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超短編 なろうラジオ大賞7

雨宿りの救世主

作者: 荒雪柳
掲載日:2025/12/21

テーマは『雨宿り』

『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』の対象となる超短編作品です。

 いつもより少し遅めの電車、窓の外を流れる雨にため息をつく。

 朝一番で病院に診てもらった足の怪我が疼く。雨の中、駅から学校へ歩くことを考えるとうんざりするほど憂鬱だ。

 やがて電車は停まる。意外にも降りる人間がぱらぱらといたことに驚く。こんな田舎の駅にこんな時間に用のある人間もいるのだな、と。

 もう一度白いため息をつき、冬の雨の中に消えていく傘を見送ると遅れてその後に続く。

 そこでふと気付く。

 誰もが素通りする無人駅の小さな待合室、ただ雨をしのぐだけの簡素な造りの中、一人の少女がぼうっと空を見上げている姿が目に入った。


「―――行かないの?」


 声を掛けた理由はいくつかある。ほとんど話もしたことのなく、何の関わりもないとはいえそれでもクラスメイトだ。別に不自然というほどでもない。

 だけどきっと違う。なんとなくこの非日常の空気に浸ってしまったのだろう。

 彼女は一瞬、自分のことだとはわからなかったのか、ゆっくりと視線を揺らし、やがて理解するとしばし見つめ合う。そして、あちらも自分が誰か気付いたのだろう。


「ちょっと、疲れてて……」

「そっか」


 不思議な感覚。きっとその言葉は嘘じゃない。彼女の声も顔色も、それが真実だと物語っていた。だけど、その眼だけは強く輝いているように見えた。

 立ち止まったままの自分、ベンチに腰掛けた彼女、静かで冷たい雨の中しばしの沈黙が流れた。


「……世界を、救ってきたの」

「は?」


 彼女の突拍子もない言葉、まるで少年の妄想のようなその内容に、咄嗟に何も返すことができなかった。だけど、彼女の口元に浮かぶどこか諦めたような笑みに、何か言わなければならないと思った。


「ありがとう」

「えっ……?」


 彼女が驚きを見せる。

 自分にだってわからない。どうしてそんな言葉が出たのか。彼女の言葉を信じたわけではないはずだ、でも、なぜか、そんな言葉がふさわしいように思えた。


「だって、助けてくれたんだろ?」

「それは……」


 言い淀む彼女を見ると、あるいは本当にそうだったのだろうと感じた。この非日常の空気のせいかもしれない。

 きっとそのせいだろう、と自分も待合室に入り、彼女から少し離れたところに腰を下ろす。

 そして、空を見上げる。先程彼女がそうしていたように。


「止んだら、一緒に行こう」


 隣で、小さく頷くのが見えた。

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