。

 ボトルシップってあれだよね? 瓶の中に舟作る的な………。さっきも皆知ってる風だったから不思議に思ったんだけど、意外と知名度高かったんだね。

「じゃあほら、たとえば本田。お前だよお前。どうなの?」

「え?」

 急に名指しされ、本田さんは戸惑いを顔に浮かべた。

「いや、お前さっき『きゃーかっこいいー!』ってあざとい声出してたじゃねえか。媚び売ってたんだよな?」

「そ、そんなわけないでしょ!」

「あ、そうなの? じゃあ普通に感嘆? ならボトルシップがどんなものかくらい分かるよな?」

「え、あ、その…………」

 口を閉ざした本田さんに周囲の女子生徒が近づいて手助けをしようとするが、

「おいおいおい、そんな見苦しい真似してんじゃねえよ」

 うさりんはがたん、と椅子から立ち上がり、早足で集団の元へと近づき、本田さんの手を取り、取り巻き畑から引っこ抜いた。

 哀れ本田さんは僕と梁間くん一派のちょうど間辺りに連れられ、そしてうさりんに顔を覗き込まれる。

「ほら、誰の手も借りず言ってみろよ?」

「あ、う…………」

 すっかり怯えてしまった本田さんに射るような視線を向けて、うさりんは続ける。

「お前ら、入学当初から佐上ハブったり俺らに陰口叩いてたりしてたけどよ? それやる権利ってのは当然あるんだよな?」

「え?」

 涙目の本田さんにうさりんは「いやいや」と呆れたように首を振ってから、聞き分けの悪い子供を諭すように丁寧な口調で、

「お前らは群れて生きてっけどそれはお前らが弱いからってことじゃないよなって聞いてんだよ。一人でも生きていけるから俺らみたいな孤立したやつを蔑むんだよな? じゃあほら、答えてくれよ。一人で頑張ってみろよ。孤立しても一人でやっていけるってとこ見せてみろよ。孤立したら弱くて死んじゃうから群れてるんじゃないってことを証明してみせろよ。俺たちを蔑むだけの優位があるって言ってみろよ」

 捲し立てられた言葉に、皆が呑まれていた。

 彼が話しているのは本田さんだけなのに、梁間くんの周りで先程まで楽しげに笑っていた人たちは皆居心地悪そうに視線を逸らしていた。

「て、テメ、可哀想だろうが! 離せ!」

 果敢に掴みかかってきた木沼くんの腕をうさりんは逆に掴んだ。

「テメエもだ木沼。俺が笑うことに異議を申し立てただけの理由を言ってみろよ。市原もそうだ。隅っこで静かにさせるだけの権利を見せてみろよ」

「う、うぐ…………………」

 何も言えなくなった木沼くんの腕を揺らしながら、うさりんの表情は次第に怒りに満ちていく。

「おら、どうした。…………言えよ。言えっつってんだろうが!」

 苛立たしげな怒声は、教室全体に響き渡った。

 誰も何も言わないのを見て、うさりんは溜息を吐き二人から手を離した。

「……………朝から叫ばさせやがって。喉痛めたらどうすんだ畜生め」

 あー、あー、と喉を整えてから呆然と立ち尽くす彼らを見据えるうさりんに、今までずっと黙り込んでいた梁間くんが口を開いた。

「…………悪かった、宇佐類。俺の友人が嫌な思いをさせてしまって」

 そう言って頭を下げた梁間くんに周囲は慌てた。

「は、梁間! こんな奴に謝る必要なんかないぜ!」

「そ、そうよ! こんな根暗で嫌味な奴に!」 

「必要ないわけがないだろう。駄目なことをしたらごめんなさい。これは常識だ。子供だって知ってる」

「う………」

「そうだな。小学生だって知ってるなぁ」

 にやにやと笑ううさりんを彼らは睨みつけたが、彼らが何か言うより早く梁間くんが、

「宇佐類。君も無駄に煽り立てないでやってくれ。嫌な思いをしたのは分かるが、互いに貶し合っては和平は生まれない」

「和平いらねえ………ただ謝罪は寄こせ。俺はもちろん何の罪もないのに貶された佐上にもな」

 え、僕も?

