3-7.エランデル大攻防戦
「ハーロック様、ダマリン様から連絡が・・」
ワリキュール軍が出陣し、雅則がワリキュール宮殿でシルビアを葬った後
のことだった。
リサが雅則に鳥獣オウムを近づけた。
「ハーロック。ワリキュール軍はエランデルに向かっている」
オウムからダマリンの声がした。
「イミナスは危機を免れたが、エランデルが危ない」
「わかった。ありがとう」
ワリキュール王国から出陣した兵軍は、エランデル国に向かっているよう
だった。
雅則は悩んだ。
「4万の軍より先にエランデルに戻るほうほうは・・ないな。それならエラ
ンデルは悠介と美緒っちゃんに任せるしかないか」
すると
「ダマリン様に頼んで鳥獣テルザを呼びましょうか」
リサが提案した。
「なに、テルザって」
「大きな鳥獣で、人を乗せて呼ぶことが出来ます」
「私もイミナスとワリキュールの移動に利用しているわ」
イビルもそれを推奨した。
「太古の昔に、空飛ぶ恐竜が居たらしいが、そのようなものか。それは頼も
しいけれど、空は苦手だな。
雅則にも苦手なものがあった。高いところが苦手だった。
「高所恐怖症も克服するようかな」
◇
そのエランデル国上空に、ワリキュールの飛行船団も迫っていた。
「ランスロット隊長。空から飛行船団が・・」
イミールがランスロットに知らせた。
城壁から空を見上げたランスロットは
「空飛ぶ魔獣?・・いや、なんだあれは・・」
見たことのないものが空から迫ってくるのを確認した。
「飛行船団です。・・あの紋章はワリキュール王国のものです」
ワリキュール軍がイミナスに迫ってきたとき、雅則たちに同行してイミナス
に行ったときに、イミールはワリキュール軍の飛行船団を見たことがあった。
飛行船団はエランデル宮殿に近づいて止まった。
「エランデル国にとっては飛行船の一団を見ただけで驚くだろう。もうすぐ
地上からも軍が迫る。その数をみれば戦わずして降伏するだろう」
リステルは空の上から高見の見物を楽しむことにした。
「数万の軍も迫っています」
ランスロットは地上からのワリキュール軍が迫ってくる情報も得た。
「ワリキュールは本気だな」
セバスも飛行船団を確認して出てきた。
「ワリキュール軍だ。地上からも軍が迫っている」
ランスロットがセバスに状況を教えた。
「我々の戦力でもちこたえられるか?」
「それは無理かと。数からして魔獣より苦戦するだろう」
セバスはグランデルに会いに行った。だが
「無理だな」
グランデルは、あっさりと言った。
「魔王様」
「いくら魔王でも何万人もの軍を相手には出来ない。大魔獣もまだ目を覚ます
気配はない」
セバスはグランデルの弱気に、尊敬の念を抱いていたことに後悔をはじめた。
リリアがランスロットに
「ハーロック伯爵の友人の力を借りましょう」
と提案した。
「伯爵はワリキュールに行ったようだけど、美緒さんたちの力を借りれば、彼女
の召喚獣が飛行船団や兵軍を潰してくれると思うわ」
「たった一人や二人で?」
「あなたは異世界人の力を知らないから不安でしょうけど。私たちでワリキュー
ル軍に立ち向かえるの?」
リリアはナナに
「悠介さんと美緒さんを呼んできてほしい」
と頼んだ。
ナナは飯店『ハナ』に駆け込んだ。
「ワリキュール軍が向かってきています」
「ワリキュール軍が? 雅は、そのワリキュールに行っているらしいけど」
するとリンスが現れた。
リンスはダマリンがリサの代わりにエランデルに潜ませている魔族だ。
そのリンスが悠介に
「指示を」
と言った。
「指示ったって・・雅、いやハーロックとは連絡はつかない?」
「ダマリン様に確認します」
リンスは鳥獣オウムで連絡をとった。
「オウムを介してワリキュールに行ったハーロック様と話が出来るようです」
そう聞いた悠介は
「まるでネットのチャットみたいだな」
と思った。
◇
ダマリンからリサに連絡があった。
「ハーロック様、悠介さんが話をしたいらしいです」
