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異世界に行ったら最強になった  作者: 志良内達夫
第五章 スラーレン法国編
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5-5.廃墟の城

「どうやって行くつもり?」

「考えてない」

「まったくミリアは。これだから世話が焼けるのよ。任せて馬車を用意するから」

 ユリカが馬車を調達した。その御者はミシェールだった。

「おまえか」

 雅則はミシェールを見て思わず声を発した。

「え? ユリカの頼みって・・」

「カシール村まで乗せて行ってほしいの」

「嘘だろう。オーグが出るという噂だろう?」

「ソードマスターになろうという者がオーグを恐れてどうするの?」

 ミシェールはユリカに檄を飛ばされていた。


 雅則たち4人はカシール村に向かった。

「ミリアの両親はオーグに襲われた?」

「ううん。襲ってきたのは別の魔物。カシールよりこっちに近い山から出てきたの」

「じゃあ、オーグ以外にも魔物が出る可能性があるな」

「ミシェール、あなたの剣の腕が振るえるわね」

 ユリカがミシェールをたきつけた。

「俺の剣は魔物を斬るためのものじゃない」

「じゃあ何を斬るというの? ただのお飾り?」


 前方の上空に黒いものが現れた。

「フライアントラー(飛び蟻)だわ。それもかなり大きい種類の」

 ユリカは御者台のミシェールの隣に移った。

「あなたと座りたかったわけじゃないからね」

 ユリカはクロスボウを呼び出した。その弦を引いて狙いを定めると、合わせてもいない光の矢が飛び蟻に向かって飛んだ。マジックアロー(魔法の矢)だ。

 雅則は美緒が聖剣を呼び出すのと似ていると思った。

 矢が飛んでくる蟻に命中すると、蟻は落ちていった。

「ユリカさんのマジックアローは強力なの。中位魔法でも最強クラス」

「そんなに褒めなくていいから。でも連続で放てるけど、限度があるわ」

 飛び蟻の数は50、いや100近くある。ミリアも飛び蟻をパワースマッシュで落としていった。

「大きいわりに防御率は低いようだな。まとめて倒せるかな。フィンガーガトリンガー!」

 雅則は手から指弾を連続で放った。近づく飛び蟻が次々に落とされていった。

「凄い。初めて見た攻撃魔法だわ」

 ユリカも雅則の力に驚いていた。

「たいしたこと無いよ」

 残った飛び蟻は退散していったが

「あの方向にはロワール城があるわね」

とユリカが言った。

「以前にスラーレンの周辺を警備がてら散策したとき、廃墟になったロワール城があると聞いたの。近くまで行ったけど城には入らなかったわ」

「そこに魔族かなにかが棲んでいる可能性があるな。ミリアたちを襲ったものかも知れない。想像だけど」

「カシールに行く途中だけど、寄ってみる?」

 ユリカはその気満々だ。雅則はユリカが美緒に似ていると思った。

「わざわざそんなところに寄っていくのか?」

 ミシェールは、その気はないようだ。

「将来のソードマスターが何を怯えているのよ」

 ミシェールにはユリカも怖い存在かな?


 ロワール城に近づいても何も襲ってこない。

「ただの廃墟かな」

「せっかくだから探検していきましょう」

 城の中に入っていけた。

「中は廃墟にしては綺麗だな。誰かが掃除に来ているのかな」

 奥に入っていくと広間があって高い位置に玉座のようなものがあった。

 城のつくりはどこも同じようなものか。そう思っていると

「よく来た、諸君」

と声がした。

「やっぱり誰か居るのか」

 玉座に光が照らされ、男(?)が現れた。

「私はここのあるじになった魔王ヒュンケルである」

 男は名乗った。

「フライアントラーをほぼ全滅させられるほどの者たちよ。ここに来るだけの価値がある」

「あのう。ここが廃墟だと思って探検に来ただけなんだけど」

 ユリカはびびらない。

「探検か。残念だったな。ここはこの通り綺麗にして使っている。名前を聞こうか」

「スラーレン衛兵隊魔法戦士ユリカ」

「私も同じ魔法戦士ミリア」

「俺は・・ただの衛兵です」

 ミシェールが一番弱腰だ。魔法も使えないようだし。

「俺はワリキュールから来た魔王ハーロックだ」

 雅則は魔王を名乗った。

「魔王だと?」

 ヒュンケルも驚いたようだ。ミリアが

「ハーロック伯爵じゃないの?」

と聞いた。

「エランデルでは伯爵の爵位をもらったが、ワリキュールでは魔王を名乗っている」

にわか魔王か。笑わせる」

「自己紹介しただけだ。魔王はここで何をしている」

「昼寝しているだけなわけないだろう。最近になって山々に張られていた結界が無くなった。スラーレン法国が関与しているようだから進攻するか考えているところだ。人族が入ってきて、棲んでいる生き物たちが迷惑を被っているらしいからな」