「はぁ!?」

「お前ら、あれだけ露骨にプリント配らなかったり椅子に画鋲置いたりとかしてた癖に今更知らぬ存ぜぬはねえだろ。悪いことをしたらごめんなさい、だろ? なぁ梁間」

「ああ、そうだ。…………すまなかった、宇佐類。そして、佐上」

 まさかの土下座に梁間くんの取り巻きだけでなく僕も慌てる。

「い、いや、僕は…………」

 正直慣れっこだし別に謝らなくても、と言おうとしたのだがうさりんの言葉にかき消された。

「おいおい梁間にだけ謝らせてんじゃねえよ。おら見ろ佐上を。ストレスで前髪伸びすぎになっちまってんだろうが」

「そ、それは元からじゃ…………」

 あ、中学の時一緒のクラスだった亀田くんがツッコミを入れてくれた。よかった、これで安心………「ああん!?」「あ、いえ、なんでもないです…………」駄目でしたー。 うさりん怖いなぁ。本気で怒ってるのかな。

 ………………ありがたいけど、後が怖いなぁ。

「おら、とりあえず謝れよ。早くしないと先生来ちゃうだろうが」

 あ、うさりんちょっと余裕だ。少なくとも野下先生の心労を減らそうとする気遣いはできる程度には余裕があるみたいだ。

「ぐ、くそ………」

「ぬぐぐ…………」

 梁間くんを取り巻いていた人たちが土下座の体勢となったのを見て、うさりんは蔑むように笑った。

「はは、いい眺めだ。人がゴミのようだ、っつうかゴミだな。昨日掃除サボったからさぞ埃まみれなことだろうよ。燃えるゴミとして一緒に捨ててやろうかな」

 うさりん下衆い…………。

「ぐ…………」

「まあ、お前らはこれまで俺らを見ておんなじこと考えてたんだろうし、おあいこってやつだようなぁ。仕方ねぇ。俺らの方が時間的には不公平だが、人数も多いしこれで許してやるとしよう。佐上もそれでいいか?」

「え、あ………いいよ、うん」

「よし。………許してやるが、これは佐上の温情だからな? 感謝しろよ? 俺ならここからさらに写真を撮ってたね」

 うさりんひどい。そして怖い。

 背中から憤怒を隠しきれないでいるクラスメートの中、梁間くんが土下座のまま言った。

「…………じゃ、顔上げていいか?」

「おお、いいぜ。そろそろ先生来るし、早めに戻れよ」

 お許しの言葉に、顔を上げるクラスメートたち。

「くそ、覚えとけよ………」

「あ? 覚えとけ? おお、覚えてるぜもちろん。あんだけ無様な姿見せられたんだ、夢に出てきちまうかもなぁ」   

「ぐ…………」

 恨めし気な鈴木くんにもケラケラと笑いながら返す。

「宇佐類」

「分かってるよ。じゃ、そんな感じで」

 梁間くんに釘を刺され、ようやくうさりんは席へと帰ってきた。

「うさりん怖いし下衆いよ。何もあそこまでする必要なかったでしょ」

「いや、あれくらいする必要があった」

 うさりんは僕の耳元に一瞬躊躇ってから口を寄せ、

「……………こんだけ釘を刺しときゃ、ちょっとはマシになるだろ」

「うさりん……………」

 呆けたように言う僕に、うさりんは笑う。

「俺の友達でいてくれるって言ってくれて嬉しかったぜ。だからせめて、俺とつるんでても嫌な思いさせないようにするくらいはしねえとな」

 ただでさえ嫌われ役でしかもそれは誤解に等しいのに、また彼は嫌われ役を演じてでも主張を通した。

 前は初老の担任のために。

 今回は僕のために。

「……………うさりんと友達になれてよかった」

 他人を思いやれる彼を知ることができたことを、心から嬉しく思う。 

「よせよ、そういうのは卒業式に言うもんだぜ」

 照れたようにうさりんがはにかんだところで野下が教室に入ってきた。

「よし、皆いるな? これからホームルームを………妙に埃が舞ってるな。床に埃もないし、誰か暴れたのか?」

 問いかけに、誰も何も答えず、ただスカートやズボンをはたく音が聞こえた。

「…………まあいい。ほどほどにしとけよ。じゃあ、ホームルームを始める」

 朗々と予定を話していく野下先生を見る僕の後ろで、うさりんは窓から空を眺めていた。 


 うさりんという友人を僕は誇りに思っているし、朝の一件だって迷惑になんて微塵も思っていない。

 けれど、あれだけコケにされ、しかもそれがクラスの大多数を占める梁間グループの面々だとすると、

「いい加減吐けよゴラァ!」

「お前が杉崎の体操着盗んだんだろ!?」

「白状しろやこの屑!」

 こうなるのは、まあ、うん。目に見えていた。

 放課後の教室。うさりんが女子生徒(確か磯ヶ谷さん)に呼ばれて教室を出ていき、梁間くんも何かの用事で教室を出ていった直後、杉崎薫すぎさきかおるさんの体操着が盗まれたと杉崎さんの友人である市原さんが言ってから、あれよあれよという間に僕が犯人であるとされて今魔女裁判中だ。皆に囲まれて居心地が悪いったらありゃしない。