「え? 出来る?」
「オウムを介してエランデルに居る悠介さんと出来ます」
それには雅則も
「そんなことも出来るんだ」
と驚いた。
「雅、聞こえるか」
オウムから悠介の声が聞こえた。
「本日は晴天なり」
「こんな時に楽しそうだな」
「ワリキュールの街は大きくて楽しいところもある。招待したい」
「行けたらな。ワリキュール軍が迫っている」
「分かっている。こっちの宮殿の中は片付けた。兵軍のほとんどが出陣した
ようだったから、宮殿を確認したら、スラーレン法国から来たシルビア妃が、
国王亡きあと、玉座に座ろうとしていた。だから先に始末しておいた。
軍が何班かに分かれてそっちに向かっている。『流星雨』を警戒している
のかも知れない。そっちにはすぐには戻れないので、あとよろしく」
「軽く言うな! まあ、やれるだけやってみるけど」
「れべる500はあるんだろう? あてにしているから。何とかそっちに行
く手段は考えるから持ちこたえてくれ」
話を終えた悠介は、美緒を連れて待たせていたナナと城内に入り、リンス
は外で待機した。
「飛行船団も来ているの?」
美緒はワリキュールの飛行船の一団を見て驚いた。
「地上からも軍が近づいている」
ランスロットも成す術がないようにあせり顔だった。
「どっちを先に潰す?」
悠介に言われて美緒は
「かなりの数の兵軍だし、踏みつぶすほうが簡単だから、地上からにするわ」
とこたえ
「ゴジラ召喚!」
美緒が空に向かって叫ぶと、ゴジラが出現し、地上に降り立った。
「勇者の召喚獣?」
リリアやイミールは美緒がゴジラを召喚するところを見たことがあるが、
ランスロットは始めてだ。それを見て驚愕した。
ゴジラはワリキュールの兵軍を踏み潰していった。
飛行船では
「魔獣か? 召喚獣か?」
リステルもゴジラの出現に驚いていた。リステルはゴジラを知らない。
「飛行船から魔獣を攻撃!」
リステルの指令に、ゴジラに飛行船団から攻撃が開始された。
「ゴジラ! 飛行船に火を浴びせて!」
美緒が叫ぶと、ゴジラは口から火を吐いて飛行船に浴びせた。
しかし飛行船は魔法防御でゴジラの炎を防いだ。コア(魔核)の力が働いた。
「嘘でしょう!」
「強化してきたな」
美緒も悠介もゴジラの攻撃が効かないことに驚いた。
「飛行船はマジックバリアー(魔法障壁)で防御している」
イミールも驚いていた。
「魔獣を召喚した者がエランデルに居る。降下して兵ともども殲滅せよ」
リステルの指令に、飛行船団から戦士が降下しはじめた。そして降り立つ
とエランデル国の衛兵たちに魔法攻撃を放ってきた。スラーレンから送り込
まれたマジックエンジェルスたちだ。
「あれは魔法戦士だ。気を付けろ!」
ランスロットが叫んだ。
「女の戦士隊って、そんなアニメもあったな」
悠介は子供の頃に見たアニメを思い出した。
「魔法戦士隊、応戦して」
イミールが配下の魔法戦士たちに指示を出した。
「魔法の撃ち合いかよ」
悠介の言葉に
「私たち魔法戦士隊のレベルは、そんなに高くありません」
とイミールが言った。
「しょうがないな。ナナ、美緒ちゃんを守ってくれ」
悠介は飛び出すと、襲ってくるマジックエンジェルスに
「フィンガーガトリンガー」
を放った。彼女たちは簡単に倒れていった。
「え? レベル低くないか?」
悠介も魔法攻撃を受けたが、防御魔法が働いて傷つくことはなかった。
レベル500の身体だ。
「彼女たちのレベルも高くない。それに(彼女たちの攻撃が)当たって
も何ともない」
「それは悠介さんのレベルが高いからでしょう」
美緒に言われて
「そうか。・・あいつらは俺が倒す」
悠介は降下してきたマジックエンジェルスたちにフィンガーガトリン
ガー(連続指弾)を放って倒していった。
「さすが勇者ですね」
イミールが悠介を称えた。
「勇者と言われるのは悪くない」
一方、リステルはイラついた。
