始まり
ビルが建ち並ぶ街。そこは砂にまみれており、街全体が黄色く霞んで見える。辺りは静寂に包まれ、風が吹き抜ける音以外は何もなかった。ゴーストタウン、いや、いっそ砂漠の荒野と言ったほうが近い。
とはいえ、人が居ないわけではなかった。街の中央、広場のような場所には沢山の死体が転がり、地面を大方埋め尽くしていた。死体は全て斧、ナイフ、刀、槍など、一様に武器を手にし、自らの血か、他人の血に染め上げられている。
その広場の中心にはこの街で唯一生き残った二人の人間がいた。一人は地面に座り込み、力なくうなだれている少年。もう一人の青年は少年に向かって何か怒鳴っていた。
「勝手にしろ」
青年は舌打ちしてそう吐き捨てると、少年に背を向け、背後から響くカチン、という音にゆっくり振り返った。視線の先に銃を持った少年がいた。銀色の二十五口径のリヴォルバー。だが銃口は青年ではなく少年自身のこめかみに向けられている。
震える手でゆっくりと引き金に指を掛け、言った。
「僕は、死んでない。だから、僕は……」
少年の言わんとしていることを理解したのか、青年は口角を吊り上げて笑い、今度こそ少年に背を向けて歩きだした。
引き金に掛けられた指に力がこもる。
「……僕は、ここで死ぬ」
乾いた音が街中に響きわたり、そして、真っ暗になった。
to be continued