 でも仕方のないことだと思う。

 僕みたいに完膚なきまで尊厳を踏みにじられたのならまだしも、たいていの人は貶されたらやり返す、というルーチンを取る。

 これは人間として当たり前のことであり、むしろ貶められても何の反抗もしない僕の方がよっぽど人間性に欠けていると思う。

 それに彼らは多数派だ。

 これが少数派なら少しは躊躇うところだけど、多数ならその必要はない。

 世の中は多数決で動いていて、それは社会的生物である人間として正しいことだろう。皆で生きていくためにはある程度意見を一つにまとめなければいけない。皆の希望を聞いていたらいつまでたっても夕飯のメニューが決まらないのと同じことだ。

 そんな当たり前の原理に則って、彼らは今動いている。

 自分たちが多数派で正しいはずなのだから、貶してきたあいつらは悪者だ。間違っている。

 きっとそんな大義名分を胸の内に掲げて。

 仕方のないことだ。

 社会で生きていくためにはどうしても他人と仲良くしなければならない。

 みんななかよく。

 友達百人できるかな。

 小学生のころから推奨されてきたそれを「どうしても仲良くできない人だっているのに無理を言うな」と否定するのは簡単だけど、僕はそれを大人になって社会に出た時のための予行演習だと思っている。

 どうしても仲良くできない人とも仲良くしなければならないのが社会というものであり、気のくわない上司や生意気な部下ともなんとかうまくやっていかないといけない。

 それが社会で生きるということであり、そんなみんなが集まって社会というものが回っていく。

 その予行を、僕らは学園生活の中で行っているのだ。

 うさりんは大多数で群れる彼らを貶したけれど、彼らだって一枚岩ではない。

 ざっと見ただけで二十人はいるのだ、どうしても気にくわない人はいるはずだ。

 それでもああやって仲良くしているように見えるのは、彼らのたゆまぬ努力のおかげだ。

 僕のようなぼっちには考えもつかないような、誰かと生きているからこそ生まれる悩みだってあるだろう。

 それを胸に抱きながらも日々楽しそうに笑っていられることに対して僕は尊敬の念さえ抱く。

 弱いから群れている、とうさりんは言ったけど、それはきっと違う。

 あれこそが社会に生きる人間として正しい姿であり、それに馴染めない僕らはきっと間違っている。

 孤独に生きることがかっこいいとは思えないし、一匹狼は狼だからいいのであって一人の人間ならただのぼっちだ。

 だから、僕は彼らに対して申し訳なさこそ感じるけど怒りや悲しみといったものは一切感じない。

 むしろ、僕のような存在が彼らには必要だと思っている。

 僕のように社会に混じれない者に惨めな扱いを施すことができれば、彼らは自分たちを正当化できる。

 自分の行いに対し絶対の自信がある者なんてごく少数だろう。

 だから、時折こうして補強してあげなければきっと不安になってしまう。

 今朝うさりんにそれを揺るがされたから余計にだろう。

 自分たちはこうして群れていていいのか。

 弱いから群れてしまうのか。

 そんなことはない。何度も言うようだけれど、それは人間として正しい在り方だ。

 日曜の朝にやってる正義の味方だって、週刊の少年漫画だって、皆が力を合わせることを美しく描いているじゃないか。

 誰かと生きること。

 それが正しいことなのだと、皆必死になって肯定しようとしている。

 だってそうじゃないと、社会というものが成り立たなくなるから。 

 だから、彼らがやっていることは正しい。

 暴力に頼るのはちょっとよくないと思うけど、それでも独りよがりで社会の中で生きているという自覚をなくすよりかはずっとマシだ。

 白峰さんたちがうさりんとほぼ同じタイミングで教室を出ていってまだ帰ってきていないのが幸いだ。朝クラスメートの皆を土下座させるというひどい、今思うとどうしようもなくひどい姿を見せたために彼女の中での好感度がだだ下がりしているだろうに、こんな惨めな姿を見せてしまったらもう朝の挨拶さえしてくれなくなるかもしれない。そうなるとちょっと学校に来るのが億劫になる。

「おい! 黙り込んでんじゃねえよ!」

「さっさと吐きなさいよ!」

 皆の前でコケにされてしまった分、鈴木くんと本田さんは特に元気だ。さっきからよく話しかけてくれる。

「このクラスん中で鞄見せてないのお前だけだろうが! 犯人じゃねえっつうんならさっさと鞄の中見せて身の潔白を示せや!」

 鞄見せただけでアリバイになるなんて楽な操作だなぁ。ゴミ箱や空き教室に捨てたりとかしてたら皆潔白じゃないか。

 僕もとっとと鞄の中を見せたいところだけど、鞄を向こうに渡したらその体操着とやらを仕込まれるだろうから意味ないよね。

 鈴木くんが多分実行する手筈なのだろう、さっきから冷や汗をかいている。

「おら、早く出せよ薫の体操着!」

 市原さんはギャルギャルしい見た目の割に友人思いなのか、さっきから僕を責め立てながらもちらちらと教室の隅で女子に慰められながらも泣いている杉崎さんの様子を横目で伺っている。

