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異世界に行ったら最強になった  作者: 志良内達夫
第六章 マルケドーラ帝国の脅威
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6-6.帝王のビースト




 雅則とヒュンケルがロワール城で待っていると、ペレニスがもう一人とやってきた。

「なるほど、帝王は人族ではなかったか」

 ヒュンケルがペレニスが連れてきた者を見て言った。衣装はいかにも王様らしいが、顔は髑髏だった。

「初にお目にかかる。私はマルケドーラ帝国の帝王、ビースト・ティヌール・バジル。ビーストと呼んでくれて構わない。見ての通り、アンデッドだ」

と挨拶した。

「こちらも自己紹介しよう。私がここロワール城の主、魔王ヒュンケル。そして傍に居るのが魔王ハーロックだ」

 自己紹介されるとビーストは

「見た目は普通の人族に見える。だが二人の力は配下から聞いている。数千、数万の兵軍を全滅するくらいの極大魔法を使えるらしいな」

と第一印象を述べた。

「対面したいと聞いたが、応接室で話そうか。客には飲み物くらい出さないとな」

「いや、私はアンデッド。飲み食いはしないので気遣いは無用」

とビーストは遠慮した。

「わかった。しかし立って話すのもなんだから、部屋を替えよう」

 ヒュンケルがビーストとペレニスを応接間に案内した。

「で、対面の目的は?」

「魔王という者に会ってみたかった。興味がある」

 ビーストが素直に目的を話した。

「なるほど。私もアンデッドには興味が湧いてきた」

 ヒュンケルが言うと、ビーストはペレニスに

「ペレニスは戻っているように」

とマルケドーラに戻そうとした。

「しかし・・」

「心配ない。彼らと話をするだけだ。戻っていなさい」

 ペレニスはビーストを心配したが、抗うことはせず

「わかりました」

と転移して戻っていった。

「さて、邪魔をする者はいなくなった。いろいろ聞きたいことがあるが、教えてもらえないだろうか」

「その前に、なぜマルケドーラ帝国は、いや、お前は他国を制圧し、規模を広げている」

 雅則が聞いた。

「それは・・世界征服が夢だからだ」

「世界征服?・・その自分の夢を実現するために他国を犠牲にしているのか」

「世界征服、いや天下を取るのは男のロマンだ」

「男のロマンって、お前はアンデッドだろう」

「・・実は、もとは人族なんだ」

「え?」

「この世界のではない。異世界から転移してきたんだ」

 それを聞いて、ハーロックとヒュンケルは顔を見合わせていた。そして

「お前も転移者だったのか」

とビーストに言った。

「と言うことは、二人も?・・」

 雅則とヒュンケルがうなずくと、ビーストは安堵したように

「転移者は他にも居たんだ」

と肩の力を抜いた。顔は髑髏だから表情はない。

「いくら異世界から来た者だからって、世界征服とか天下を取るとか、この世界の生き物を犠牲にする行為は許させないぞ」

 雅則はビーストをいましめるように言った。

「はじめはその気はなかった。聞いてくれるか。私は鈴木守という営業マンだった。就職先が見つからなかったので、たまたま営業マンになれただけだが、営業成績は上がらず、そのうち会社も倒産。新しい就職先も見つからず、引きこもりになってしまった。そんなとき、この世界に引き込まれ、気づくと人間ではなくアンデッドになっていた」


*****


 守は目を覚ますと、見知らぬ場所に居た。引きこもった自分の部屋ではない。ダブルベッドより大きなベッド。そして部屋というには広すぎる空間。

「お目覚めですか?」

 近くから女の声がした。母親の声ではない。もっと若い女の声だった。

 守は一人っ子で、姉も妹もいない。まして彼女もいない。


 ベッドで身体を起こすと、ベッドの傍に若い女が控えていた。

「ここはどこ?・・きみは誰?」

「お忘れですか? 私はペレニス。そして私たちのご主人様、ビースト様」

「ビースト?」

 守は部屋の中にある鏡を見て驚いた。自分の顔がドクロになっていた。

「どうなっている・・」

「記憶を無くされたのでしょうか」

「説明してくれ」

 ペレニスが話してくれた。


 数百年前、世界は多種な生き物が存在し、生死をかけて争っていた。地上に降臨したビーストが、それぞれの縄張りをつくらせ異種間の争いを鎮めた。そして力を使い果たしたビーストは深い眠りについた。ビーストに仕えていたペレニスたちは、ビーストの守護者として眠りに入ったビーストを守ってきた。


 ペレニスたちはビーストが眠りから覚めるのを待った。そしてビーストが再び目を覚ました。

 どうやら守は、引きこもっているうちに、ビーストに降臨という形で、この世界に引き込まれたようだった。

 守が玉座の間に行くと、ペレニス以外に2人の守護者が控えていた。

「あらためて自己紹介してくれないか」

 守が言うと

「僭越ながら、私から紹介させていただきます。私は黒悪魔ダークデビルのイヴァンと申します」

「私は動死体ゾンビのドミニカです」

「そして私は白悪魔ペールデビルのペレニスです」


 守は、最初は頭の中も混乱していたが、そのうちこの世界の住み心地に慣れてきた。アンデッドだから、食欲や睡眠欲、性欲も無くなっていた。


*****


「そして思わず『この世界をもっと知りたい。世界征服もいいかも・・』と欲が出てきて、それを聞いたイヴァンに『実現しましょう』と促されて今に至っている」

「そのために何人の人族や生き物を殺めてきた」

「イヴァンやペレニスにほだされているうちにめるわけにはいかなくなった」

「彼らは人族でも魔族でもない。悪魔だ。お前は利用されているだけだ」

「そんなふうに考えたくない。みんな私に尽くしてくれている」

「目を覚ませ。自分が何をしているのか」

「では、なぜ2人は魔王なんだ」

「そういうことにしているだけだ。ただの人間だよ。ただ俺は、この世界で、この世界の生き物たちが共存して生きて行くのがいいと思っている。そして、それを実現させている」

 雅則が、この世界における自分の生き方を話した。

「きみたちの生き方がうらやましい。が、俺はアンデッドとしてこの世界に居る」

「人族も魔族もアンデッドも関係ない。みんな仲良く出来ればな」

「そういう生き方もあったか。・・しかし、もう遅い。今は数えきれない国を滅ぼしたり、従えさせてきた。今さら生き方を改めるつもりはない」

「やり直しはこれからも出来る。未来は変えていける」

「・・かも知れないが。・・2人に会えてよかった」

 ビーストは転移してマルケドーラに戻った。















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