道長の野望?
「この世をばわが世とぞ思う望月の 欠けたることのなしと思へば」
歴史の授業でも習う有名な歌ですね。
一般的には「この世は自分の思う通りになる」という感じで道長の権威を表すようなものと言われているが……これ、我が世と思っているのは「望月」だと思うのです。
もちろんそれは道長自身を象徴はしているけど、最初にあるような意味ではなく、「位人臣極めた自分であるが」という感じ。
そして、「欠けたることのなし」、そんな風に思っていられるのはあなたのおかげですよ。
という感謝の歌なのです。
誰に感謝しているのか、それは道長に唯一、ずばずばと物を言うことのできた藤原実資でした。
道長は実資に返歌を求めたようですが、道長に対して歌を返すということは、お世辞の類の歌を返すことになります。
古今和歌集にもあるように、そんな歌は歌の道から外れるようなものですので真面目な実資にはそんなことはできません。
もちろん長い付き合いの道長もそんなことは知っています。
そう、道長のこの歌は堅物の実資をちょっと困らせてやろうっていう知的な意地悪だったのです。
さぁ、どうする?こんな歌を作ったぞ?返さない気ですかな?(笑)みたいな。
一休さんの将軍様みたいなイメージだ……
さてさて一休さん、ではなく実資さんはどんなとんちで切り返したかというと……
「唐の詩人、白居易は親友のあまりにも素晴らしいその詩に対し、返すことが出来ず、ただその歌を吟詠するのみで気持ちを表したと言います。」と言って道長の歌を繰り返し吟詠したんだそうです。
道長はきっとその時、「実資らしいな」と苦笑いしたんじゃないかと思いますよ。