 僕を取り巻く梁間一派の皆も半数は僕を睨みつけているけれど、もう半分は心配そうに杉崎さんを見ている。

 改めて考えると不思議なことだ。

 てっきり僕はうさりんと梁間くんがいなくなったところで事件が発覚したから杉崎さんが体操着を盗まれたこと自体もすべてやらせで、鬼の居ぬ間に僕を貶めようとしているのかと思っていたけれど、杉崎さんを本気で心配している彼らの様子からして、どうやら事件自体は存在して、その犯人として僕が疑われているらしい。

「ただいまーっと。あん? 何やってんだお前ら?」

 語彙力の欠如か罵声がワンパターンになりだした辺りでうさりんが帰ってきた。皆にかごめかごめされている僕を見て、怪訝な顔をした後、

「……………朝言ったこと理解できてなかったのか、お前ら?」

 凄みのある声だった。

 怒気を向けられていない僕でさえ震えあがるような、そんな声。

 帰還した鬼に皆が震えあがる中、何とか恐怖に打ち勝った市原さんが言う。

「こ、こいつが鞄の中身見せないから! 薫の体操着が盗まれたってのに!」 

「鞄の中身? ……………あー」

 また怪訝な顔した後、納得したように手を打つ。

 そして僕に向けて生暖かい眼差しを送ってくる。

 いや、違うからね? 今日君の家で泊まりでやるつもりで持ってきたギャルゲー三本が鞄の中に入っているけどそれは問題じゃないからね? 鞄を渡すと犯人に仕立て上げられようとしているから渡してないだけだからね?

 しかしそう考えるとまた妙だ。

 集団で僕を貶めようとしているのは分かったけど、それはあくまで証拠がないからこそ犯人として責め立てるような、僕から言えば随分と軽いノリだ。

言うなれば八つ当たりのようなもので、少なくとも皆は計画的に僕を犯人にしようなんて思ってはいないだろう。周りの空気や杉崎さんを心配する面々がいることから、そこまであくどいことをするつもりはなさそうだと判断できる。本気で犯人にするつもりで、その用意がちゃんとできているならもっと公衆の面前でやるだろうし、証人として先生も連れてくるだろうし。

 それに、これはおそらくだけれど、僕を犯人に仕立て上げようとする流れの中、市原さんは本気で真犯人を突き止めようとしている。興奮しているからか鞄の中身だけで身の潔白が示せるなんて言っているけれど、落ち着いたらもっと細かく調べだすことだろう。例えばそう、制服のポケットとか。