「私たちはただの衛兵で、王宮が何を考えているかは知らないけど」

 雅則も

「俺たちは廃墟になったこの城を見に来ただけだ。争うつもりはない。仲良くしないか」

とヒュンケルに提案した。

「面白いことを言う。俺の臣下になるなら考えてもいい。使い物になるかは知らないがな」

「おまえに就くつもりはない。交渉決裂なら、俺たちもあきらめてここを去る」

「このまま、そうですか、と帰すと思っているのか。お前たちにはここに居る俺の臣下の魔物たちの腕慣らしの相手になってもらう」

「やめておけば? 折角の臣下を失うことになるぞ」

 広間の周りに魔物が続々と現れた。

「現れたね」

「私たちの腕試しの相手になってもらうわ」

「本気で言っているのか? 連れてこなければよかった」

 ミシェールは早くも震え出した。

「ミリア、自分の身を守ることだけを考えて」

 ユリカが面倒を見てきたミリアに気遣うように言った。

「はい」

「マジックアローは面倒だから、もっと強力な攻撃魔法を使うわ」

 ユリカとミリアは襲ってくる魔物にライトニング(電撃)を浴びせて倒していった。

 ユリカのライトニングは強力だった。魔物たちの身体を貫いた。

「なかなかやるな。しかし体力がどのくらい持つかな?」

「こいつらを倒すのに体力を減らすことはない」

 雅則もフィンガーガトリンガー(連続指弾)で魔物たちを倒していった。

「バカにしていたが、力はありそうだ。魔王を名乗るお前の力を見せてもらおうか。召喚獣ゲオ」

 ヒュンケルは召喚獣を出した。

「召喚獣も呼び出せるのか。え?・・小さくない?」

 背丈は10メートル、いやそれより低いかも。

「俺の呼び出せる召喚獣だ。小さめだが力はある」

「あそう。・・ミシェール、剣を貸して」

「え? 丸腰になったら・・」

「どうせ戦えないだろう?」

 雅則はミシェールから剣を受け取ると、高く飛び上がり召喚獣に向かって剣を振り下ろした。召喚獣は真っ二つに裂けて消滅した。

「嘘でしょう」

 ユリカも驚いた。

「これが俺の力だが」

 雅則はヒュンケルに言った。

「信じられん。魔王というのはでまかせではないようだな」

「ただ魔王を名乗っているだけなんだけど。俺と勝負する?」

 すると

「さっきの仲良くする話だが・・」

「え?」

「その話に乗ってもいい」

「まじ・・」


 ヒュンケルは宴の会を催してくれた。

「料理も美味しいけど、魔族のダンスショーは初めてだな」

「夢でも見ているみたい」

 ユリカも美味しく食していたが、ミリアはとまどっていた。

「この先のカシール村なんだが、オーグが居るのか?」

 雅則はヒュンケルに聞いた。

「そこのオーグなら俺の臣下にした。あそこでは野菜や果物が採れる。働いてもらっている」

「オーグが野菜つくりを?」

「野菜は人族だけじゃない。オーグの食料でもある」

「オーグの食料は人族ではないのか?」

「そんなことはないだろう。俺はオーグが人族を食っているところを見たことはない。肉食系というより草食系の魔物だ」

「エランデル国のオーグはアズパイアという果物を狙って村を襲っている。ワリキュール王国辺りにも居て、俺はどちらも退治している。オーグは魔族とは違うんだろう?」

「詳しくは俺もわからん。俺はここで魔王ヒュンケルを名乗っているが、もと人間だ。異世界の」

「え? おまえも?」

「まさかハーロックも?」

「俺も異世界の人間だ」

「ならなおさら仲良くしたい。俺は元の世界では佐藤誠という平凡な営業マンだった」

 ヒュンケルが雅則に手を出した。

 雅則は

「俺はこっちの世界ではハーロック伯爵とか魔王ハーロックを名乗っているが、本名は横山雅則という大学生だった」

と打ち明けてヒュンケルと握手を交わした。

「ちょっと何をしているのよ」

 ユリカは信じられない顔をした。


「カシール村に行ってオーグ退治をしないでくれよ。大事な仲間だからな」

「わかった。しかし襲ってくれば、その約束は守れないぞ」

「オーグも知性も理性もある。今は人間、こっちの世界では人族というらしいが、言葉を理解し、話せるようになった」

「え? そんなに知性があるのか」

「同じオーグでもハーロックたちが遭遇したオーグとは種族が違うかもしれない」

「それなら理解出来る」


 雅則は

「ミリア、村に行ってみるか?」

とミリアに聞いた。こっちに出向いてきたのはミリアの故郷のカシール村を訪ねるためだった。

「今はオーグが暮らしているんでしょう?」

 ユリカが言うとヒュンケルが

「人族とオーグが共同生活をしている」

と言った。

「この世界は人族や魔族やいろいろな生き物がいるようだ。そういう世界だから、それぞれが敵対するのではなくて共存していくのがいいと俺も考えている。ヒュンケルのようなものが居ることは心強い」

と雅則は自分の思いを口にした。

 そしてミリアに

「スラーレンに戻るか村に行ってみるかはミリアに任せる」

と言うと

「行ってみたい。故郷の村だから」

とミリアがこたえた。

「ミシェール、カシール村まで頼むぞ」

 だがミシェールは

「もう帰りたいんだけど」

と弱気だ。

「帰るなら一人で帰ってね。馬車は置いて」

 ユリカに言われている。

「また魔物に襲われないか?」

「ヒュンケルが魔物に手出しさせないから安心しろ」


 ミシェールの馬車でカシール村に向かった。













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