「たかがエランデルを堕とすのに、何を手間取っている。魔光弾発射!」
飛行船から魔光弾を落とし、城を壊していった。
「俺の力じゃ飛行船を相手に出来ない。美緒ちゃん、ゴジラを出したまま
モスラも召喚出来ないか?」
「言うのは簡単だけどさぁ。やってみる。モスラ~!」
モスラも現れた。
「まさか・・モスラまで召喚出来ちゃった」
モスラを召喚した美緒自身も驚いた。
「さすがレベル500の美緒ちゃん。雅は魔王を名乗ているらしいから、
美緒ちゃんは魔女と呼ぼうか」
「絶対にいや!」
美緒は小学生の頃から美人で、スカートめくりの被害に遭っていた。
そのため中学生時代から剣道を、高校生になってから合気道も習いはじめ
相手が男でも容赦なく倒していた。
その頃、テレビ番組のブームから魔女というあだ名をつけられるように
なり、それがトラウマになっていた。
「飛行船団を羽根であおって吹き飛ばせないか?」
「あなたは言うだけでいいけど・・モスラ~飛行船団を吹き飛ばしてぇ!」
モスラが羽根を仰いで風を起こすと、飛行船団は留まっていられず飛ば
されていった。
「コアで相手の攻撃を防げるんじゃなかったのか」
飛行船ごと煽られて飛ばされたリステルは、飛行船内で身体を打ち付け
られた。
「風は防げません」
飛行船が降下していくと
「何が強化された飛行船だ。吹き飛ばされてしまったじゃないか!」
と命を落とした。
地上でもゴジラに踏み潰されるしかない軍の兵は
「魔獣には適わない。後退!」
と撤退をはじめた。
一方、雅則たちはダマリンが手配した鳥獣テルザに乗ってエランデル方面
に飛んでいた。
「ゆっくり飛んでね。落とされないだろうな」
雅則はテルザの背中でじっとしていた。
「もっと早く飛べるけどぉ」
イビルに言われて
「いい。ゆっくり行く」
と雅則はテルザから落ちないようにしっかり掴まっていた。
するとワリキュール軍が戻ってくるのを確認した。
「断崖の上におろしてくれ」
雅則は断崖の上に下りると
「流星雨召喚!」
と空に向かって叫んだ。
空が曇り出すと、火の玉が地上に降って来てワリキュール軍を襲った。
「ワリキュールには戻らせない」
数万人の兵が火の玉の犠牲になっていった。
「火の玉は、いつまで落ちるんですか?」
『流星雨』がなかなか収まらないことに、リサが雅則に聞いた。
「さあ、落ちつくすまで落としてみるか。兵も相当居るからな」
「一向に弱まる気配がないんですけど」
「レベル1000の魔法だから」
雅則もその威力を知らない。
美緒も
「あ、ゴジラを忘れていた」
と思い出した。ゴジラはそのまま出ていて、ワリキュール軍を踏み潰していた。
「あの召喚獣は大魔獣クライシスより強いかも」
セバスはあらためて異世界人の力を恐れた。
マジックエンジェルスも悠介があらたか片付け、ナナたちは傷ついた衛兵た
ちの治療に専念した。
「悠介さんたちに来てもらって助かった。感謝する」
悠介と美緒はランスロットから礼を言われた。
◇
「悠介、無事か?」
雅則は悠介と連絡をとりあった。
「何とか。飛行船団も吹き飛ばしたし」
「ワリキュールに戻ろうとする軍は全滅させている。エランデルに戻ろうと思っ
たが、もうしばらく戻らなくていいか?」
「は?」
エランデルまで鳥獣テルザに乗って行きたくないし、戻るのも面倒だと思った
雅則は
「ワリキュールの街が気に入って、大きな館も手に入れたから。冒険者協会には
ギルド協会のナルーシャのような美人も居る。来いよ、待ってる」
と悠介を誘った。
「羨ましいな。戻ってこないわけだ」
美緒が
「まさか悠介さんのように手を出していないでしょうね」
と冗談半分で聞いた。
「彼女たちのガードが固いから手を出せないでいる。悠介が来ると心配だ」
「そんなことを言われたら、行きたくなるだろう」
雅則はワリキュールの街が気に入り、エランデルに戻るのではなく、悠介と
美緒もワリキュールに呼ぶことを考えた。