 なんにせよ、犯人は僕以外にいるということだ。

「鞄の中身見せたところで潔白は分からねえだろ。どっかに捨ててるかもしれねえのに」

「でも隠し場所としては鞄が一番手っ取り早いでしょ? なら調べるほかないじゃん」

「まあそれはそうだけどよ…………」

 頭をガシガシとかくうさりん。ここで下手に擁護したところで共犯とでも言われるのがオチだと分かっているのだろう。少し安心した。

「つうか梁間は何してんだよ」 

「は、梁間は関係ねえだろ!」

 何故か鈴木くんがそう叫んだけれどうさりんは気にせず、

「や、あいつ推理とかしてくれんじゃん。先週上田の財布が盗まれた時だって推理してくれたじゃねえか」 

「う……………」

 そうだ。

 梁間くんがたったの二週間でここまでの人望を集めたのには訳がある。

 入学式の三日後の四月十一日、うちのクラスで何者かに生徒の財布が盗まれたことがあった。

 四月十六日、他のあるクラスである生徒の上履きが隠されることがあった。

 どちらも生徒による犯行だったのだけど、梁間くんはそのどちらもを華麗に解決し、そしてなおかつ犯人と被害者の和解を難なく行わせた。

 優しくそして誠実な彼は犯人を皆で責めたてるようなことを許さず、人は誰しも間違ってしまうものだと性善説を語りどうか許してやってくれと彼自ら頭を下げた。

 そんな彼の姿に皆は心を打たれ彼を慕い、そして期待するようになった。

 困ったことがあってもきっと梁間くんがなんとかしてくれる。 

 梁間くんを取り巻く皆は心の底からそう思っている。

「ホントだ、さっきから静かだと思ったら梁間いないじゃん」

 今気づいたように市原さんが言う。彼女は他の皆ほど梁間くんに依存していないのだろう。

「そうだよ、梁間に聞いたら一発解決じゃん!」

 市原さんの言葉に皆がうんうんと頷く。入学してまだ二週間なのにきちんとヒエラルキーができあがってるなぁ………。

「よし、それなら梁間が来るまで待とう。佐上が嘘ついてるかどうかも梁間に聞いたら分かるし」

 言いながら、市原さんは僕に視線を向けた。

「あー、佐上も楽にしててくれよ。もう拷問して吐かせる必要もないし」

 あはは、皆の真ん中で正座させた程度で拷問だなんて、市原さんは優しいなぁ。

 思わず和んだ僕を他所に、うさりんが低くつぶやく。

「いや謝れよそこは………」

「は?」 

「もしかしたら佐上が犯人じゃないのかもしれないんだぜ?」

 うさりーん、もしかしたらってことはちょっとは疑ってるのかなー? 

「ならこんだけ言葉責めにして虐めた件について謝罪ってんのがいるんじゃねえの?」

「む…………」

 考え込む市原さんに慌てて言葉を紡ぐ。

「や、別にいいよ市原さん。鞄の中見せない僕が悪いんだし」

「わっすれっ」

「え、何お前。言葉責めされて謝らなくていいとかマゾなの?」

「ものーん……………」

 うさりんが怪訝な顔でそう言ったちょうどその時に白峰さんが帰ってきた。 

「………もう死んでもいいかな」

「悪い佐上………」

 もうやだ、何この人生。  

 両手で顔を覆った僕に、怒声が届いた。 

「ば、馬鹿言ってんじゃねえよ! こいつがこんだけ鞄の中見せたがらないってことはは、はは犯人ってことだろうが!」

 放課後だっていうのにまだ元気いっぱいな鈴木くんにうさりんは愕然とした表情で、

「マジかよ、そんな理屈が通るのかよ………じゃあ鞄の中見せて体操着入ってなかったらお前謝れよ?」

「な、なんで俺が!」

「疑って間違ってたらごめんなさいだろ。梁間だって言ってるだろうが」

「ぐ、ぐぐ…………」

 呻きながら、鈴木くんはちらりと泣きじゃくる杉崎さんを見た。

 ……………なんで見たんだろう?

