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第六話

「……あれ? ここ、どこ?」


 優夢は目を覚ますと寝ぼけきっている頭で部屋を見回す。

 その部屋は彼女の住んでいる部屋でもよく遊びに行く友人の家とも違い、優夢はどうして自分がこんな部屋で眠っていたか覚えていないようで首をかしげた。


「昨日は黒須くんに助けて貰って……黒須くんに? な、何で、私はこんな恰好で寝ていたんですか!?」


 寝ぼけ頭で昨晩の事を思い出そうとしたようだが、頭はまともに動いていないようで顔を洗おうと思ったようでベッドから抜け出そうとすると自分の格好が裸にYシャツだけだと言う事に気づき、驚きの声を上げる。


「……何もしてないよね?」


 優夢はこの部屋に来た経緯をまったく覚えていないようで、伐に押し倒された可能性を否定しようとする物の否定しきれないようで顔を青くする。


「……朝からうるせえよ」

「う、うるさいじゃなくて、状況を説明してください!?」


 その時、部屋のドアが開き、呆れ顔の伐が優夢の考えを否定し、突然の伐の登場に彼女は驚きの声を上げる。

 優夢が朝からぎゃあぎゃあと騒ぐため、目が覚めてしまったようで欠伸をすると、優夢は自分の貞操は大問題のようで顔を真っ赤にして詰め寄った。


「……何もしてねえよ。寝てる女を食うほど俺も飢えちゃいねえよ」

「そ、そうですか……あ、あの、ここは黒須くんのお家で良いんですよね?」


 伐は眉間にしわを寄せ、優夢に手など出していないと言うと、言葉で聞いた事で事実確認はできていないと言う不安はあるものの一先ず、安心できたようで胸をなで下ろす。

 自分はまだ大切なものを失っていないという事で、少し冷静になったのか、この状況を確認したいのか、伐に今の状況を確認する。


「あぁ……」

「あの、どうして、私は黒須くんのお家で眠っていたんですか?」


 優夢は自分が裸にYシャツだけだと言う事を思い出したようで、伐に詰め寄った時にベッドから落した布団をつかみ、身体を隠す。


「別に慌てて隠すようなもんでもねえだろ。減るもんじゃねえんだ」

「へ、減りますよ。尊厳とか、女の子の大切なものとか。いろいろとあるんです!!」

「尊厳ね。それに食ってはいないが、確認するものはしっかりと確認したからな」

「しっかり確認したってなんですか!? 何もしてないって言ったじゃないですか!?」


 優夢の様子に伐は小さくため息を吐くと優夢は顔を真っ赤にして言うが、伐は優夢の寝てる間に確認する事はしっかりと確認しており、優夢の顔の赤みはさらに増して行く。


「あ? そのまま寝かせて、制服をぐちゃぐちゃにして良かったのか?」

「そ、それは困りますけど……」

「だいたい、人に文句を言う前に、お前をここまで運んできたのは誰だと思ってるんだ?」

「そ、それです。どうして、私は黒須くんのお家で寝ていたんですか?」


 伐は着替えさせるには着替えさせる理由があったというものの、優夢には納得できるものではない。

 伐は早くから起こされた事もあるのか、不機嫌そうに眉間にしわを寄せると、優夢は状況を整理しようと思ったようで改めて、自分が伐の家にいる理由を聞く。


「昨日、人が話をしてる間に寝やがったんだ。公園に捨てて来ても良かったんだけどな」

「そ、それはすいません。だ、だけど、仕方ないじゃないですか? ずっと、寝不足だったし、昨日はおかしな事に巻き込まれたし……すいません」

「……緊張感も何もあったものじゃねえな」


 伐は公園で交換条件の話をしようと思ったのだが、優夢は極度の近況や最近の体調不良が原因で眠ってしまったようであり、伐は無駄な労力を使わされてしまった事が気に入らないようで眉間にしわをよせる。

 そんな伐の様子に優夢は申し訳なく思ったようで肩を落としながらも言い訳をした時、彼女のお腹が可愛い悲鳴をあげた。


「……一先ずは着替えろ。話はそれからだ。それとも着替えさせて欲しいか?」

「じ、自分で着替えます!? な、何をするんですか!?」

「風呂場は部屋を出て右だ」

「はい……下着、どこ?」


 顔を真っ赤にする優夢の様子に伐は話し合いにもならないと思ったようで着替えるように言うとタンスからきれいに選択されたバスタオルを取り出し、優夢に投げつける。

 優夢は突然の事に頬を膨らませるが、伐は風呂場の場所を彼女に伝え、部屋を出て行く。

 彼の背中を見送った優夢はバイト帰りの途中だったため、汗も流していない事を思い出し、ベッドの横にかけてあった制服を手に取り、シャワーを浴びようと風呂場に行こうとするが、Yシャツの下は何もはいていない事を思い出す。


「……忘れていたが、残りは脱衣所にある乾燥機に突っ込んであるから、自分で引っ張り出せ」

「は、はい。何から何まですいません」


 下着なしでは安心できないようで優夢はどうしようかと悩んでいるといつまでたっても動き出さない優夢に気が付いたようで伐は再度、部屋に顔を出して彼女の探し物の在処を教える。

 優夢はその言葉で安心したのか胸をなで下ろすとバスタオルと制服を抱え、風呂場に向かって歩き出す。


「あ、あの、黒須くん」

「……さっさと座れ」


 シャワーで汗を流して制服に着替えると、伐を探して居間らしき場所に顔を出す。

 知らない場所にいるせいか、やはり、1人でいるのは不安なのか伐を見つけて、少しだけほっとしたようだがその時に、再び、彼女のお腹が悲鳴を上げた。

 その様子に顔を真っ赤にする優夢だが伐は気に留める事なく、テーブルに座るように言うとトーストとスクランブルエッグ、ベーコンと生野菜のサラダと言った簡単な朝食を1人分、運んできてくる。


「あ、あの」

「……朝は食わない主義なんだ」

「そ、そうなんですか? そ、それじゃあ、いただきます」


 優夢は伐が運んできた食事が1人分の事と伐の性格から自分の分ではないと思ったようだが、伐は優夢の分だと言う。

 伐の言葉に空腹が限界に来ていたようで優夢はトーストにかぶりつく。


「……」

「あ、あの、黒須くん、タバコは体に良くないですよ」

「……うるせえな。他人の趣味、趣向に口をはさむんじゃねえよ」


 伐は優夢の食事が終わるまでは話し合いにならないと思っているようで、テーブルの上に置いてあるタバコと灰皿に手を伸ばすとタバコを口にくわえてポケットからオイルライターで火を点ける。

 後輩で年下である伐が当たり前のようにタバコを吸う姿に優夢は非難するような視線を向けるが、伐は優夢にとやかく言われる筋合いはないと気だるそうに言う。


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