 不思議に思う僕の横、いつのまにかこちらへと近づいていたうさりんは朝いつも僕に対してそうするように目を閉じ、

「…………あー、なるほど」

 僕にしか聞こえないような小さな声でつぶやいた。何か、分かったのかな。

 ぼんやりとうさりんを眺めていた僕と目が合うと、うさりんはウインクを返し、ケータイを取り出しなめらかなフリック入力で何かを打ち始めた。

 何を打っているのだろう、と気になっていると、

「呼ばれてきたが、どうした?」

 梁間くんが登場した。

 途端に湧く教室。   

「梁間くん、聞いて聞いて!?」

「いや、梁間、俺から聞けよ!」

 まるで忠実な家臣みたいに彼を取り囲む皆。

「ああ、なるほど」

 事情を理解したのか、梁間くんはまず教室の隅で泣いている杉崎さんの元へと歩いていき、

「災難だったね、杉崎。大丈夫、俺が犯人を見つけるから」 

「は、梁間くん…………」

 にこり、と爽やかスマイルを向けられ、杉崎さんは安心したように息を吐いた。

 さすがの信頼度。『皆のヒーロー梁間くん』にほぼ皆が期待の目を向ける。

 向けていないのは周りを見渡している僕とうさりん、それと………あ、よかった、白峰さんも。

 あとは………ああ、鈴木くんか。視線をあちこちに巡らして、随分と焦っているようだけどどうしたのかな。

「で、盗まれたのはなんだっけ?」

「体操着…………の、下」

「なるほど、ブルマか…………」

 痛み入るように梁間くんがつぶやく。

「………………ブルマか」

 なんで二回つぶやいたのかな。

 この町の学校はブルマが主流だ。町の顔である愛澤学園が採用してから、うちもうちもと校長たちが暴走し結果そうなった。

「ブルマだとポケットにも入るだろうから荷物の中見るだけじゃ少し不安だな」

「だよねー!」

「あたしもそう思ってたー!」

 さっきまでは僕のこと散々こき下ろしてたのにこの手の平の返しよう。まあこれであくまで僕を貶すだけで犯人にしようだとかは思っていなかったことが証明された。

「…………さて」

 一息ついてから、梁間くんはケータイを取り出した。

「今からちょっと推理するから、皆僕から離れていてね。ああでも、一応教室からは出ないで。五分以内に推理するから」

 その言葉に、皆が一定の距離を取る。

 前と同じだ。

 皆が見守る中、梁間くんはケータイで必要な情報を随時調べながら自分の推理を固めていく。

 そしてその後、犯人を名指しし、犯行のすべてを語り、「違うかな?」と問う。

 公衆の面前でそれをされると犯人は逃げられないと悟り素直に謝る。

 この五分間は犯人にとっての執行猶予なのだ。

 皆が固唾を呑んで見守る中、うさりんは暇そうに欠伸をした。

「…………緊張とかしないのうさりん」

 小声で話しかけると、眠たげな眼差しを返された。

「いや、別に俺犯人じゃねえし」

「それはそうだけど………」

「それにもう犯人だって分かってるしなぁ」

「あ、やっぱり?」

「やっぱりってなんだよ」

「や、僕はうさりんの推理力を信じてるから。いつも僕の顔色見て調子を察してくれるの、結構助かってるんだよ?」

「………そりゃあ幸いだな」

 うさりんはくくっと笑い、

「で、お前はどうよ?」

「え?」

 突然の問いに言葉を失った僕を他所にうさりんが続ける。

「いや、なーんかお前は気づいてるみたいだったからよぉ。たとえば市原の野郎が本気で杉崎のこと心配してるのとか」

「まあ、あれだけちらちら杉崎さんのこと見てたらね」

「……………え?」

 今度はうさりんが驚いたような声を上げた。

「何お前、そんなに視線に敏感なの?」

 ああ、そういうことか。

「ほら、僕虐められてたでしょ? 一回あんなことになると他人からずっと笑われてる気分になってね」

 当時に至っては道とか歩いてて周りの人が笑い声をあげるだけで自分が笑われてるなんて被害妄想に駆られていたくらいだ。防衛本能が働きすぎたあまり自意識過剰になってしまったのだ。矮小な僕に気をかけるほど他人は暇ではないことくらい分かっているはずなのに、今でも自分が笑われていないという確信が持てないと不安で仕方がない。

「だから、ちゃんと他人から見られてないって確信を得るためにも他人の視線に敏感にならざるを得なくてね」

「そんだけ前髪伸ばしてても分かるもんなのか…………」

 ほぉ、と感嘆したように息を吐いた後、うさりんは言った。

「じゃ、犯人も分かってる感じか?」

「…………うん、多分」

「ならどうするよ? やり返すか?」

「や、いいよ別に。杉崎さん可愛いし、体操着くらい盗んでも仕方ないよ」

「いや、お前が責められた分の話だよ」

「それはいいかな。もう慣れてるし」

 事を水に流すためにあははと笑うとうさりんは眉間に皺を寄せた。

「……………お前、俺があの糞イケメン教師にしたこと覚えてねえのか?」

「あ………………」

 そうだった。 

 あの初老の教師のように本人が慣れていると言ったところで、彼はその損害に対し怒る人だった。

「…………じゃあ、謝ってもらうくらいはしてもらおうかな」

「そんだけでいいのか?」

「あんまりやりすぎると、今度は僕が彼になっちゃうから」  

「…………そうだな」

 納得したようにうさりんが頷いたところで、梁間くんがケータイをポケットにしまった。

「じゃあ、推理っていきたいところなんだけど………」

 どうしたものか、と梁間くんが頭をかく。

「別に推理するって程の事でもないというか、一目瞭然なんだよね」

 その言葉に皆が反応した。

「じゃ、じゃあやっぱり荷物の中見せてねえ佐上が犯人ってことかよ!」

「や、やっぱり!」

 やっぱりってひどいなぁ。僕だって君たちと同じ人間なのに。きっと僕にそういう役割を期待してるんだよね、彼らは。自分たちが正しいと信じたいがために、少数派の僕に悪役を押しつけたいのだろう。

「いや、佐上君じゃない」

「じゃあ誰が!」

 はやる皆を落ち着かせるように梁間くんはやんわりと笑みを浮かべて、

「今から明かす。でも、そんなに責め立てるなよ?」

 人は皆間違うものだから、といつものように性善説を説いて。

「さ、本田。ポケットの中のもの、ちょっと見せてもらおうか」

 にっこりと微笑んだ梁間くんに、本田さんは鈴木くんに視線を向けた。

「…………バラしたの?」

「ち、違う!」

「……………大っ嫌い」

 ハッ、と蔑むように鼻で笑って、本田さんはポケットからブルマを出した。

「私がやりましたー」

 鈴木くんは、膝から崩れ落ちて泣いていた。


 別に何のことはない。

 皆ではなく、あの二人が僕を貶めようとしただけのことだった。

 天敵のうさりんや探偵役の梁間くんがいなくなるのを見計らって、杉崎さんのブルマが盗まれたと大袈裟に騒いだ二人はそそくさと僕の鞄の中を調べ、その時にさも僕の鞄から出てきたかのようにブルマを見せようと思っていたのだろう。

 僕が随分と渋っている間にうさりんが帰ってきたけどそれでも嫌われ者のうさりんなら荷物の精査からは遠ざけられると踏んで強引に推し進めようとしたけれどそれも梁間くんの帰還で無に帰した。

 杉崎に対し土下座をする二人に皆は気まずそうながらも梁間くんの手前、なんとか平静を維持している。

 声を荒げて二人をグーで殴り飛ばした市原さんも杉崎さんに宥められて今は落ち着いている。

「こうして謝ってることだし、どうか許してやってくれ」

 梁間くんの言葉に皆が頷く。

 社会の歯車を欠かさぬように。

 彼らは皆僕に対しあまりいい印象を持っていないだろうけれど、それでも仲間を傷つけてまで貶めようとした二人を心の底から許せはしないだろう。

 でも、形だけでも許さなければいけない。

 その行為を水に流し、忘れるしかない。

 許すことは忘れることに似ている。

 怨嗟は永遠に続くから、それを許しなくすことはつまりその事件を忘れることだ。

 自分たちから過ちを犯すような者が現れたことを忘れ、綺麗なお花畑で笑いあう。

 こんなことをしてしまったけど、根はいいやつだからと許容するしか、彼らを維持する方法はない。

 皆、期待しているのだ。

 自分たちは正しいのだ、と。

 自分たちの中に過ちを犯すような者は、間違っている者はいないのだ、と。 

「…………狂ってるなぁ、おい」

 小声で、うさりんがつぶやいた。

「あんな面倒臭い思いしてまで群れたがるとか、そんなに一人は嫌なのかよ」

「………………どうだろうね」

 少なくとも僕には分からない。 

 正しいと思う必要があることなんて、今の僕にはないから。

「よし、ちゃんと謝ったしこれで手打ちだ! みんなで焼き肉でも食べに行こう!」

「お、いいねぇ!」

「いっちゃおいっちゃお!」

 梁間の爽やかな笑みに皆がテンションを上げる。

「ほら、杉崎も行こう!」

「うん!」

 楽しそうに、いかにも自分たちは青春してますよー、というように笑いあって、彼らは教室を出ていった。

「………結局、佐上への謝罪はなしかよ」

「仕方ないよ」

 彼らはあくまで正しいことを信じるために頭を下げるのだから、間違っている僕に頭を下げることにはなんの意味も利益もない。

「じゃあ、僕らも帰ろうか」

 そう言って踵を返したところで、

「へーい佐上くん」

 体中の筋肉が硬直した。

 心臓が早鐘を打ち、焦点が定まらなくなる。

 声の主は軽快なステップと共に僕らの元へとやってきた。

「し、白峰さん………」

「いやな………事件だったね………」

 シリアスな表情を浮かべた後、即座にいつもの真顔に戻って、

「災難だった佐上くんは私が励ましてあげましょー」

「えっ」

 突然の申し出にもう思考が追い付かない。

 優しすぎるでしょこの人。僕みたいな窓際族にまで挨拶をしてくれるばかりかこうして気にかけてくれるなんて………。

「クレープでも、食べよ?」

「そ、そんな、悪いよ。白峰さんは梁間くんたちと焼き肉行ってきたらいいよ」

 慌てて遠慮の意を示すと白峰さんはさらりと、

「焼き肉太るし」

「ええー……………」

 自分に素直だなこの人…………。

「だから行こう。さあ行こう」

「い、いいのかなぁ…………」

 ちらりとうさりんを見ると彼は真剣な表情で、

「おいどうするよ佐上。さっきのステップで白峰がパンチラしたから写メ撮ったんだけどよ、とりあえずB2で現像でいいか?」

「うさりん………」

 下衆いようさりん。無垢な白峰さんになんてことを。後でケータイに送っといてください。 

「まあいいんじゃねえの? 白峰がいいってんなら」

「そうかなぁ………」

「というか俺に対して一言も話してくれない辺り徹底してやがるなこの女………」

 じろりと睨んだうさりんを意にも解さぬ様子で白峰さんは真顔のまま僕に問いかけてくる。

「どうでござるか佐上くん」

「あ、うん。………喜んで」

「おおー、やった」

 ガッツポーズを取りながら、いつものように感情を微かにその整った容姿に添えて、白峰さんは僕らに背を向け、顔だけをこちらに向けて言った。

「ほら、いこっ?」

「うぐふぅ……………」

「佐上ぃー!」

 照れたような表情に射抜かれ、膝から崩れ落ちた僕をうさりんが支えてくれた。

「ふふ………さすがに段階踏むの早すぎたかなぁ…………」

「ああ、そうだな…………まずは普通に会話できるようになってからだもんな、お出かけイベントは…………!」

 瀕死の僕を不思議そうに眺める白峰さん。

 彼女を心配させないためにも僕は何とか立ち上がった。

「じゃ、じゃあ行こうか」

「うんっ」


 白峰さんは思っていた以上に活発な子だった。

『ストレス解消にはバッティングがいいよ。うん、よし行こう』

 そう言ったかと思えばバッティングセンターに連れられ、

『佐上くん。150、150打とう』

 無茶振りをしてきたり、

『うえぃっ』

 白峰さん自身もスカートだというのにフルスイングしたり、

『えっと、バットで叩いた方がいいの、かな。あ、遠慮ですか………残念………』

 鉄バット片手にお茶目だったり、

『いい汗かいたね。これでクレープ食べても大丈夫でしょう』

 なんて白昼夢を見ていたり、

『ストロベリー美味しいですたい』  

 甘いものにはしゃいでいたり。

 クラスで見る彼女よりも、いくらかテンションが高そうに見えた。

『また遊ぼうね』

 そう言って手を振られたのがいまだに信じられない。あれ全部僕の妄想だったと言われても余裕で信じることができる。

「ホントにいい子だなぁ白峰さん…………」

 慣れているとはいっても心のどこかで落ち込んでいたのだろう。そんな僕を励ますためにわざわざハイテンションになってくれていたのだとしたら、もう彼女には足を向けて寝るわけにはいかない。

「ね、うさりん」

「ああ、そうだな…………」

 同意を求めて横を歩くうさりんを見ると、うさりんはひどく渋い顔をしていた。   

「え、何その顔……………」

 教室を出てから駅前で別れるまで白峰さんはずっとうさりんのことを無視していた。

 さすがにひどいと思い、友達のためにも何か言わねばと意気込んだんだけど、当のうさりんが、

『逆に考えるんだ…………無視されちゃってもいいさ、と』

 マゾヒズム全開だったのでとりあえずはスルーすることにした。

「いや……………なんでもねえ」

 口ではそう言いながらも渋い顔をやめない。

「………これは、ワンチャンあるかもなぁ」

 何が、と問おうとしたところでうさりんはこちらを向いた。

「そら、そろそろ俺の家着くぜ」

「わぁい、うさりんの家だ。佐上うさりんの家大好き」

「お前…………」

 うさりんは僕に憐みの視線を向けて、

「いくらクラスで存在感ねえからってそんな自虐ネタしなくてもいいだろ…………」

「え、そんなにないの僕の存在感」

「おお、それはもう………………あん?」

 聞き捨てならない言葉を止めて、うさりんは足を止めた。

「どうしたの?」

 聞きながら彼の視線の先を見る。

 うさりん宅の一軒家。

 その入り口に、誰かが立っている。

 夕闇の中、すらっとした長身の影はこちらに気づいたようで手を振りながらこちらへ歩いてきた。

「おおい、十波。帰ってくるの遅いぞ。待ちくたびれたってかお腹すいたーんって感じ………ん?」

 近づいてきて、ようやくその顔が見えた。

「あれ、佐上? なんで?」

 不思議そうに首をひねる彼を、僕は知っている。

「梁間、くん……?」

「おお、梁間だよ。あ、いや、はーりまーだYO!!」

 何故かラップ調にそう言った梁間くんにうさりんが溜息を吐く。

「やめとけ梁間。こいつあんまアニメの副音声とか聞かねえんだよ」

「え、マジか。お前とつるんでるからてっきり同類かと思ってたんだが…………」

「ギャルゲはよくするからな。今日は徹夜で攻略だぜ」

「お、いいなぁ。俺も参加していい?」

「佐上がいいっつったらな」

 気さくにうさりんと話している彼の名を僕は知っている。

 でも、気さくにうさりんと話している彼を僕は知らない。

 言葉を失っている僕に気づき、うさりんが梁間くんの脇を小突いた。

「つうか梁間。テメエ説明も何もしねえから佐上が固まっちまってんじゃねえか」

「え? ああ、ワリ。そういやそうだった。やー、まだ慣れないな、うん」

「テメエ………佐上だからよかったものの他の奴にばれたら大惨事だぞ」

「そうだなぁ。これからは気をつけるよ」

 あはは、と苦笑してから、梁間くんは僕の方を向いて、言った。

「やぁ佐上。まぁこんな感じなんだけど、改めてよろしく」

「え?」

「学校の梁間はハリボテだってことだよ」

「梁間だけにか? あはは、十波は面白いことを言うなぁ」

「面白くねえよ面白いのはお前の頭ン中だよ」

「あはははは」

 爽やかに笑う梁間くんと、溜息を吐くうさりんを交互に見て、それから僕は右の頬を引っ張った。

「………痛くない」

「え、そんなに信じられない? 俺そんなにイケメン?」

「いや顔は演技あるなし関係ねえだろ…………」

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